最終話 最終章完結 世界で一番愛しい名前
それから、二年が経った。我輩は、父と母に会えないと寂しがっていた。
そうしたら、びっくりだ。露世が魔界に父と母を呼んでくれたのだ。
だから、父と母もフォトリベされて、若い姿のままだ。
こうして、我輩は寂しくなくなった。
三年後。我輩は妊娠して、露世の子を身ごもった。
臨月になった時のことだ。
珍客が大魔王殿に現れた。
「写影子、久しぶりだな!」
「写影彦お兄さんなのだ!」
写影彦お兄さんは、何故かあの時のままの若い姿だった。
我輩は、写影彦兄さんのことを不思議な存在として覚えていた。
そして、あの時シャドウの消去のように消えた写影彦兄さんのことを、心配してもいた。
だから、我輩は再会を喜んでいた。
臨月の我輩のおなかに手を置いて、写影彦お兄さんは嬉しそうだった。
「……実は、俺、写影子の兄さんじゃないんだ」
「えっ?」
「それだけを伝えたくて、《《未来》》から来た」
一体、どういうことだろう?
写影彦は、いったい何者なんだろう?
我輩が頭をかしげていると、再び写影彦の姿が薄くなった。
「また、遊びに来るよ。写影子」
「えっ?」
「ううん。《《写影子母さん》》またね」
写影彦は未来に帰って行ったのか?
「えっ? どういうことなのだ?」
我輩はしばらくポカンとしていた。
『写影子母さん』
しかし、写影彦の声がよみがえって、我輩は笑い声をあげた。
すっかり、合点がいったのだ。
つまり、写影彦は我輩のことをずっと未来から見守ってくれていたのだわ。
我輩が、露世にちゃんと出会って、写影彦と再び出会えるか。それを危惧して見守ってくれていたのか。
我輩は、笑い声をあげた。わが子が愛しいと思う気持ちが湧いて出てくる。
そうして、三日後、我輩は出産した。
その男の子には、『写影彦』と名付けた。
この世で一番愛しい名前を。
<完>
ここまで読んでくださってありがとうございます。一度、自分のフォトリベに嫌気がさし、無理やり打ち切りエンドにしようとしましたが、応援してくださっている方々の存在を思い出し、ハッと我に返り続きを書き始めました。最後まで書けたのは、ひとえに応援してくださった方々のおかげです。
あと、書ききれなかったネタバレですが。
「第四話 謎の高校生男子のレイフォトをフォトリベしよう!」の本当の答えは、
『①。青葉極見は』『②。デッドキス』『③。の、配下で』『④。詩口写実』『⑤。は、誘拐された』『⑥。夜桜創理を』『⑦。捕えている』で、⑥と⑦は、詩口写実が命令して来栖野律雅が破壊の能力でそれを壊したのであります。なので、①~⑤までしか集まらなかったので、写影子たちは詩口写実が誘拐されたと誤解したのです。
ここまでお読みくださいましてありがとうございました。では、次回作でお会いできることを願って。
2016・10・20




