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シリアス回……?

「うおぉぉぉ……。書けねぇ……」

 佐々木優真は嘆いていた。

 その要因と言うのは、小説が書けない。ということである。

 今日……どころかここ最近。

 優真は前のように小説を書くことが出来なくなっていた。

 別にネタがきれている訳では無い。

 むしろ書く訳でもないのにたっぷりとネタはある。

 別に小説が嫌いになった訳では無い。

 むしろ昨日ブッ○オフに行って10巻ほど新しい小説を買ってきている。

 だからこそ、優真は何故自分が小説を書けないのか……。

 その理由がイマイチ分かっていなかった。

 このスランプの様なものは高校に入り、1ヶ月ほど経ってから、既にそうなっていた。

 ただ、どんどん深刻化していき、2日に1本ペース且つ3000文字ほど書いていた優真が、現在、4日に1本ペース、そして2000文字になった。

 まぁとはいえ小説を書くのは好きである。

「次は何やるかな……。ってあれ?またエタる前提じゃん……」

 もはや1人でボケとツッコミをしている優真。

「うーん……。また恋愛系で行こうかな。最近はPVも少ないし」

 このPVが少なくなっている理由。

 それは別につまらないからという理由だけではない。

 基本、初めての投稿から四つ目の投稿くらいまでは、初心者ブーストの様なものがかかって、1日100~200PVに行くことが可能である。

 それで内容も面白ければ500~600と、名前が知られていない作家であれば中々に多いPVを稼ぐことが出来る。

 そしてやはりそれと比例するようにブックマーク──ブクマも増加していく。

 もちろんPVが少なければ……つまり見る人が少なければ、ブクマが増えない事にも繋がる。

 そんな感じでPVに比例して、作品に対するブクマや感想も少なくなっていく。

 すなわちPVとはその作品に対する1番の評価の様なものであり、作家が喜ぶ物の1つだ。

 そのPVが、最近の優真は全く増えなくなり、現在は投稿しても50~60。

 そこでPVが多めになる恋愛系を書こうと思い立った優真である。

「うーん……。あ。ラ○ダー俳優出てんじゃん。見よ~」

 と、最近の優真はこんな感じ。

 小説を書こうとしても他のものに目が移り、全く集中できない。

 優真は……どうなってしまうのか。

 それは今、誰一人として分からない。



───────────────



「……なんだこりゃ」

 作品を読んだ衛藤は、思わず苦言を漏らした。

別にこれまでも批評を伝えなかった訳では無い。

 ただ……それでも、いつもとは違う、どこか意外そうな……。

 どこか違和感を孕んだ苦言を、口から漏らしたのだ。

 それに、小説を書いた優真もその違和感に気づき、

「ん……。どうした?なんか変だった?」

 そう問う。

 それに何とも言えない顔で答える衛藤。

「いや……何かな。面白くねぇなって」

「そんなのいつものだろ……。とはいえそれ書いたの……」

「嫌そうじゃなくてよ!」

 突然机を叩き、椅子から立ち上がる衛藤に、優真は身体を震わせる。

「ど……どうした……?」

「おかしい……こんなのおかしい……」



「お前……こんなに……なんつーかな……。心こもってねぇ小説書いてたっけ……か?」


「……え?」

 その衛藤の言葉に思わず困惑する優真。

「いや……悪い。ちょっと驚いちまってな」

「お……おう嫌だからそれ書いたの……」

「ちょっと……先変える」

 そう言い残し、衛藤は教室から出る。

 そして出る際に。

「おい優真。明日小説書いてこい。絶対だぞ」

「うぉ……ん?わかっ……た。了解」

 そう言い残し、足早に教室から出た。




─────────────────




「どうだ榊原。おかしいよなこれ」

 教室から出た衛藤は、榊原の家に、優真が書いた小説を読ませに来ていた。

 その小説を読んだ榊原は……

「えぇ。そうね」

 至って平然と。

 そう告げる。

「な……おい。そんな驚かないもんなのか……?」

「まぁ。そうね。こうなる事は分かっていたから」

 特に顔色を変えることなく淡々とそう告げる。

「ちょ……待てよお前。お前優真の小説昔から読んでんだろ?だったらこの違和感分かるだろ!?」

「だから。こうなる事は分かっていたと言っているの。そもそも高校生になったあたりから優真くんは明らかに書き方が……小説に対する心の入れ方が変わっていたし」

「な……」

 さも当然のように語る榊原に、絶句するのは衛藤。

「言いたいことはそれだけの様ね。今仕事が詰まっていて」

「お……おい!お前さぁ!」

 何とか引き留めようと、

「お前……優真のことが好きなんだろ!?なのにそんなんで良いのかよ……?」

 思わずそんな言葉が、衛藤の口から飛び出した。

 榊原は一瞬、こちらを振り向くが、何も言わずにドアを閉めた。

「なんだ……なんだよそれ……」

 そんな榊原にどこか……なぜか苛立ちを覚え、手を震わせる。

「クソっ……何だってんだよ……」

 一体どうすれば良いのか。

 佐々木優真の異変……それをどうするのか。

 唯一その問いに答えてくれそうな榊原が……。

 一体自分は何がしたいのかも分からなくなってくる。

 そんな感情を心に持つ衛藤は、しばらく榊原の家の玄関前に立ち尽くす。

「俺は……何がしてぇんだ……?優真の小説を救いてぇのか……?だったら何でだ……?」

「な……何でぇ!?何でこんなところに変態がいるの!?」

「ホントだよ……クソっ……こんなとこに何で変態が……っては?」

「こんにちは変態さん。なんかよく会いますね」

 衛藤が振り返るとそこには幼女がいた。

「な……むしろ聞くけど何で神子ちゃんがここにいるのかな……?」

「え?何で私の名前知ってるんですか?」

「名札に書いてたからさ……」

「き……気持ち悪……」

 さりげなくキモがられる衛藤だが、

「いや……神子ちゃん?」

「嫌だから名前で呼ばないでくださ……」

「何で俺とこんな話してんの?」

 そう問うた。

 その衛藤の問いに対し、神子は少し笑顔になって、

「なんか変態さん……辛そうな顔してたので」

 そう答えた。

 その笑顔と言うのは天使そのもの。

 あぁ~。たまんねぇ~。と。

「うわ……またキモイ顔してますね」

 しかしその笑顔は一瞬で崩れ、直ぐにドン引きする。

「いや……ごめん」

 素直に謝罪し、

「んじゃ。また会える日があることを願うよ」

 そう言った。

「はいはい。もう合わないことを願ってますね。あ。名前教えてください」

「なんで?」

「通報する時楽なので」

「辞めろ!」

 ガチの声でそう言う神子にツッコむ衛藤。

 だが実際、あの鬱な気持ちを晴らしてくれたのは事実。

 だから一応。

「……俺は衛藤輝明。今日はありがとな神子ちゃん」

 そう言って、家への帰り道を歩く。

 そして神子も家へ歩く……ことが出来なかった。

 あまりの衝撃に足が震え、目の前を歩く衛藤を呆然と眺める。

 そして……


「衛藤……くん……?」






───────────────





「もしもし衛藤くん?」

「……なんだよ」

 榊原からかかってきた電話に、苛立ちを抑えきれない衛藤。

「あ……もしかして怒っているのかしら……」

「いや別に」

 ぶっきらぼうにそう言う衛藤に。

「その……大変申しあげにくいのだけれど……」

「あぁ?」

「あれ書いたの……優真くんの妹さんなの……」

 謝りながらも明らかに笑いを堪えるような声でそう告げる榊原。

「……え?」

 思わず腑抜けた声を出す衛藤。

「だ……でもよ。お前結構マジな顔で……」

「ドッキリしようって言われたの」

「は?」

「優真くんからのメールを見て」

 すかさず優真とのメールを見ると……


『いやマジでごめん。最初はすぐネタバレしようと思ったらお前出てくから榊原さんにもドッキリお願いしちゃった』

という分とともに、どう考えても挑発としか考えられない、仮面ラ○ダービルドのエ○ルトが『これだから人間は面白い』と言っているスタンプが。











「シリアスムード俺だけかよォぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


 絶叫する衛藤である。


……あの後優真に『あたしってほんとバカ』のスタンプを送った。






────────────────







「ふふふ……これは……なかなかいい物が出来上がったなぁ……」

 自分の部屋で不気味な笑い方をする女が1人。

 積み重ねられた原稿用紙は350枚に及ぶ。

 その女の名は……藤宮らら。

 またも波紋を呼びそうな雰囲気を。

 彼女は醸し出している。

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