古巣にて、旧友と
BFTEではウィンドウから参加申請することでエントランスに飛ばされ、人数が揃い次第開始します。エントランスにはその試合の参加者だけが入れます。敗退者も試合が終わるまではエントランスで観戦できます。
詳しい説明はBFTEが本格登場してからということで。……いつになるのかわかりませんが。
塔に戻ると、同時にユズも現れた。
長い髪を下の方で結んだポニーテール、額に上げたアイマスクのように薄いゴーグルの下からのぞく眠そうな目、いつも通りのユズだ。
今はちょっと不機嫌そうだが。相打ちがお冠か?
「……シーがいるなんて聞いてない」
「こっちの台詞だ。ストレス発散のつもりがガチ戦になったじゃねーか」
楽しかったけど、ちょっと疲れた。
あれだ、強いプレイヤーとやるなら事前に知っておきたい。振る舞い方とか武器選択も変わってくるし。今回全部適当だったから不本意極まりないわ。
お互い様なんだろうが。
「私だってノーダメ百回抜きの途中だったのに……」
おっとぉー、頭おかしい台詞が聞こえたぞ?
百人抜きならわからんでもないけど、百回ってなんだよ。何日かかるんだそれ。
つーか不機嫌の理由それか。そりゃ野良で身内とあたるのはご愁傷様としかいえないが。
「……何キル?」
「お前入れて12」
「勝った……私は15」
いっそ見事なほどのドヤ顔を向けられる。
「うわうっざ。相打ちなのに煽るのよくないぞ」
「なんとでも。私の8割しかキルできなかった人に言われても何も悔しくない」
……普段口数少ないくせに、煽るときはしっかり煽りやがる。
そして実際キル負けしているので何も言えない。
「……まあいいか。で、試合中俺結構騒いでたけど、気づかなかったのか?」
「なんかうるさい人がいるとは思ったけど、別人だと思ってた。野良であたるなんてありえないと思ったから」
「まあ、だよなぁ……」
たぶん、スポーン時の居場所もフィールドの正反対だったのだ。俺も自分側の敵を殲滅しながら進んでたし、ユズも同じだろう。いくら騒いでるとはいえある程度離れていたら誰かまではわからない。
「……今日ログイン遅かったね」
煽りテンションからスッと戻ったユズが眠い目のまま不満そうに言う。
わざわざこんなこというってことは……
「他のメンバーは?」
「みんな来てない。丸一日一人は久しぶりだった」
あー、やっぱり。
暇だったんだな。だから百回抜きなんてことやってたと。
「そりゃ悪かった。カルシナ買ったからそっち始めてたんだよ」
ユズがきょとんとした顔で首を傾げる。
「カルシナ? なんで? 銃ないじゃん」
おおう、BFTE……というかFPSに染まり切った返答が返ってきた。
さすがにそのリアクションは想定外だぞ。
「俺はユズみたいにFPS専門じゃないし。FDOもWWRもやってるの知ってるだろ?」
あとカルシナにも銃はある。たぶんだけど。
グランドクエストだっけか? SF要素の大規模クエストがあるって話だし、恐らく銃やビームソード的な武器も存在するはずだ。
個人的にはそそられる感がなくもないが、基本がファンタジー世界だからなあ。そういうゲームの火器装備ってそれなりの性能ではあっても結局最強装備とかには敵わないんだよ。
ファンタジー世界で全員が銃持ってても色々台無しだから配慮としてはわかるんだが。
「FPSじゃないとかやる意味がわからない」
「俺は別にFPSガチ勢じゃなくてBFTEガチ勢なだけなんだが……」
他のFPSも別にやりこんでないし。というか、四大ゲームをある程度やりこんでいるというべきなのかもしれない。
やりこみ度的に、BFTE>>>>越えられない壁>>>>他の二つ、くらいの差はあるが。
「ちなみに、俺はまだカルシナ始めて一日目なわけだけど、一緒に始める気は?」
FPS専門とはいえ、ユズのゲームセンスは本物だ。
思っていたのとは違う方向でヤバ気なゲームだったし、こいつがいてくれれば……
「ない」
ですよねー。
「FDOかWWRは?」
「遠慮する」
うん、残当。
ユズは誘いに全く興味を示さずこれからのことを質問してくる。
「そんなことより、これからどうする? まだ時間ある?」
「あと二時間弱くらいなら。そっちは? 春休みはまだとか言ってなかったか?」
こないだ雑談中に春休みの開始が俺の高校より2、3日遅いとか言ってた気がする。
高校生はいいなーとか羨ましがってたので全力でドヤ顔をかましたら足を撃たれた。
「う……まだだけど、もうまともに授業ないし大丈夫。今日暇してた分付き合って」
「なにすんだ?」
「100人ルールでバトルロイヤル。相手は野良でいいけど、タッグで十連勝するまでログアウト禁止」
「いやそれ二時間弱じゃ終わらないだろ」
ユズと組めば負けはないだろうが、それでも二時間は無理だ。
100人ルールなら必然的にフィールドも広いし、敵も多すぎる。
「一試合10分くらいで勝てばいいだけ。簡単」
「普通に無理だろ。手が足りねえよ。せめて後一人……っておい」
タッグ申請が送られてきた。
聞く耳なしか。
「ユズ、お前な――」
「私とシーが組めばできないことなんてない。シーは違うの?」
「……っ」
言葉足りてないし、根拠もないし、なんかもう突っ込みどころ満載だが……それはずるいだろ。
「あーもう……わかったよ、やればいいんだろやれば。一試合10分、やってやるよ」
渋々申請を受諾する。
そんな信頼に満ちた目で見られたら断れるわけがない。
まあ、理屈の上ではできないわけじゃないし、不可能では……
三時間かかった。やっぱダメじゃねーか!
【朗報】新キャラ登場
【悲報】新キャラ退場
……あれ?