表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/160

怒り心頭に発す

前回までのあらすじ

ガチでキレだす五秒前


「く・そ・がああああああああ──────ッッッ!!」


 ダダダダダッと地団太を踏む。地面を運営に見立てて全力でストンピングした。

 これもうプレイヤー騙してるだけじゃねーかああああああああっっっ!!!!

 なんの意味があるんだよ、何がしたいんだよ!

 それで何の得があるんだよお前らによぉ!! ただただプレイヤーとの関係が険悪になるだけじゃねえか!

 なんで開始数分で喧嘩売ってきてんだああああああっっっ!!


 ちくしょう、運営に怒りを感じたことは数あれど、運営にダイレクトに嫌がらせされたのは初めてだ。

 おかしいだろ、いやもう本当におかしいだろ。なにを考えてるの? バカなの? 頭いかれてるの?

 何をどうしたらチュートリアルで損させようぜ、みたいな思考に至るんだよ! そりゃサービス開始直後に大炎上するわ! あれか? プレイヤーをどう扱おうがカルシナをやめはしないってか? どんだけ自信があったんだよこのゲームによぉ!

 つーかさ、攻略サイトも書けよ、こういう情報! 十種類以上見たけど、どのサイトにもこんなインパクトしかない情報書いてなかったぞ! これもう完全に道連れにしようとしてんだろ! なんでそういうとこだけ仲が良いんだよPKが横行してるゲームなんだろ息合わせるなやあああああっっっ!!

 色々ともう、あああああああ───っっっ!!


 「はぁ、はぁ、はぁ……」


 全部吐き出したら多少落ち着いた。

 出入りする門の手前であり結構人通りあるんだが、こんだけ騒いでおいて誰もが『ああ、またか』みたいな顔で通り過ぎていく。門の番をしているNPCですら一瞥くれただけでスルーしていた。

 あれだよね、こういう風にストレス発散してる奴がそこら中にいるってことだよね。

 『ああ、新規か。俺もやったなぁ』みたいな顔してる奴いたし。それも割とたくさん。なんなの? 通過儀礼なの? そんな詐欺グループの加入儀式みたいな通過儀礼やめちまえ!


 だめだ、まだ怒りが抜けきってない。

 まさかこういう方向で衝撃を受けるとは全く予想してなかった。

 落ち着ける気が全くしない。もうモンスターでもサンドバッグ代わりにしよう。

 ずかずかと門へと進み、安全地帯から出る。

 地図によると街の周りには草原エリアがある

 ここからはPKにも警戒しないといけない。





 そうして草原エリアを進むこと五分。

 途中でノーマル・ラビットとかいうそれもうただの兎じゃね? みたいなモンスターを二匹狩り、レベルも一つ上がるとある程度冷静になった。冷静になった結果、魔法に関して嫌な予想が頭をよぎったが試行回数が少なく、確信が持てないのでおいておく。

 それよりも気にすべきものがあった。


 後方にはうっすらと地面が見える程度の草原というより空き地の地面みたいなエリア。

 これはいい。


 今いる場所にはひざ下くらいまでの草の生えた草原。

 これもいい。


 それで、今から向かう先、森まで繋がる方向にあるのが『俺、人間に背丈で負ける気ないんで!』といわんばかりに元気よく成長した草による草原。

 うん、おかしいね。


 いや、草原といったら確かにそうだよ? 明らかに1.5メートルはある草だろうと草原は草原だ。

 でもさ、こんな隠れ放題で探すのが大変なフィールドを初心者向けにするのはどうなの?

 モンスターが一方的に有利じゃん、これ。なんなら初心者狩りにも有利じゃん。

 何回目かわかんないけどもっかい言うわ。

 運営バカじゃねーの?


 でも進まないわけにもいかない。

 丈の短い場所は危険すぎる。遠目にPKされてる人を見かけたし、このゲームでPKが横行しているのは事実っぽい。

 隠れられる場所は正直ほしい。

 ……見つかりづらいってことは警戒しづらいってことだからやっぱり初心者不利だが。


 そして五分後。

 密集する肩ほどの高さの草をかきわけ、前へと進む。

 真っすぐ立てばある程度は見えるが、ちょいちょい長い草があって絶妙にウザい感じに視界にかかる。視界が利きにくい厄介な環境だ。

 たまになぎ倒された草による道をみかけるが、その場合できる限りすぐ離れる。ゲーム的なことを考えれば通った跡はそう長くは残らず元に戻るはず。跡が残っているということは最近プレイヤーが通った証拠だ。

 現状俺はいいカモなので、フィールドで別のプレイヤーとの遭遇は避けたい。

 自分が進むときもできる限り道ができないように慎重に、音も最小限に、そして見つからないように腰を曲げて進む。

 ……なんでこんなサバンナ探索みたいなことしてんだろうなぁ。なお猛獣役は別のプレイヤー。


 あと、地味にモンスターと出くわさない。何故だ。

 跡も全部大きめで、人間が通ったようなものだけ。まあ、実際は猪的なモンスターが通った跡とかもあるかもしれないが俺には判別できない。

 明らかに人にしては小さな獣道があればゴブリンの可能性もあるんだけど―――と、来た。

 立ち止まって耳を澄ます。


 ガサガサッ


「……っ」


 無言で右手の杖に力を込める。

 右手側、かなり近い。数メートル程度だ。

 アタリかどうかはわからないが、余程小柄か腰を曲げている人でもない限りはもう見える距離だ。

 慎重に前に進む。同時にゆっくりと魔法の詠唱を開始しておく。

 音はかわらずガサガサと鳴り、まるで揺らしているかのように大きく草が揺れる。

 音源も揺れる草もさっきから同じ場所だ。

 草をかきわけ、視界が開けた。


 "ノーマル・ゴブリンが襲ってきた!"(脳内モノローグ)


 よっしゃアタリィ!狩りの時間だあああああ!


「エア・エッジ!」


 襲ってくる腰程度の大きさのゴブリンに迷わず魔法を叩き込んで吹き飛ばす。

 くそ、削り切れなかったか。

 モンスターのHPが見えないシステムだから残り体力はわからないが、立ち上がるのにも苦戦してるし瀕死――ん?

 引っ掛かりを覚えた。とどめに蹴り飛ばそうと近づきながら考える。

 襲ってくる? なんで襲ってくる? 見つかっていたなら逃げないのはおかしい。アクティブモンスターだというなら近づいてくるはずだ。なのに、ゴブリンはそこから動かなかった。

 まるで誘い込むように、これみよがしに音を出して草を揺らして。


「っ! まさか――」


 追撃の足を止め、振り返る。

 後方から飛び掛かってきた二匹のゴブリンと目が合った。


「!?」


 だめだ、間に合わない!

 そのまま棍棒の直撃を受ける。衝撃を利用して数歩下がったが、草に足を取られて転びかけた。

 なんとか踏ん張ったが、その間にも棍棒で殴られる。

 まずい、一気にHPが七割以上持っていかれた。残り三割を切った(イエローだ)

 ていうか、ゴブリンは一匹でいるんじゃねえのかよ! あの意味深なガイドはなんだったんだ!

 棍棒を避け、体格差を利用した蹴りで返すが草が邪魔で上手く動けない。

 魔法を使おうにも棍棒を完全には避けきれず、すぐに詠唱がキャンセルされる。杖も草に阻まれて上手く動かせない。


「くっそ!」


 これ、マジでヤバいかも。

 近接職ならどうにかできるかもしれないが、俺は完全後衛職だ。それもほぼ初期状態。数に勝り地の利も相手にある状態で格闘して勝つ術はない。

 フラグ独占狙い&あの詐欺で頭に血が上ってたせいで一人で来たのが仇になったか。

 もうHPは一割を切った(レッドゾーンだ)

 そして──


「あ」


 足の先を掠めるような一撃に残りミリ程度だったHPを削り切られ、俺は死んだ。


一行でわかる!運営の思考回路!

愉悦部です。


設定開示コーナー

ノーマル・ゴブリン

ニューウェル周辺の草原や森に生息する。大抵3から5匹で行動しており、表に出てくるのは全て若い雄。基本的にノーマル・ラビットを狩ったり木の実を集めたりして糧を得ている。

巣には子供と牝、老いた雄がいる。明確なボスはいない。数家族が一つの巣で生活している。

格上と戦う際は一匹を囮にして誘い込み、残りが後ろから襲いかかるという手を取る。ただし、ワンパターンな上に囮が不自然に同じ場所で音を立てるなど見抜ける材料も多い。初見殺し以上の恐ろしさはないが、運営の甘言に踊らされた多くの初心者を沈めてきた実績を持つ。


ちなみに、チュートリアルでの面白い云々は誰にでも言っています。フラグだと思った? リップサービスだよ!

なお本気にすると愉悦の肴にされる模様。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ