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フォトリベレーション~一寸のシャドウにも五分の魂~  作者: 幻想桃瑠
◆+◆第五章◆+◆フォトリベで三つどもえ!? 鍵を求める人たちの対決で章◆+◆
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第十二話 鑑が無事なのはどうしてなのか?~回答編~

「えっ!? 鑑!?」

「どうなってるんだァ?」


 ガラスを割って入ってきたのは、夜桜鑑だった。

 前方には鑑がいる。後方にもまた鑑がいる。

 我輩は鑑を振り返って、また侵入者の夜桜鑑を確かめる。

 緊迫感に汗が流れる。


「鑑が二人!? どういうこと? 双子なの?」


 それにしては、登場の仕方があまりにも過激すぎる。

 敵対せずにこんな登場の仕方をするなら、きっと頭の線が一本切れているに違いない。


「違うよ、写影子。僕もあいつもシャドウだよ」


 えっ、鑑がシャドウ……?

 我輩は急に鑑に親近感を覚えた。

 我輩もシャドウだと言われた身だ。

 鑑がシャドウなら、我輩は鑑と親友になれそうな予感がする。


「えっ!? でも、イレイスされたときに、お前は消えなかったじゃねーか!」


 親近感を覚えている我輩の横で、露世が疑問点に気付いた。

 そうだ。鑑はイレイスの呪文で消えなかった。我輩も消えなかった。


「それは、僕とこいつが、姉の創理に作られた特別なシャドウだからだよ。だから、簡単には消えない」


 両方の鑑は姉に作られたシャドウ!?


「お姉さんって、まさかそういう能力があるの?」

「だから、デッドキスに捕まっている」


 飴ちゃんといい、創理さんといい、特別な能力のある人間はすべてデッドキスに狙われ続けてしまうのか。


「こいつは、一番目の夜桜鑑のシャドウですよ。写影子さん」


 侵入者の鑑は、礼儀正しくそう言った。

 鑑とはどことなく、喋り方も印象も違う。


「アイツは二番目の夜桜鑑のシャドウ。ずっと、僕はテストされ続けている。時々、入れ替わっていたことに気付かなかったでしょ?」

「もしかして、鑑が見つけ次第始末しろと言っていたのは……!? じゃあ、鑑の家の方角で、きな臭い動きがあったのって!?」

「ああ。ずっと、こいつと戦っていたんだ」


 我輩はのどの空気の塊を嚥下した。


「な、何のために?」

「「鍵を探し出して、僕が、次の夜桜鑑のオリジナルになるために」」


 次の、夜桜鑑のオリジナル……?


「えっ? どういうことなのだ? じゃあ、夜桜鑑のオリジナルは……?」

「写影子は、レイフォトで見たんでしょ?」

「え、あ!」


 我輩は、この間のレイフォトの結果を思い出していた。


「夜桜鑑は死んだ。つまり、一番目の夜桜鑑のオリジナルは死んだってことか?」

「そうですよ。本物の夜桜鑑は、八十を超えた年齢の植物人間状態だった。それが朽ちただけのこと」


「そして、この鍵は、夜桜鑑の心臓が入っている保管庫を開ける鍵!」


 鑑が鍵を取り出した途端、侵入者の鑑が何かを取り出して鑑めがけて撃った。

 鋭い音がして、我輩の隣にいた鑑が倒れていく。


「ッ!?」


 命中したそれのせいで、鑑は床に横たわった。

 途端に、鑑の体が透け始める。


「それって!?」

「そう。これは最近開発されたイレイスガン。どんなシャドウでも命中したら、一撃で消滅してしまう!」


 鑑が消えてしまう!? 我輩の心臓がドクンと鳴った。

 いや、解決策はある。


「ま、また、鑑のシャドウを作れば……!」


 我輩はぎこちなく笑った。

 露世のシャドウのロゼだって、消去されてまたフォトリベされたら記憶は受け継がれている。なら、鑑だって――。


「残念ながら、彼も我輩も、創理が作り出した特別なシャドウ。消滅して生き返るなんてことはないんですよ」

「そんな……! 鑑!!」

「あははははははは! これで、僕がオリジナルですね!」


 侵入者の鑑は大笑いしながら、鑑が落とした鍵を拾っている。

 我輩は鑑に駆け寄った。鑑の手を取ろうとしたがうまくいかない。

 透き通ってフォログラムのようになっているので、つかむことも触ることもできないのだ。

 鑑はパンチで穴を無数に開けられた紙屑のようになって、床の上で消えかかっている。


「写影子、サヨナラの時かもね。楽しかったよ」

「待ってよ! そんなのってないのだ!」

「おい! 何とかできないのかよ!」


 その時、空間が明滅した。

 光が収束して、一人の女性になった。


「させない!」


 侵入者の鑑からイレイスガンを奪って、その女性は発砲した。


「創理!? 何を!?」


 えっ!? 創理さん!?


「お前は、私の弟じゃない! 本物の夜桜鑑になるのは、彼よ!」

「うわあああああああああ!」


 イレイスガンのせいで、侵入者の鑑は消滅した。

 そして、創理は、鍵を拾い上げた。

 そして、こちらの鑑に駆け寄る。


「鑑!」


 創理が呼んだとたん、消えかかっていたこちらの鑑の姿が色濃く戻る。

 創理は、拾ったカギを鑑の左胸に突き刺した。そして、鍵を回す。

 すると、心臓が現れて、鑑の左胸の中で強い鼓動を打ち始める。

 鑑の体が、透明感を失い一人の人間に戻った。


「姉さん……?」


 鑑は血色のいい顔でそういうと、疲れたように目を閉じた。


「鑑!」

「夜桜!」

「大丈夫です、眠っているだけです」

「なんだ、良かったのだ。ええと、鑑のお姉さん?」

「創理です。写影子さん」


 我輩は目をぱちくりさせた。

 アレ? 創理さんは、たしか、捕まっていたんじゃ?


「写影子さんに罪があると、あの人は言っていましたが、私はそうは思いません」


 あの人……?


「もう時間のようです」

「創理さん!」


 今度は、創理が消えた。イレイスガンが床に転がる。

 テレポーテーションのようなものだったのだろうか。

 部屋の中に冷え切った風が侵入してくる。

 静寂だけが、この屋敷を支配していた。

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