表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/160

経験値より金よりヘイトが溜まる


 Fランクカード『始まりの魔法札』

 コスト 5

 効果  MP+5


 お使いクエで得た報酬だ。Fランク使用資格と共にもらえた。選択肢はいくつかあったが魔法職はこれが一番良さそうだった。

 まだ最下級のカードだから効果も弱いが、それは仕方ない。

 ……五時間かけた報酬としては悪いが、それも仕方ない。全ての怒りは運営に向けておこう。

 初めてのおつかれって通称の意味を体感したわ。これはおつかれだ。駆け回ってなかったらたぶん今日中に終わんなかったぞ、これ。


「もうこんな時間かよ……」


 現実の時刻はもう八時。そろそろ落ちないと夕飯を食べそこなう。 

 精神的な疲労も大きいし、今日はもういいか。開始半年のゲームでスタートダッシュを焦る意味もあまりない。

 肩を落としてログアウトした。




「んー……っと」


 ヘッドギアを外し、伸びをしてベッドから起き上がる。

 いやー、ゴミだった。主に運営が。ついでにプレイヤーの意識が。あと校長先生の記憶力が。

 やばかったな、今日の流れ。

 怒涛の完全版押し→値段詐欺発覚→フラグ詐欺で死ぬ→リスキル×15→無一文→校長先生の話を一時間聞く→五時間に及ぶたらい回し→結果元の場所に戻ってくる→ヘイトを溜めつつログアウト(イマココ)

 内容が濃すぎる。しかも負の方向に。

 一日目でこれとか引退してもおかしくないだろ。しないけど。


「冬希、降りてきなさーい」


 ドアの向こうから母親の声が聞こえた。

 ちょうどいいタイミングだったか。

 居間に向かう。


「あれ、珍しい。父さんもいたの?」


「仕事が早く終わったからな。たまには家族が揃うのもいいじゃないか」


 マンションに家を買い、そのローンを返すために残業に励む父がもう帰ってるとは。

 日々俺に将来こんなに残業したくないなあと思わせてくれる我が家の大黒柱だが、今日はご機嫌だ。


「兄貴は?」


「今来たよ」


 後ろから当人の声が聞こえた。

 タイミング良すぎてビビるからやめてくれ。


「冬希はまたゲームか?」


「そうだよ。兄貴もやる?」


「……またぼこぼこにされるからいい」


 ふいっと兄貴が顔を背ける。

 兄貴の名誉のために言っておくが、別にゲームが下手なわけではない。高校時代テニスで全国まで行っただけあって体の動かし方も知っているので、あまりやらないだけでフルダイブ環境で動き回る下地は十分にあるのだ。現実の運動神経は可もなく不可もなく程度の俺と本当に血が繋がっているのか疑いたくなる。

 顔は結構似てるから、並ぶと一発で兄弟ってバレるけど。

 それで、一年くらい前だったかな? 最初の四大ゲームであるFDOが発売され、大きな話題になったときに珍しくソフトを買った兄貴が俺に挑戦してきたことがあった。今思うと、たまには弟と遊ぼうとか考えていたのかもしれない。

 しかし、それは既に発売から二ヵ月くらい経った格闘ゲーム。しかも最初の四大ゲームでありゲーマーなら誰もが熱狂した作品。いかにリアルスペックに差があろうと既にFDOに慣れている俺が負けるはずもなく……というかほとんどゲームをしないあの兄貴が挑戦してきたからどこかで特訓でもしてきたのかと思ってつい全力で戦ってしまった。

 結果、弟にぼっこぼこにされた兄貴はまたもやゲームに触れなくなったのだった。

 いや、いい兄なんだけどね? 弟に負けたとか普段は気にするタイプでもないし。むしろあのときはゲーム初心者相手に本気で戦って完封勝ちしてしまった俺が悪い。

 そして、頑なになった相手を頑なにした原因が説得するのは不可能だ。

 さくっと諦めて素直に食事を始めることにした。

 




 さて、どうするかな。

 午後十時。二時間くらいゲームもできる。

 うーん、カルシナをやってもいいんだが、二時間は中途半端すぎるんだよな。初期状態に等しい――というか金がない分初期状態以下の現状では二時間でできることなんて大してない。

 魔法の検証してもいいんだけど、嫌な予感がするから明日に回したい。

 いつかは向き合うことかもしれないが、今日はもうお腹一杯なのだ。これ以上運営にヘイトを溜めると本社ビルに殴り込みに行くことになる。


「……これでいいか」


 棚からゲームソフトを手に取り、ヘッドギアの中身を入れ替える。

 ストレスが溜まった今ならちょうどいい。

 

「よっと」


 ベッドに身を横たえ、ヘッドギアをセット。

 さあ、ダイブしようか。

 行き先は硝煙と銃声に彩られたFPSの最高峰『Battle field on the Earth』


 Q:カルシナはあの運営なのにどうして人気なの?

 A:『プレイヤー視点で』解説すると、第一の理由としてクオリティが挙げられます。四大ゲームは基本同じシステムを流用していますが、そのシステムが突き抜けすぎているせいで他のゲームと大きな差があります。グラフィックやAIなど、ほぼ全ての領域において四大ゲームと他のゲームは一世代や二世代じゃ利かない差があります。運営のアレさを上回るだけの魅力があるわけです。

 そして、他の四大ゲームとカルシナはクオリティという点はほぼ横並び(最後発だけあってわずかにカルシナが上)ですが、それを活かせるかどうかに大きな違いがあります。格闘ゲーム、レースゲーム、FPSという他のゲームでは自由度の低さからクオリティを活かしきれません。

 例えば、他の三つのゲームは味覚がほぼ意味を為しません。ゲームジャンルの問題で何かを食べること自体がほとんどないからです。食事できるところ自体は結構ありますが、FPSや格ゲー、レースゲームをやりにきてるプレイヤーがわざわざそんなところに入ることは少なく、口に入るのは精々回復薬程度なんていうプレイヤーが多数派です。それでは現実並みの味覚を活かせません。

 一方、カルシナは冒険者だけでなく料理人や鍛冶師、商人、踊り子、俳優など様々なプレイスタイルが可能です。現実並みのクオリティとゲームゆえの非現実性を上手く活かし、他のゲームに比べ圧倒的な自由度のゲームプレイを提供しています。

 結果、カルシナが最大のゲーム人口(数に関しては世界人口自体が増加しているため増えやすい)を誇っているわけです。

 ただし、ゲームの人気と運営の人気は全く別の問題であるとは言っておきます。

 掲示板で一番伸びている関連スレは運営を罵倒するスレだという事実があったり……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ