第十話 有栖川黒烏(ありすがわこくう)
え~? どうなっているのだ?
こんな有名人が、選挙の応援でもないのに、こんな片田舎に来るなんて。
唖然としていると、有栖川総理が、土手を下りてきた。
「も、もしかして、露世の知り合いなの?」
「まあ、ちょっと……」
「ええっ!? 親戚かなんかなの?」
「ははは……」
露世がから笑いしているのだ。怪しいのだ。
「露世早く! その少年の鍵を奪いなさい!」
今、木片の鍵は鑑の手の中にある。
有栖川総理の泥棒じみた発言に、鑑はムッとした。
「えっ!?」
我輩も、有栖川総理に違和感を覚えていた。
「……総理ともあろうお方が、いただけない言い方ですね」
鑑はカバンの中にそれをそっと仕舞った。
「冗談じゃない。これは、夜桜のだからいらねーよ」
幸いなことに露世は、有栖川総理に従う様子はない。
もしかして、露世に気を付けろとレイフォトが示したのは、このことか。
しかし、露世には善良な心があった。
突き詰めるに、本当に注意すべきは有栖川総理ということか。
「ん? 二枚のレイフォトが……」
四枚のうちの二枚が、有栖川総理の顔になった。
「ホントだね。有栖川総理の顔になったね」
鑑も興味津々だ。
無表情の有栖川総理のレイフォトだ。これは、フォトリベする価値がある!
「フォトリベしてみるのだ」
『①。この有栖川黒烏は。イレイス!』
『②。ニセモノのシャドウ。イレイス!』
「えっ!? ニセモノのシャドウ!?」
途端に、有栖川総理の口が裂けて、目が血走ってギョロ目になった。
爪が伸びて、肩から邪悪な角が数本伸びた。コウモリのような黒い翼がバサッと背中に生える。
「クククク……。その通り!」
有栖川総理のシャドウは長い爪をこちらに示した。
「その大魔王の秘宝の鍵を我輩によこしてもらうぞ!」
「えっ!? 大魔王の秘宝の鍵!?」
「こいつ! 自由自在に姿を変えれるのか!」
「そう、我輩のシャドウの属性はドッペルゲンガーだからな!」
もはや、悪魔にしか見えないそのシャドウ。
それは、こちらに向かって突進してきた。
我輩と露世の間を走ってきた。必然的に、我輩と露世は離れ離れになった。
「クソ! 月野原ァ! 俺を撮れェ!」
「分かったのだ!」
我輩は、ピンクの魔法のカメラを構えた。
「させるか!」
「きゃあ!」
そのドッペルゲンガーのシャドウは、我輩の手を捕まえて羽交い絞めにして、空に飛びあがった。羽をはばたかせて、空に滞空している。
「月野原写影子を助けたければ、その鍵を渡せ」
あっという間に、窮地に陥ってしまった。
川のせせらぎの音がのどかにしている。
しかし、この騒々しさに、海鳥が空に散り散りに逃げて行った。




