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第二話 キャラクターメイキング


『ようこそ、Summoners War Onlineの世界へ』


 最初に聞こえたのは無機質な音声。


『プレイヤーネームを教えてください』

「……カイ・クライス、で」


 高〝輪〟はクライス〝海〟斗でカイ。ドイツ語と日本語の当て字だ。

 昔からゲームではこの名前を使用していた。

 ……思春期に発病した持病の遺物だ。

 まあ、今回に関しては中世ヨーロッパをモチーフにしたこのゲームの世界観とも合っているだろう。


『次に職業ですが、このゲームには職業選択がありません。自動的に召喚士官サモナーとなります』


 このSWO最大の特徴は、存在する職業が召喚士官サモナーのみであるということらしい。それがRPGと表記されない理由の一つでもある。


『プレイヤーの皆様には召喚士官サモナーとして召喚モンスターである――召喚兵士サモンソルジャーを使役し、召喚士官同士の擬似的な戦争を体験して頂きます』


 それでSummoners War ――召喚士戦争か。


『それでは種族を選択してください』


 忽然と目の前にパネルが現れる。そのパネル上には選択画面が表示されていた。


 種族は、人族、魔族、エルフ族、ドワーフ族の四種類。

 どれも容姿は人型で、違いらしい違いと言えば細部の、髪や瞳の色、あとはエルフの長い耳ぐらいだろうか。

 それと種族別にステータスが変化するようだ。


「……サモナー以外の職業が選択できないのに、ステータスの差異はどう影響するのでしょうか?」


 一般のMMORPGでは基本的にサモナーは魔法職だ。

 従って、召喚士官しか職業を選択できないSWOで、近接戦闘に求められる筋力向きステータスの魔族が存在する意味が、いまいち理解できなかった。


召喚兵士サモンソルジャーはプレイヤーのステータスを模倣します』

「なら、近接戦闘を行う召喚兵士サモンソルジャーのために、前衛向きステータスの方が良いということですか?」

『いえ、一概にそうとは限りません。プレイヤーは召喚兵士サモンソルジャーを召喚する際〝歩兵、騎兵、弓兵、銃兵〟の主に四つの兵科として使い分けることが出来ますので』


 そのあとも続いた説明によると、歩兵主体の戦い方ならば人族、騎兵なら魔族、弓兵を使用したければエルフ、銃兵主体の戦術が理想ならドワーフを勧めるとのことだった。


「つまり、召喚兵士による近距離戦闘の場合は前衛向きのステータスである人族、魔族が有利となるが、弓兵や銃兵などによる遠距離戦闘の場合はエルフやドワーフの方が適している――ということでしょうか?」

『はい』


 なるほど、全ては状況次第ということか。


『そして選択した種族により世界観の都合上、アバターの一部変更できなくなります。この点もご了承ください』

「具体的には?」

『魔族は紅い瞳、エルフは長い耳、ドワーフの黒髪は変更不可。人族は上記の設定以外であればご自由に変更可能ですよ』

「……職業も容姿も満足に決められないのに自由とは一体」


 まあ、話を聞いている限り、このゲームは幅広い層に対応しているというより、どちらかと言えば戦争好きのコアなユーザーを対象としているゲームらしい。

 キャラクター選択の自由度が売りである通常MMORPGとは根本的に違うのだろう。


「……ん?」


 画面を一番下までスクロールすると、気になる文字があった。


「このランダムというのは?」

『低確率ですが、レア種族であるハーフ種族が出現します。ハーフは元となる両種族のステータスを引き継ぎますので優秀ですよ』


 ――なるほど、これがロマンというやつか。


「一回限りですか?」

『はい。やり直しは出来ません』

「……マジか」


 しかし、やり直し不可能とはいえ元々の四種族がどれも一長一短ということもある。ここは天運に任せるという選択肢もありだろう。


「……じゃあ、ランダムにするか」


 俺は意を決してランダムを選択した。


 《ハーフ(人族×ドワーフ)に決定いたしました》


 画面上にそんな文字が流れる。


「よしッ!」

『では、エディットを開始いたします。カイ様の身体をベースとしてアバターを呼び出しますね』


 パネル上に立体的な自分の全体像が浮かび上がった。

 アバターからは自身の面影も見て取れるが、別人と言われれば納得する程度には細部に変更がいじられている。個人情報対策だろうか。

 全体的に線の細い美形な感じで仕上がっていた。


『黒髪以外は変更可能ですが、どうしますか?』

「いえ、そのままで」


 現状でも満足のいくレベルだ。

 こういうのが苦手である俺としては、下手にいじって形を崩したくない。


『それでは最後に所属する国家を選択してください』



 ラグハイム帝国

 大陸の中央を支配する魔族の新興国家。

 密集陣形による騎馬突撃が得意。


 アスグリン王国

 大陸北部の半島をエルフが長年支配する歴史ある国。

 森林地帯を主戦場とした弓戦術が基本。


 エルヴェル皇国

 大陸東部を中心に収める人族の宗主国。

 歩兵を基本とした用兵で様々な戦場に対応する。


 アカツキ連邦

 大陸の西方にあるドワーフの島国。

 銃兵運用は大陸含め世界でもトップクラス。



『初期選択可能な国家は以下の通りです』

「……悩ましいな」


 自分の種族から考えれば、エルヴェル皇国かアカツキ連邦のどちらかだが。

 純粋にエルフの国であるアスグリン王国も捨てがたいし、ラグハイム〝帝国〟という言葉にも魅かれるものがある。


『あとで、所属を変えることも可能ですよ』

「なら、エルヴェル皇国かな」


 やっぱり国家と種族は極力、合わしていた方がいいだろう。戦術にも影響するようだしな。

 それとアカツキ連邦ではなくエルヴェル皇国を選択したのは、単純に大陸の方が動きやすそうという理由からだ。



『では転送を開始します。Summoners War Onlineの世界を存分にお楽しみください』




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