第三話 手掛かりは○○○○!
事件の臭いがプンプンする。まず、我輩はテレビや新聞のニュースに着目した。けれども、ニュースには取り上げられていないようだった。
彩島騎得のスマホのアドレスを聞いて、メールをしてみたが返事は返ってこない。ラインもだ。
そして、担任に聞いてみれば、彩島騎得はインフルエンザだという。インフルエンザの流行り初めかもしれない。
けれども、来栖野律雅が来てそうなったということがやけに引っかかる。本当に彩島騎得はインフルエンザなのだろうか。
「事件の予感がするよね」
「ホントだよなァ。来栖野律雅のせいだろ、絶対」
「彩島君に聞いてもダメだったのだ」
「こうなったら、来栖野に聞くべきだろ!」
「そうだね!」
我輩たちは、休み時間になると、意気揚々と来栖野律雅のクラスに訪ねて行った。ちなみに、クラスはフォトグラン学院のホームページで調べた。
来栖野律雅は、一年五組のクラスに在籍していた。我輩が来栖野君を呼び出すと、彼はげんなりとした顔でため息をつき、教室のドアの背にもたれて足を組んだ。
「お前ら、何しに来たわけ? 大体想像つくけど」
「想像付くのなら話が早い」と、鑑。
「彩島が学校に来なくなった」と、露世も続ける。
鑑と露世の発言を受けて、来栖野君の目元がかすかに動いた。
「……だから?」
「来栖野君が、レイフォトを彩島君に渡してからなのだ」
来栖野君はしまったとばかりに自分の額を叩いた。かなり良い音がした。
「やっぱり見てたのか~。彩島騎得はお前らのクラスだもんな~」
来栖野君は、自分自身のミスを呪うように言った。
一年一組にはもれなく、我輩たちが付いてくるのだ。多分。
鑑がにっこりとほほ笑んだ。
「それでね、僕たちはどうして彩島騎得が学校を休んでいるのかが知りたいんだ」
露世と我輩もにっこりとほほ笑んだ。
「教えろ」
「教えるのだ」
そんな我輩たちを自分にまとわりついた蚊のように、シッシッと手で追い払う。
「そんなの、彩島に電話でもかければいいだろ?」
「かけたけど出なかったのだ」
「担任の三毛野先生はインフルエンザだって家から連絡があったって言ってた」
「だったら、インフルエンザじゃないかな~」
来栖野君は腕を組んで、人差し指でイライラと片方の自分の腕を叩いている。
「俺はインフルエンザじゃないと思うぜ。何故なら、来栖野が尋ねてきてレイフォトを渡してからこうなった!」
来栖野君のイライラしていた人差し指が止まった。
「……俺は秘密主義なんでね。顧客の情報は絶対に守るんだよ。自分の命が危うくなるからね」
我輩たちは、ウッと喉につっかえたように身構えた。命に係わると聞くと、尋ねるわけにはいかないだろう。我輩はしょぼんとうつむいた。
「そっかぁ。仕方ないのだ」
前方から長いため息が聞こえてきて、我輩は顔を上げた。
うんざりとした目をして、来栖野君は我輩を見下ろしている。
「……例の光のポイントの色は、オレンジなんだ」
「えっ?」
我輩は目をぱちくりさせた。
「だから、どうしても知りたいなら自分たちで探せばいいだろ?」
「ありがとう、来栖野君!」
我輩たちは大喜びして来栖野君と別れると、一年一組の教室に戻って行った。
ちょうど、休み時間終了のチャイムの音が急かすように鳴り響くところだった。




