第七話 どうして、月野原写影子が○○○○なのか?~回答編~
「命乞い? いいわ、死ぬ前に思う存分私に懇願しなさい」
「じゃあ、そうするのだ」
我輩がそういうと、詩口写実はアハハと悦に入ったように笑った。
「我輩は、自分がシャドウで、デッドキスで、大魔王を復活させようとしているのだと思ったのだ」
「うんうん!」
詩口写実は楽しそうに我輩の命乞いを聞いている。
「でも、詩口さんが我輩を殺そうとしているそれは、普通の拳銃なのだ」
「……」
詩口写実が笑うのを止めた。
「シャドウの我輩を殺すには、イレイスするか、イレイスガンを使うのが普通だと思うんだよね」
「……」
詩口写実は我輩を睨んでいる。
「つまり、我輩は、シャドウでもデッドキスでもなければ、大魔王を復活させようとしてないってことなのだ!」
「違うわ。レイフォトは真実を告げている! 感情のないレイフォトが真実を告げているのよ! これはどう説明するつもりなの?」
「トリックがあるのだ。我輩と詩口さんの顔はそっくりなのだ。だから、詩口さんが髪の毛を切って、我輩と同じ髪型にしているんじゃないかと思ったのだ」
「どこが!? 私はロングヘアよ!」
「詩口さんが、我輩の髪型にしてロングのウィッグを被っているんだとしたら……?」
つまり真実を告げているから、詩口写実の本当の髪型がレイフォトに写っていたのだ。
詩口写実がカッとなって、拳銃を我輩に構えた。
「つまり、シャドウでデッドキスで大魔王を復活させようとしているのは、詩口さんの方なのだ! だから、詩口さんは本物の我輩のことが大嫌いなのだ!」
「うるさい!」
「シャドウは我輩ではなく、詩口写実が我輩のシャドウなのだ!!」
「うるさい! うるさい! 黙れェェェ!!」
詩口写実が拳銃を発砲するより早く、彩島騎得が「イレイス!」と叫んだ。
「あ……! あああああ! 私の体が!」
「俺の家族が大仕事を頼まれたと話していた。でも俺は内容を教えてもらえなかった。だから、来栖野律雅に頼んで、何の仕事か探っていたんだ。月野原さんが大魔王復活させようとしているから止めようと思ったんだけど、まさか詩口さんがとは思わなかったよ」
「ありがとう、彩島君!」
詩口写実は拳銃をつかめなくなって床に落とした。
「創理! 早く、私の体を再生しなさい! 早く!」
夜桜創理がデッドキスの詩口写実にとらわれていた理由。それは、詩口写実がシャドウだから、いつ消えても再生できるように夜桜創理を利用しようとしていたのだ。
「嫌です。私の力はあなたには使いません」
しかし、夜桜創理は従わなかった。自分の意志までは操作されてなかった。
詩口写実は哄笑した。
「あ……あははははは! 私が消えても、どうせこの世は終わるのだ!! 大魔王はもうすぐ復活する!! けれども、私しか大魔王を止めるすべを知らない!! せいぜい、私の体を再生しなかったことを悔いるがいい!! アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
詩口写実は、そういいながら空気に溶けて消滅した。床には、ロングのウイッグと赤いプラスチックのふちの眼鏡だけが残されていた。
その直後、洞窟内に地鳴りがして、どこからともなく唸り声が聞こえて来た。




