第六話 どうして、月野原写影子が○○○○なのか?~問題編~
「いたた、ここは……?」
声が反響する。ここは、どこかの広い洞窟みたいだ。周りには鍾乳石とごつごつした岩壁が広がっている。我輩は全身が寒いことに気が付いた。体が濡れている。制服はびしょびしょで、魔法のカメラも水に濡れていた。
どうやら、あのレイフォトはトラップだったようだ。
「えっ!? 露世!?」
我輩は隣に倒れている人物を見つけて驚いた。
露世が意識を失って倒れていたのだ。
もしかして、意識がないのは我輩をかばってくれたのだろうか。
「露世、大丈夫!?」
口元に手をやってみると、呼吸していた。溺れていたわけではなさそうだ。
我輩はほっと安堵して、魔法のカメラを触った。
「壊れてないかな……?」
試しに自分を撮ろうとしたが駄目だった。
「げっ、壊れたの!? マズイ!」
我輩は妙な焦燥感を覚えた。
「マズイよ! 敵がいたら、我輩丸腰なのだ!」
「それはよかったわ」
「えっ!?」
我輩とよく似た声がして振り返って、びっくりした。
我輩そっくりの詩口写実がここにいた。
しかし、詩口写実はロングヘアだ。赤いプラスチックのふちの眼鏡をかけている。
「やっぱり、あれは我輩のレイフォトで、真実を告げていたのだ……」
我輩は落胆して、泣きそうな目でオリジナルの詩口写実を見つめた。
「そうね、貴方は私のシャドウ」
詩口写実はクスクスと楽しそうに嗤っている。
ふつふつと反抗心が生まれてくる。
我輩の脳裏に父の言葉がよみがえった。
「でも、我輩の父は我輩は本物だと言っていたのだ!」
「シャドウが言ったことでしょ? 信じるのそれを?」
我輩は言葉に詰まり歯噛みした。
「しかも、貴方、デッドキスなんでしょ? それで、鬼瀬があなたに甘い顔をしているんだわ」
「ッ!?」
なんなのだろう。この詩口写実は。なんで、我輩のプライバシーをここまで調べ上げているんだ?
「それに、あなたの家族は、彩島騎得にイレイスされたんじゃない」
「……!」
土を踏みにじる音がして振り返ると、彩島騎得がいた。そして、その隣には夜桜創理が。
「彩島君に、創理さん!? なんでこんなところにいるの!?」
彩島騎得はやはりインフルエンザではなかったのだ。何のためにこんなところにいるんだ? それに、創理は、鑑の姉ではないか。
「なんで、創理さんが? デッドキスにとらわれているはずなのに、こんなところにいるの?」
「私も、貴方と同じデッドキスだからよ!」
「えっ!?」
「私が、創理を手放さないだけなの。なんでか分かる?」
我輩はかぶりを振った。
「貴方にはわからないわ。そしてね、私は月野原写影子がこの世で一番嫌いなの!」
「ッ!?」
「この世で、あんたが一番嫌い! 嫌いで嫌いでたまらない!」
詩口写実の鬼のような形相に我輩はゾッとした。詩口写実は、拳銃を取り出すと、それに弾を込めている。
「拳銃を出すってことは、詩口さんは我輩に死んでほしいんだよね?」
我輩は震える声でこわごわと呟いた。口の中が乾いている。
「そうよ~。察しが良いじゃない」
「分かったのだ。最後に一言喋らせてほしいのだ」
我輩が、懇願するように言うと、詩口写実はニヤッと意地が悪そうに笑った。




