第九話 露世の告白と写影子の気持ち
「大丈夫か、月野原!」
「ろ、露世……! 痛ッ」
「足を怪我したのか」
「叩きつけられたときに折ったかもしれないのだ」
そうだ、露世は我輩と一緒にテレポーテーションしてきたんだ。
危ないかもしれないから、向こうに置いてきたというのに。
露世は、我輩が大丈夫そうだと分かってホッと息を吐き出した。
我輩は、大魔王が唸り声をあげて地団太を踏んでいることに、焦燥を感じて露世の腕をつかんだ。
「露世! 特殊写真持ってる? 早く戦わないと、みんなが……!」
「いや、特殊写真は持ってない。魔法のカメラも水に濡れて壊れた」
「そんな……!」
絶望感に我輩の視界が揺れる。本日国はこれで終わりなのか。
我輩は露世に告白もしないまま、両想いにも慣れないまま、ここでみんなと一緒に心中なのか。
一人絶望感と戦っている我輩に対して、露世は何故かリラックスしていた。
「でも、大丈夫だから」
朗らかに笑って言う露世の神経が信じられない!
「何が大丈夫なのだ!? 大魔王が復活しているのに!」
「まあ、良いから。俺には、これがある」
「それは、大魔王の秘宝の鍵!?」
そんな秘密兵器があったのか。
「大魔王の秘宝というから、ものすごく強力な武器かな? はたまた、ものすごく高価なお宝で、これと交換して怒りを鎮めてもらうのかな?」
露世は、困ったように微笑んだ。
えっ……?
なんで、困ったように微笑むのだ?
なんだろう。この嫌な予感は。レイフォトの表情のないシャドウが真実を告げているわけでもないのに、ものすごく胸騒ぎがする。
我輩は、何かとんでもない間違いを犯してしまったんじゃ……?
「月野原」
「な、なに?」
「俺、月野原を利用したんだ」
「えっ? 利用?」
我輩は露世のとんでもない告白に、衝撃を受けて固まった。
利用? 利用って何なのだ? 我輩と露世は恋人同士じゃないけど、友達であったはずだ。それなのに、利用……?
「俺、この大魔王の秘宝の鍵がずっと欲しかったんだ」
なにそれ?
「だから、特殊能力があるはずの月野原に近付いて、フォトリベの世界にいざなった」
なにそれ?
「だから、月野原が大魔王の秘宝の鍵を手に入れたときはすごくうれしくて」
なんだそれ!
「ひどいのだ! 最初から、露世は我輩を利用するつもりで近付いたんだね!」
そうだ。今更になって気づいたことがある。
露世はこんなに格好良いのに何故かモテない。
それは、性格が最悪の残念系の男子だからだ。
我輩に対しては優しい人だと思っていた。
だから、我輩は心を許していた。
恋人ではない。でも――。
「我輩は友達だと思っていたのだ!! ううん。我輩は露世のことが異性として大好きだったのに!!」
悲鳴のような声の後には、嗚咽で何もしゃべれなくなった。
「残念ながら、俺は友達だと思ってないよ」
「ッ!!」
我輩は失恋することを覚悟していた。でも、我輩は露世の友達ですらなかったんだ。
我輩は台風の中を舞った紙屑のようだった。
「友達だとは思ってないよ。だって、俺も月野原のことが好きだから」
「えっ?」
顔を上げると、露世がはにかんだように微笑んでいた。




