第二話 彩島騎得と来栖野律雅
それから、二ヵ月が経過した。気温が下回ってきたので、学生は冬服の制服を着ている。
エアコンのついた教室内は温かだが、廊下は冷え冷えとしているようだ。
休み時間になると、他のクラスから誰かが白い息を持ち込んだ。
「彩島騎得っている?」
「彩島~! 来栖野が来てるぞ~!」
クラスメイトの一人が彩島騎得に声を張り上げて伝達したので、みんなの視線はそちらにくぎ付けになった。
「えっ? 来栖野君?」
かくいう我輩も、来栖野律雅の来訪に悪い予感を禁じ得ない。休み時間なので、我輩の席に集まっていた露世と鑑も、そちらに集中している。
「来栖野律雅が一体彩島騎得に何の用なんだァ?」
「彩島騎得って、イレイサーの家系だっけ?」
「来栖野君はいろいろと厄介ごとを持ち込んでくるから、気になるのだ」
我輩と露世と鑑は、視線を来栖野律雅に合わせたまま呟いた。
彩島騎得は、代々イレイサーの家系で、本人も大層な消去の呪文が使えるらしい。
来栖野律雅は、探偵の能力と破壊の能力が使えるので、デッドキスやそれと反する四ツ葉から光のポイント破壊の依頼が舞い込んでくるらしい。危険な依頼もあるので、秘密を厳守しなければ、本人の命に係わるらしい。
その来栖野君が彩島君に一体何の用なのだろう?
「気になるな」
「気になるのだ」
「じゃあ、覗きに行く?」
鑑の言葉に我輩たちは顔を見合わせて、ニヤッと笑った。
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寒々とした教室の窓から、我輩たちは彼らの様子を注視していた。
彩島騎得は廊下で寒々としながら、来栖野律雅に何かをもらっていた。
「彩島君、何かを来栖野君から貰っているのだ」
彩島騎得が何かをポケットにしまっている。
それを目撃した我輩は鋭く発見した。
「あれは、レイフォトなのだ」
「レイフォト?」
「なんか、事件の臭いがするなァ」
「サンキュ! 恩に着るよ!」と、彩島騎得は嬉々として礼を言っていた。
用が済んだ彩島騎得は、早々と教室に戻ってきた。どことなく、ご機嫌だ。
我輩たちは彩島騎得の元に駆け寄った。
「彩島君、来栖野君が一体何の用だったのだ?」
「えっ? なんでもいいだろ?」
「そ、そうだね。ゴメン!」
個人のプライバシーに突っ込んで聞くことはためらわれる。
我輩が謝罪している横で、露世と鑑が目を見合わせていた。
その翌日、彩島騎得に変化があった。
しかし、彩島騎得の姿はここにはない。
彩島騎得は、あの日を最後にぱったりと学校に来なくなったのだ。
二階堂連辞は、大した事件じゃないので、潜入捜査と称して学校に登校しなくなったのは仕方ないと言えよう。
しかし、彩島騎得は……?




