第十七話 四章完結 返還
後で聞いた話だ。ロゼは、西条とシャドウを追いつめていた。路地の突き当り、西条のシャドウは空に舞い上がる。風の精霊そのままに、台風のような突風でロゼを迎え撃つ。しかし、ロゼはその攻撃もものともせず、大剣を振りかぶって、シャドウを一刀両断にした。
「西条、レイフォトを返してもらおうか」
しかし、西条はニヤリと笑った。
「気づいてないのか。俺もシャドウなんだよ! イレイス!」
西条はイレイスされて空気に溶けた。
そのまま、逃げおおせたと思われた執事の西条は、真っ暗な住宅街を走っていた。
「これで、これで! 大魔王の秘宝は我輩のものだ! ひ、ヒヒヒヒヒ!」
その真っ暗な路地の後ろから誰かがとんでもない速度で駆けて来る。
「チィイ! ロゼか!?」
「違う。俺は、写影彦。鍵は返してもらうよ」
「ぎゃあ!」
西条はロゼを想像したようだった。しかし、その影はとんでもない力で西条を昏倒させると、頭を掻いてぼやいた。
「この鍵は、写影子のものなのに、狙うやつが多いなぁ……」
写影彦と名乗った影は、手をポンとたたいた。
「あ、そうだ! 一旦、偽物とすり替えておこう!」
そうして、写影彦は意気揚々と、昏倒させた執事の西条を軽々と引きずりながら、闇夜に消えたのだった。そうして、執事の西条は四ツ葉に突き出された。我輩は、その旨を連辞から説明された。
数日後の朝。我輩はいつものように起床して、庭にある郵便受けをチェックしに行く。
「ん? あ、アレ? これは、大魔王の秘宝のレイフォト……?」
何故か、我輩のもとに大魔王の秘宝のレイフォトが戻ってきたのである。
「お父さんが取り戻してくれたのかな。だとしたら、父は何者なのだ……?」
この時の我輩は、ヒーローのような父の武勇伝を想像して、ひとりニヤけていた。
しかし、父は写だ。写影彦ではない。
彼はいったい何者なのか。
これが、新たなる騒動の幕開けだとはつゆも知らず、今は平穏な時が流れるのであった。




