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フォトリベレーション~一寸のシャドウにも五分の魂~  作者: 幻想桃瑠
◆+◆最終章◆+◆フォトリベで幸せに!? ハッピーエンドになるはずで章◆+◆
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第一話 名前の秘密と家族の理由

 我輩はそれから、一か月も寝込んでしまった。

 露世とこの世の別れになってしまったことから、なかなか立ち直れなかった。

 十一月になると、我輩は学校に戻れるぐらいには回復していた。

 ボロボロの我輩を見かねた連辞が、我輩の自宅にやってきたのは、十一月の暮れのことだった。


「写影子ちゃん! 良い人を連れて来たよ!」

「連辞! えっ?」


 ちょうど我輩は庭の手入れをしていたところだった。

 連辞の後ろにいる人たちを見て我輩はびっくりした。

 連辞が連れてきた客。

 それは、母と父だった。しかし、母も父もどことなく印象が違う。


「はじめまして、写影子。私は、貴方の母の袋小路翼ふくろこうじつばさです」

「はじめまして、写影子。俺は、貴方の父の月野原現つきのはらうつつです」


 我輩は状況についていけないでいる。


「ちょ、ちょっと、待ってほしいのだ。我輩の母は、月野原羽子で、我輩の父は、月野原写なのだ」


「それは、偽名なんだよ。写影子」

「あれは、私と現さんのシャドウだったの」

「ど、どういうことなのだ?」


 我輩は家の中に通して、お茶を二人に出した。

 二人は、我輩の方を愛しそうに見ながら、ぽつぽつと話し出した。


「私と現さんが出会ったのは、高校を卒業してからすぐのことだったわ」

「俺と翼さんは、それから恋に落ちて、それから三年後、写影子が産まれた」


「じゃあ、なんでずっと我輩のお父さんとお母さんはシャドウだったのだ?」


 翼さんは、悲しそうに話し始めた。


「私の家は、袋小路グループの財閥で、四ツ葉の現さんとの結婚を大反対されていたの」

「だから、俺と翼さんは引きはがされて、写影子を翼さんの親に取られそうになった」

「だから、私と現さんは大芝居を打つことにしたのよ」


「大芝居?」


「俺の職業は四ツ葉だった。だから、デッドキスとも鬼瀬とも顔見知りだった」

「えっ、鬼瀬さんと?」


 それで、我輩に鬼瀬さんは優しくしてくれたのか。


「鬼瀬に優しくしていたせいか、鬼瀬が協力してくれると申し出てくれた。鬼瀬が手下に夜桜創理のような特殊人物に協力してもらって、写影子のシャドウの詩口写実を作ったと聞いたのは、それから間もなくのことだった」


「えっ!? 詩口さんを!?」


「そうして、私は仕方なく写影子が誘拐されたと嘘をついたの」

「それから、まだ名もなかった本物の俺たちの子に名前を付けた」

「我輩の親に我輩たちの子供を取られないように、自分の子供のシャドウだと嘘をつくために」

「写影。つまり、『写影子』と名付けた」


 最初から我輩は、両親の愛に包まれていた。

 我輩の大嫌いな名前は、両親の愛情でつけられたものだったのだ。

 我輩はシャドウではなかった。本物のオリジナルだったのだ。

 そして、詩口写実は、我輩のために生まれた被害者のシャドウだったのだ。

 我輩は、両親の目の前でワァッと声を上げて泣いた。

 嬉し泣きでもあり、我輩のせいで生まれてきたシャドウの詩口写実に対する懺悔の涙でもあった。


「それから、俺たちはシャドウを作って、家族ごっこを始めたんだ」

「私の両親は、同情して我輩たちの家族ごっこを壊そうとはしなかった」


「でもね、写影子。これからはまた三人で暮らせるからね」

「私の両親からお許しが出たの! だからね、こんどこそ現さんと結婚して、本物の家族になれるのよ、私たちは!」


 夢みたいだった。

 我輩の家族が戻ってきた。

 そして、我輩はいつも通り、両親と一緒に暮らせるようになった。


 しかし、一つ不可解なことがあった。

 兄の写影彦のことを聞いて驚いた。

 我輩には、兄もいなければ、写影彦という血縁者などどこにもいなかったのだ。

 我輩はキツネにつままれたような気分だった。


 そして、数年の時日が流れた。

 けれども、露世だけはこの世のどこにもいなかったのである。

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