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またも始まる勘違い

 朝比奈には昔っからの幼なじみがいる。

 その子の名前は佐々木優真。

 幼稚園の頃から一緒に、小学校、中学校、そして高校とずっと一緒にいる。

 ここまで喧嘩も1度もなく、いわゆる友達以上恋人未満の関係。

 だが正直優真と恋人同士になるとか考えたくもない……。

 それが朝比奈の思い。

 とはいえ佐々木優真は良い奴だ。

 どれだけ悪口言ってもいじっても、全く怒らない。ツッコむだけ。

 そんな幼なじみがいて……朝比奈は幸せだと思っている。

 ノーガードで話しても大丈夫だと言う人はそこまで多くない。

 だからこそ佐々木優真とはずっと親友でいたい。

 そしてそんな優真は。

 朝比奈とババ抜きをしていた。


「なん……だと!?またジョーカーじゃん……。これで10回目なんだけど……」

「ちょっと2人とも運が悪すぎるよね~……。流石にここまでとは……それっ!あ。またジョーカーだ……」

 圧倒的に運が悪いふたり。

 その2人がババ抜きをするとこうなる。

 ここまで優真の2勝、朝比奈も2勝。

 共に2勝ずつで、勝ち越しを決める最後の1戦を、2人は戦っていた。

 対決時間約1時間の名勝負。

 優真は改めてカードを引く。

「見ててね朝比奈……。この戦いからお前を解放してやる……。さぁ……賭け狂ましょう!」

「まさかのここで賭○グルイ!?ってまたジョーカー引いてるしね……あ。私もジョーカー」

 時刻は午後5時を周り、空も暗くなっていく時間。

 そんな中、高校生2人が命を燃やしババ抜きを行う。

 シュールすぎる光景である。

「今度こそ……決める」

「どうせまたダメだよ~多分……」

 そう言う朝比奈に対し

「思い通りにいかないからこそ、このババ抜きは面白いんだよ……。はぁっっ!」

「また賭ケグ○イ!?なぜそんなに賭○グルイを推すのかな!?と言うかまたハズレじゃ~ん。ザコめ。って私もダメか~……」

 またハズレを繰り返す2人。

 すると優真はすっと立ち上がり……

「ってこっちこないでよ!手札見ようとしないの!」

「ば……バレた」

 さりげなく相手の手札を見るというズルをしようとする優真。

「こっ……今度こそ引く!」

「もうー……。どうせ無理だよ~」

「どっちだ……考えろ……考えるんだ……」

「だからまた賭ケ○ルイ……じゃなくてカ○ジ!?まさかの黙示録の方!?」

 そしてついにこの時が……

「こっちだっ!どうしてだよぉぉぉぉぉぉ!って……これ!」

「や……やっと終わったね~……激戦だったよ」

 1時間のゲームは幕を閉じた。

「……そういえばさ。なんかこんな事昔にもあった気がするな~……」

「そういえばそうだった。確かあの時は俺たちが初めて会った時……」



───────────────




「ババ抜きしよう!」

「え?」

 時代は遡り幼稚園年長へ。

 2人が通っていた幼稚園──げんき幼稚園は随分と自由度高めの幼稚園だった。

 年長ならば先生が部屋に1人だけで、本を読もうが積み木をつもうがトランプで遊ぼうが、何をしたってOK。

 昼寝も寝たきゃ寝る。寝たくなきゃ寝ない。

 家が近ければ1人で帰ってもOK。

 近くにある背が短い自販機でジュースを買ったりも出来る。

 そんな幼稚園にて。

 朝比奈芽位と佐々木優真は出会った。

 その2人の初めての会話は……朝比奈が優真に話しかけたことからである。

 当時、げんき幼稚園の番長(?)として園に君臨していた朝比奈は、部屋の角で、いつも本を読んでいる優真に声をかけた。

 ちなみにこの頃の優真が読んでいた本は『ぐり○ぐら』、『スイ○ー』、『101○の猫』等幼稚園に置いてある絵本。

 この頃、友達と話すよりも絵本読んでた方が楽しいと感じていた優真は、ここら辺から友達を作る能力が低下して行ったのかもしれない。

 もうお気づきかもしれないが、榊原、朝比奈共に優真が普通に話して友達になった訳では無い。

 榊原は小説の感想が死ぬほど欲しかったから、勇気を振り絞って。

 朝比奈に関しては相手から。

 まぁこの話は少し置いておいて……。

 突然話しかけられたショタ優真くんは、同様のあまり、情けない声を出す。

 それに対しエンの番長、朝比奈芽位は、

「だから!ババ抜きしよう!ほら!カード配るから!」

「え……?ババ抜き?」

 尚も混乱する優真に

「え?ダメなの?」

 と返す。

 すると優真少年は、「番長の言う事を聞かなかった時は……死を意味する」やら「もし番長の誘いを断ればどうなることか」やら、恐ろしすぎる言葉を周りから聞いてきたことを思い出し、命の危険を感じながら、

「だ……ダメじゃないよ!やろう!ババ抜き!」

 そう答えた。

「うん!やろうね!」

 そう言って笑った彼女の笑顔は、恐怖なんてものを感じさせない。

 なぜみんなこの人に恐れおののいてるんだろう……。

 そう感じる優真少年だった。




「いじめを助けた?」

「うん」

 時は流れ幼稚園卒業式。

 その日最後に園の部屋に残った2人は、最後のげんき幼稚園の雰囲気を味わいながら、少し話していた。

 その内容は……朝比奈が恐れられていた理由であった。

 過去。朝比奈の友達が何人かに暴力……すなわちいじめを受けていた。

 それを見た朝比奈が怒り、そのいじめをしていた相手をフルボッコにしたのだ。

 髪の色も相まってそれにびびったいじめんずの皆さんはそれを幼稚園中に報告。

 結果恐れられるようになった。

 それにより元々いた友達もだんだん離れていき、そしてあの時助けた子すらも、周りに流されるように朝比奈から離れていった。というもの。

 それを聞いた優真はと言うと……

「まぁそういう事があって……ってなんで泣いてるの!?」

 号泣していた。

「だ……だっでぇ……。僕のどもだぢがぁ……。僕のひどりのどもだちがァァ……。人を助けたのに……ひぐっ……」

 それは……当時の朝比奈にはよく分からない涙だった。

 なんで優真は泣いているんだろう。

 私の過去を話しただけなのに。


 ただ、今の朝比奈なら分かるだろう。

 これは……きっと道場の涙だ。

 友達がいなくなった私と友達がいなかった優真。

 友達がいないというのがどれほど辛いのかを知っていたからこそ……



─────────────────




「って私ぼっちに見られてたの!?」

「んんっ!?どうしたのかな!?」

 過去を思い出し、ラストシーンで怒った朝比奈。

 まさか優真と言うクソぼっちにぼっち仲間として同情されていたとは今まで思ってなかったようだ。

「……まぁいいや。と言うか優真~。そろそろ帰らなくていいの~?」

「き……急にいつもの朝比奈に……。なんかお前たまーに昔みたいにビシッとしだすよな。だるーんって感じじゃなくて」

「そうかなぁ~……」

「なんか……昔のお前を思い出したよ」

 少し斜め上を見ながら、優真がそう呟いた。

 その目はどこを眺めているのか。

 そんなの朝比奈には分からないが。

「んにしてもお前さぁ。なんでそんなだるーんってしだしたの?」

「モテるためだよ」

「へぇ〜。モテるため……ってはぁぁ!?」

 朝比奈のその発言に驚く優真。

 それもそのはず、優真からして朝比奈は恋愛なんてのに興味はないただの『変態ロリコン野郎』だと思っていたため、余計に驚く。

「そ……その心は……?」

「いやぁ~……。好きな人がいてさー。その頃は」

 今度は朝比奈が斜め上を見てそう呟く。

 それを見て優真も動揺する心を静止させようと努力しながら、朝比奈と同じように斜め上を向いた。

「なんか……この感じ久々だね~。2人で夕日見上げるなんて」

「そうだなー……。確かに最近はこんなこともしてなかったな」

 しみじみと。

 その瞬間を噛み締める2人。

「なんつーかさ。やっぱお前といると落ち着くわ」

「はぁ。いきなりどうしたの」

「ほら。昔から友達じゃん。そういう事だよ」

「ど~ゆ~事なの~……。まぁ……。わかる気もしなくもなくもなくもないかも?」

「どっちだよお前……」

 こんな日常を。

 まだまだ終わらないで欲しいと。

 心から願う優真と朝比奈だった。





─────────────────






「ついにキターっっっ!!」

 2人がそんな事をしている時。

 朝比奈の部屋のドアに耳を当て、中の音を盗み聞きする人が1人。

 朝比奈の母こと朝比奈絹江。

 絹江は……とんでもない勘違いをしている。

 それは何よりも恐ろしいもの。

 この人が優真の日常を狂わせるのを確信させるレベルの勘違い。




「優真くんとうちの娘付き合いましたwぶひぃw」





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