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第九話 実戦

 

 シェルン 西門前


 俺はマップを頼りにポータルと思われる城門の前に辿り着いた。

 忘れないうちに『黒いクロスボウ』と『戦士の指輪』を装備する。

 ステータス画面を確認すると、DEX(器用)+8、STR(筋力)が+3上昇した。

 途中で傷薬を買えるだけ買い揃えたので回復アイテムの心配もない。


「出発だ」


 白い光を放つ西門を抜けて始まりの街シェルンを飛び出した。






 西門を抜けると広大な草原が目に飛び込んでくる。

 先ずはマップを表示。


「……敵性反応は見られないか」


 親切設計で近くにでも湧き出てくれれば、楽に経験値を稼げたものを……

 諦めてブッケル曹長からのアドバイスを頼りに盗賊が拠点としているという<ヘルンの森>に向かうことにする。



 西門から駆け足で五分程の距離に<ヘルンの森>はあった。

 太陽は真上に昇っているが、森の入り口はうっそうと葉が繁り薄暗く雰囲気を醸し出している。


「……召喚サモンソルジャー


 魔法陣から忽然と召喚兵士があらわれた。続けざまにもう一度召喚呪文を唱えると二体の召喚兵士が出揃う。

 武器は二体ともサーベル。

 ――兵科が同じなら一体分の装備を揃えるだけで大丈夫なようだ。


「行くか」


 かくして森の中へと足を踏み入れた。





 隊列を組んで森の中を進軍する。

 陣形は縦陣。

 危険な前と後ろに召喚兵士を配置して、自身は挟まれている形だ。


Passiveパッシブ Skillスキル【縦陣】を獲得しました』


 獲得したスキルの効果を把握するため、一度立ち止まる。

 説明文を読んでみると、召喚兵士を含め三人以上の分隊で縦陣を組んでいる際に全体強化バフが発生するらしい。

 効果はSTR(筋力)の上昇。


(まあ、Lv1では、1パーセントもない上昇率のようだが)


 現状のSTR(筋力)数値では、無いよりマシ程度の効果でしかない。


 思索を打ち切り、再び歩き出そうと一歩踏み出した。

 その直後。

 先ほどまで頭があった場所に何かが通り過ぎる。


「――ッ」


 咄嗟に辺りを見回すと、隣の木に弓矢が突き立っていた。

 ――敵襲!?


「総員、警戒態勢――ッ!?」


 警戒を怠ったことに歯噛みしつつ、態勢を低くして周囲を索敵する。


(――あそこだッ)


 十二時と十時の方角に一人ずつ人影を発見。


「近い方の敵とそれぞれ応戦にあたれ!」


 弾かれたように動き出す二体の召喚兵士。

 盗賊達も弓からナイフに持ち替えて近接戦の構えをみせる。


(俺もクロスボウで敵の動きを阻害して、二体の援護を開始するか)


 実際に狙撃せずともクロスボウを構えるだけで、敵からすれば此方の存在が気になって仕方ないはず。

 クロスボウを構えようと背後に手を回す。


 ――ちょっと待て、敵は奇襲が失敗したのに、どうしてまだ戦っている?


 そこで初めて疑念を覚えた。


(敵からすれば、不意打ちを失敗した時点で不利な状況に陥るのは目に見えている)


 背後に回した手がピタリと止まる。


(それに二人、複数であるのなら、回り込んで左右から挟撃することも可能だった。奇襲に挟撃が加われば更なる混乱も期待できただろう)


 森という地理的条件下では、固まっているメリットはそう多くない。

 数的に劣っているのなら、先に発見したというアドバンテージを最大限に有効活用すべきだ。


(――数的、に劣っている?)


 同時に、違和感を抱いた。


「――ッ」


 即座に腰に備え付けてある、ショートソードに手をかける。



 振り向きざまに一閃。


「くっぅはぁ」


 背後から密かに迫っていた盗賊がその場に崩れ落ちた。

 頭上にはクリティカルと表示されている――結果的に逆奇襲が成功した形だ。


 奥の手であったであろう仲間が倒された事で、残った盗賊達も恐慌状態に陥った。

 その隙を突いた召喚兵士の手により、形成が大きく傾く。



 決着には、それほど時間を要しなかった。




 盗賊の体が少しずつ光へと移り変わる。

 数秒ほどで完全に消滅すると、その場には光り輝くドロップだけが残されていた。


「ふぅ……終わったな」


 ドロップ品のお金と『タガー』を拾いながら、大きく息を吐く。


「しかし、危なかった……三人目の可能性にあと少し気付くのが遅れていたらどうなっていたことか……」


 始まりの街周辺に存在する盗賊など、雑魚同然と考えていたが予想していたよりも強敵だった。

 少なくともスライム相当の敵とは思えないほど戦術が練られている。


「ブッケル曹長との戦闘もそうだが、このSWO、相当ハードなゲームバランスだな……」


 もしくはパーティー推奨のクエストだったのか。どちらにせよ最初からこれでは先が思いやられる。

 それも時間と共に慣れていくことを期待するしかないが――


Passiveパッシブ Skillスキル【一刀両断】を獲得しました』


 新しいスキルを覚えたようだ。



 名前:カイ・クライス

 所属:シェンケル辺境連隊 爵位:士爵 軍事階級:軍曹


 召喚士階級:伍長 

 レベル:8

 種族:ハーフ(人族×ドワーフ)


 HP(体力):200

 MP(魔力):10


 STR(筋力):61(+4)

 END(耐久):71(+1)

 DEX(器用):62(+8)

 MND(精神):50

 INT(知力):51



 Skillスキル


 Specific Skill(固有スキル)

 種族適性(歩兵系統、銃兵系統)

 個人適性(騎兵系統)


 Passive Skillパッシブスキル

【一刀両断Lv,1】

【縦陣Lv,1】



【一刀両断Lv,1】はプレイヤーと召喚兵士のクリティカル発生時にダメージ量が増加するというものだ。


 それとレベルも8まで上がっている。

 消滅前に識別したが、盗賊のレベルは5。

 格下でもレベルが二も上昇している事から、経験値は全てプレイヤーに割り振られる仕様らしい。それはブッケル曹長との実戦訓練や召喚兵士に熟練度はあっても明確なレベル表示がないシステム面からも読み取れたことだが。



 それから森を出て、シェルンの街に帰還する。

 クエストクリアを報告するため訓練所に向かう。途中、広場を通ると出発したときより大勢のプレイヤーで溢れていた。

 彼らの表情は何処となく憔悴している。それは誰とも行動を共にしていないソロプレイヤーに多く見られた。

 まあ、レア種族であるハーフの俺ですら苦戦したのだ。通常種族でブッケル曹長に勝てなかったソロプレイヤーでは更に厳しい戦いを強いられたのだろう。






 訓練所に到着して、さっそくブッケル曹長にクエストクリアを報告する。


『クエスト【盗賊討伐】を達成しました』

『報酬として経験値とゴールドが増加します』

【報酬:経験値3000】

【報酬:2000G】


 あ、レベルアップした。

 レベルが一〇に到達した事でステータスに一ポイント割り振れる。



 HP(体力):223

 MP(魔力):10


 STR(筋力):61 →62

 END(耐久):71

 DEX(器用):62

 MND(精神):50

 INT(知力):51



 しばらくは主力である歩兵の近接戦闘能力を上げるためSTR(筋力)にポイントを振るつもりだ。個人適性が騎兵系統な事もあり将来的にもSTR(筋力)は重要になる。

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