第一話 詩口写実、恐るべし!?
花火大会かと思うほどのけたたましい音がして、我輩はベッドから落ちた。我輩は背中を打ち付けて、否が応でも目覚めた。
「朝っぱらからうるさいのだ……」
我輩のいるにこつく市は田舎なので朝も静かなのだ。それなのに、今日はどうしたことだろうか。
「だれかが、フォトファイトしているのか?」
気になったので、我輩は窓を開けて顔を出した。すると、西の空が煙でたなびいている。朝の新鮮な空気にきな臭いにおいが混じった気がした。
「アレ? あっちって、鑑の屋敷のほうじゃないのか?」
何が起きているのか、妙に気になる。気になるけど、そこまで見に行ったら、遅刻してしまう。
家の前の道路には、ピンクの光のポイントが散見していた。昨日までにはなかった光のポイントだ。
そうだ。ピンクの光のポイントは鑑のことを示しているはずだから、これを撮ってフォトリベしたら、何かわかるかもしれない。
早速身支度を整える。ミディアムヘアの髪をとかして、制服に着替える。昨日、連辞が買ってきてくれたご飯を食べて、出かけようとした。
「あ、大魔王の秘宝のレイフォト!」
我輩は、それを忘れるところだった。あわてて、それをポケットに突っ込んで出かけた。
目を皿にして、鑑の光のポイントを集めていく。
路傍の石の影にひとつ。①~⑦と書かれてある。鑑の無表情の顔が映っている。これは③のレイフォトだ。
コンクリート塀の上にひとつ。これは①のレイフォトだ。
人家の庭の木にひとつ。これは⑥のレイフォトだ。
用水路の中にひとつ。これは④のレイフォトだ。
道路をふわふわと移動しているものがふたつ。これは⑤と⑦のレイフォトだ。
「①③④⑤⑥⑦……あと、②が足りないなぁ……」
②のレイフォトを探していたが、どこにもない。
「うーん、ないのだ……」
「あら、写影子さん?」
我輩はびっくりして飛び上がった。いきなり声を掛けられたことにも驚いたのだが、声をかけた少女の正体を知ってなお驚いた。
「詩口写実!?」
「こんにちは、写影子さん。詩口さんか写実さんってよんでくれないかしら?」
詩口写実はあくまで友好的だ。彼女は一体何を考えているのだろう。
「……じゃあ、詩口さん。なんで、我輩にあんなひどいレイフォトを渡したりしたのだ!? それだけじゃない! 露世になんで嘘を教えたり、来栖野君にあんな命令したり……!」
「ごめんなさい、写影子さん! 私、あなたが大嫌いなの!」
詩口写実は嬉しそうに力説した。
「え゛?」
「そう」
大嫌いだから、我輩と露世を……。
気が付くと、十歩くらい後ろに後ずさっていた。
「あ、写影子さん、ピンクの光のポイント集めていたでしょ?」
「そ、それが何か?」
「②のレイフォトはいらないかな?」
「えっ、それ、どこにあったの?」
「②の光のポイントは壊したわ! ②のレイフォトがほしいかしら?」
詩口写実の手には②のレイフォトを持っているようだが。我輩は涙を呑んであきらめた。
「い、いらないのだ……!」
恐怖のあまり、我輩は遅刻するからと取り繕いながらダッシュで逃げた。
我輩は、金輪際、詩口写実にはかかわらないようにしようと心に決めたのだった。




