第13話 フルトン教授の昔話(前編)
お久しぶりです。
定期更新はもう諦めました。
ごめんなさい。
「私たちの世界に伝わっている伝説の中で一番有名なのは、『2人の悪魔と7匹の龍』というお話だな。」
「へえ、簡単に言うとどういう話なんだ?」
「そうだなぁ、この世界の歴史のようなものだ。」
「実話なのか?」
「さぁ、それは分からないが、この話が実話だと思っている人は沢山いる、私も含めてな。」
そう言うとフルトンは、首を傾けながらウインクした。
少し前までなら、吐き気を催していたのに、既に慣れてき始めている自分が怖い。
「では、始めようか。『2人の悪魔と7匹の龍』始まり、始まり〜」
フルトンはコホンと咳払いをすると、口調を変えて話し始めた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
昔々、まだ魔法陣が一般的に使われていた時のお話です。
その時代、人間と魔物は今のように纏まってはおらず 、絶えず争いながら生活していました。人間は強力な魔物を、魔物は強力な人間を恐れて暮らしていたのです。
そんなある日、とても強い人間の集団が突然現れました。その集団の団員は50人もいました。そしてその50人全員がとても戦いに慣れており、力も並大抵のものではありませんでした。
人々はその集団が今までどこで何をしていたのかを知りたがりましたが、団員は誰一人として教えてはくれませんでした。
その集団には2人の男女のリーダーがいました。男の名前をフリード、女の名前をテレジアと言いました。この2人は兄弟だったのですが、その苗字は絶対に教えてもらえませんでした。
団員に聞いても、やはり誰一人として教えてはくれませんでした。
この集団の出現に、魔物達は慌てました。何とか倒そうと、群れをなして襲いかかっても傷一つ付けることもできませんでした。
ですが、魔物達にとって幸運なことに、この集団は戦いを好みませんでした。普段から人々には優しく接し、魔物に自分たちから襲いかかることは決してしませんでした。
ですから、次第に魔物達がこの集団に襲いかかってくることはなくなっていきました。
この集団は、決して1つの場所に長く留まることはありませんでした。長くて五日、短い時は一日も経たない内に出発しました。
目的を聞くと、「世界を旅して、色々な町の特徴を見て回るため」と答えましたが、理由を聞くと、やはり誰一人として答えませんでした。
人々は最初、色々なことを隠すこの集団を少し奇妙に思いましたが、自分達に優しく接してくれるので良い人達だな、と思うようになっていきました。
その上、この集団の人達は全員が博学でした。つまり、頭が良かったのです。文字の読み書きはもちろん、色々な種類の魔法陣も知っていました。
訪れた村で何か困ったことが起きていれば、その解決策を教えてくれました。子供達には、文字の読み書きを教えてくれました。病気の人がいれば、魔法陣を使って治してくれました。
次第にこの集団は人気になっていき、人々は「旅する神々」と呼ぶようになりました。そして、彼らの秘密を気にする者は誰もいなくなっていました。
旅する神々と呼ばれる集団ができて、約5年の月日が流れました。彼等は世界を1周した後、世界の主要な町を中心に旅を続けていました。しかし、彼等は決して1週間以上同じ町に滞在することはありませんでした。
ある時、旅する神々が2週間以上1つの町に滞在していました。パックスという町で、その当時、貿易や旅行などによく使われ、町と町とを繋ぐ中継地点のような場所でした。
人々は、旅する神々を心配しました。でも、彼等なら大丈夫だろうという気持ちがどこかにあり、人々は何もしませんでした。
更に数日が経ったある日、沢山の町に緊急の連絡が魔法で入りました。パックスからの連絡でした。
その魔法は音声を送る魔法で、そこにはこんなメッセージが入っていました。
「こ、こちらパックス。悪魔、悪魔だ。あれは悪魔。か、神、ぎゃあああぁぁぁぁ。」
人々は、旅する神々でも倒せない「悪魔」という名前の魔物に、パックスの町は襲われたんだと思いました。強い人達は、旅する神々の仇を取ろうと急いでパックスに駆けつけました。
パックスの町は、地獄のようでした。
血や臓物が大量に飛び散らかっていました。家屋は壊され、火の手もそこら中から上がっています。
駆けつけた人々は、魔法を使って火を消す者、生存者を探す者、悪魔の行方を追う者に分かれて作業を開始しました。
まず、消火部隊はとても苦労しました。なぜなら、パックスの町に広がっていた炎は魔法によって生み出されたものだったからです。だから、例え燃えるものが無くなっても勢いを増してどんどん燃え広がっていきます。
消火部隊は、必死になって水魔法や、魔法を打ち消す魔法を使うことで何とか火を消していきました。
次に、捜索部隊は奇妙に思いました。なぜなら血や臓物は飛び散らかっているのに、死体がどこにも無いのです。もちろん悪魔という魔物が食べてしまった可能性もありますが、パックスの町の人口はそれほど少なくは無かった筈なのです。
かと言って、パックスの人々を全員食べてしまえる程の大きな魔物の集団にパックスの町が、襲われるまで気付かないはずがありません。
魔物は習性として、人間の死体を持ち帰って食べるということはしないので、捜索部隊の人々はおかしいと思いながらも、生きている人を探しました。
最後に、悪魔の追跡部隊の人々です。彼らは、森へ向かって点々と続いている血の跡を追って行きました。しかしそこには人の足あともたくさん残っていたので、パックスの町から命からがら逃げ出した人々だろうと予想し、その人達から悪魔についての情報を集めようと思っていました。
血の跡を追って行くと、やはりそこにはたくさんの人がいました。しかし、そこにいたのはパックスの人々ではありませんでした。そこにいたのは、
口の周りを血に染めた、「旅する神々」でした。
追跡部隊の人々は目の前の状況を理解することができませんでした。なぜこんな所に「旅する神々」がいるのか。なぜ彼らは口の周りが血だらけなのか。彼らは一体パックスの町で何をしていたのか。
追跡部隊のリーダーは、真っ先に正気に戻ると叫びました。
「こいつらが、旅する神々が、悪魔だったんだぁぁ!!」
リーダーの声で正気を取り戻したメンバーは、すぐに行動を始めました。仲間の元へ悪魔の正体を伝える者。パックスの人々の仇を取るため襲いかかっていく者。彼らを援護するため魔法の準備を始める者もいました。
追跡部隊からの連絡を受けた人々は、信じられませんでした。あんなに優しかった「旅する神々」が、パックスの町を襲い、住人を一人残らず食べてしまった、ということが。
しかし、それならば生存者の捜索隊が不思議がっていた謎も解けます。50人もいればそれなりの数を食べることもできますし、彼らは人間なので死体を持ち帰ることもできます。
その後、追跡部隊の人々が帰ってくることはありませんでした。みんな旅する神々に、いや、悪魔にやられてしまったのです。
追跡部隊からの連絡を受けた人々は、この事実を広めました。初めは信じてもらえなかったのですが、必死に説明し、何とか納得してもらいました。
この日から、彼らは旅する神々ではなく、放浪する悪魔と呼ばれるようになりました。そして、世界と悪魔との戦いが始まったのです。
お久しぶりです。
今回で昔話を終わらせるつもりが、意外と長くなってしまいました。
それに合わせて、前話のタイトルが変わっています。
次回がいつになるかは分かりませんが、ゆっくりと待っていただければ幸いです。




