第二話 最後の時に
それから月日が流れ、我輩は八十歳になった。
我輩に飴ちゃんも鑑もプロポーズしてきたが、我輩は突っぱね続けて、今に至るというわけだ。
自宅に帰ってくると、ドアが七色に光っていた。
驚いた我輩は、魔法のカメラでそれを収めた。
レイフォトが魔法のカメラから出てくる。
「久しぶりのフォトリベなのだわね!」
我輩は、思い切ってそれをフォトリベした。
すると、白い影が現れた。
クスクスと笑い声が我輩の頭の中を回って聞こえる。
白い影が我輩の周りを舞う。白い影は詩口写実の姿になった。
詩口写実が高校一年生の姿で我輩に笑いかけた。
けれども、我輩はおばあちゃん。
あれからあんなに時が経ったのか。
「写影子さん。あなた、露世のことを八十歳になるまで一途に思い続けるなんて相当キてるわね」
我輩は力なく笑った。
「そうかもしれないわね。飴ちゃんや鑑と結婚していれば、楽しい人生が遅れていたかもしれないだわね」
「……バカなところって、ずっと治らないのね」
「そうかもしれないだわね」
「……でも、私の存在をずっと覚えてくれて嬉しかった。あなた、私がシャドウだったからって私のこと全然馬鹿にしないのね。見直したわ」
「……詩口さん、我輩のせいで辛い目に合わせてごめんなさい」
「なによ。謝るのは私の方じゃない! 写影子って、とんだお人良しね!」
詩口写実は涙を一滴こぼした。それを急いで拭って、我輩に微笑みかける。
「いいわ。負けずにずっと生きてきたご褒美を私があげる。さあ、行きなさい、写影子!」
「えっ? 行くって、どこに?」
瞬間、真っ白い光が我輩の体を包み込む。
我輩の体が浮き上がる。
出口が見える。我輩は出口に吸い込まれる……!
「私の代わりに楽しんできてね、写影子! 今度こそ、幸せになるのよ!」
詩口写実の声が最後に響いた。




