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フォトリベレーション~一寸のシャドウにも五分の魂~  作者: 幻想桃瑠
◆+◆第一章◆+◆大嫌いだったフォトリベがドツボにハマるかで章◆+◆
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第五話 写影子、能力に目覚める

 鑑に最新型の魔法のカメラを貰った我輩は、ストラップを付けて首から提げた。

 フォトグラン学院の高等部ではフォトリベ科がある為か、魔法のカメラの持参は禁止されてない。フォトリベが流行っているので、殆どの生徒が一様に首から提げているのが当たり前になっている。生徒たちはアクセサリーのように生徒たちは首からぶら下げて、授業や学校の帰りなどで自分のシャドウでフォトファイトしてレベルアップを図っているようだった。


「月野原、自分のシャドウはもう撮った?」


 露世は、興味津々に我輩に尋ねてきた。どうやら、あれからの我輩の動向が気になるらしい。


「うん、いっぱい撮ったのだ! でも、フォトリベはしてないけど……」


 我輩はそっと露世から目をそらした。自分の写真は見たいが、自分のシャドウは見るのが抵抗があるのだ。

 我輩は、教室の窓を開けて、そよ風に当たる。風で流れる髪を耳にかけ、そのままグラウンドに目を馳せた。


「うん? あ、あれ?」

「どうした?」


 我輩は目をこすった。だが、景色は何一つ変化しない。


「露世、なにか外で光っているよ」

「ハァ? 光ってる?」

「う、うん。赤い光とか、青い光とかが、ポツポツと」


 昼間なので今まで気づかなかったが、注視すると光がキラキラしている。

 しかも、その正体不明の光は、微動だにしないモノや・盛んに動いているモノ・大きなモノ・小さなモノ、まである。

 それが、色とりどりに輝いているのだ。


「うーん、別に見えないけどな」

「ええっ? 我輩には、しっかりと見えるのに?」

「熱が出て目がおかしくなったんじゃないのか?」


 我輩は目をこすった。でも、正体不明の光は見えたままだ。


「我輩の目はどうしてしまったんだ?」


 鑑に貰った魔法のカメラが特別な魔法のカメラなのか?

 しかし、そうではなかった。

 鑑の魔法のカメラを与えるという行為が、我輩を完全にフォトリベの世界にいざなった。鑑の行為が我輩の能力のスイッチを押したのだ。


 放課後、クラスメイトが残っている教室で我輩は騒いでいた。

 しかし、我輩はこの事で騒ぎ過ぎていたことを後で知った。

 我輩の知らないところで、何者かが活動を始めていた。連絡が隅々に行きわたる。


「目覚めました」と、ある者は静かに言った。

「あの子が目覚めました」と、ある者は、嬉々としていた。

「月野原が」と、ある者は小声で連絡している。

「はい、月野原写影子です」と、ある者は――。


 我輩を傍らから見ていた夜桜鑑は鞄を提げて、椅子から立ち上がった。


「鑑、帰るのだ?」


 我輩は、鑑の後姿に声をかけた。

 魔法のカメラのお礼を口に出そうとしたとき、鑑が振り返った。

 鑑は、嬉しそうな顔をしていた。しかし、腹に一物あるような奇妙な色が混じっている。


「写影子、君は、僕のものだ。もう、逃がさないよ」

「え゛?」


 我輩は、鑑のヤンデレな発言に、すっかり固まった。

 絡みつくような目で微笑み、鑑はそのまま静かに帰って行った。

 教室内が水を打ったように静まり返る。

 同情の目でクラスメイト達に見られている我輩。露世もそんな目を我輩に向けていた。


「なんか、変なのに目を付けられたな、お前」

「う、うん」


 そうして、我輩たちも学校を後にした。

 我輩は病み上がりなので、露世に送ってもらった。我輩の家まで送ってくれた露世に門の所で振り返る。


「送ってくれてありがとうなのだ」

「今日は、早く寝て風邪を完全に治せよ?」

「うん」

「じゃあな」

「じゃあね、露世~」


 我輩と露世は手を振って別れた。

 露世の後姿が遠のいていく。

 この日、露世を見送った後、彼の身に何が起きていたのかを我輩は知る由もなかった。

 我輩は、暢気に露世の事を想いながら、早くに就寝したのだ。


 翌日も、我輩の世界ではネオンのような正体不明の光が煌めく。人魂のようなそれを、我輩は心霊現象と考えた。しかし、日中夜それはさも当たり前のごとく、色とりどりに発光している。

 本当にこれは幽霊なのだろうか?

 登校途中のことだ。空気中を漂っている紫の人魂を、我輩は恐る恐る人差し指で突っついた。


「あ、アレ?」


 しかし、熱感も冷感もなく空気そのものだ。

 それを掴もうとしても、虚しくすり抜ける。まるで幽霊のように実体がない。

 この奇妙な物体をどう説明すればいいか困り果てた我輩は、両親に相談してみた。


「何か拾い食いしたんじゃないの」と、母の羽子。

「ハハハ、くれぐれも拾い食いはするな」と、父のうつしに関しては、笑っていた。


「拾い食いなんてしたことないよッ!」と、一応ツッコんでおいた。

 悔しいことに誰も、親身になって取り合ってくれなかった。ギャグだと思っているに違いない。

 でも、実物を見せれば家族も露世も納得するに違いない。


「そ、そうだ」


 我輩は、首から提げているピンクの魔法のカメラを手に取った。

 とどのつまり、証拠を――写真を撮れば、信用に結び付くという算段だ。

 我輩は、ファインダーを覗いた。

 その紫の人魂を魔法のカメラのフレームに入るようにする。そして、シャッターを押した。

 フラッシュが焚かれ、魔法のカメラが機械音をたてる。

 しばらくすると、魔法のカメラから特殊用紙が出てきた。

 しかし、初撮りの特殊写真に我輩はガッカリした。

 何も現像されなかったからだ。いや、現像されなかったのではない。

 黒いインクで塗り潰したように、特殊写真は真っ黒だったのだ。

 今は朝だ。逆光でもないし、夜でもない。

 ちゃんと撮れてもいいはずだ。


「まさか、失敗とは」


 失敗の特殊写真を丸めて捨てようとしたが躊躇した。


「でも、露世に見せれば笑い話にでもなるか」


 我輩は、真っ黒な特殊写真をブレザーの胸ポケットに入れた。

 のちに、我輩はその判断が正解だったことを知ることになる。

 我輩は自分の身に何が起きているのかも知る由もなく、被写体を探しながら登校した。

 しかし、無収穫だった。

 遠くに正体不明の光の被写体候補が無数にあったので、撮影しようとした。

 しかし、今度は魔法のカメラのシャッターが押せない。何度試みてもダメだった。

 この魔法のカメラは不良品なのだろうか。もしくは――。


「もしかして、あんなものを撮ったから壊れたのか?」


 せっかく貰った魔法のカメラを壊したら、鑑にたんまり嫌味を聞かされることだろう。

 やはり、我輩の世界が心霊じみたのか?

 首をひねりながら、魔法のカメラを調整しながら教室のドアをくぐる。


「おはよー」


 しかし、今日に限っていつもの声が返って来ない。


「あ、あれ? 露世は?」

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