第十三話 レイフォトの警告と鑑からの招待
「どうした? 難しい顔をして?」
露世がトイレから帰ってくるなり、我輩の顔を覗き込んでそういった。
露世の顔と我輩の顔が近いのだが。
我輩は椅子にもたれて避けながら、鑑のほうを一瞥した。鑑は素知らぬ顔で本を読んでいる。そして、視線を露世に戻した。
「……いや、鑑に夜に家に来ないかって誘われたんだけど」
「あの野郎……まさか、行く気じゃないだろうな?」
露世が引きつりながら我輩を見下ろしている。
我輩は首を横に振った。
「行くわけないのだ」
「なら、いいけど」
露世は、椅子に座りながら鑑のほうを眺めている。鑑がそれに気づいて、挑発的にくすっと笑った。それに、気づいて露世は青筋を立てている。
「ろ、露世?」
我輩はさりげなくそれを止めた。露世が気付いて、こちらを振り返った。
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自宅に帰ってくるなり、ポケットの中を整理しようと取り出した。その中に見慣れないレイフォトが入っていた。たしか、これは、真っ黒だったレイフォトだ。
「アレ? 真っ黒なレイフォトが鑑のレイフォトになっているのだ」
それは、鑑のレイフォトに変化していた。一枚のレイフォトだから、続きがあるのかもしれないが……。
「フォトリベしてみるのだ」
それは、もくもくとムースの泡のようになり、だんだんと鑑の姿を模していった。感情のないシャドウだ。だから、このシャドウの言い示すことには信ぴょう性があるに違いない。
『夜桜鑑に気を付けろ。イレイス!』
そう言い残すが早いか、それは消滅した。
警告のレイフォトだった。真実を告げるのがレイフォトだ。このレイフォトは、その真実を知った上での警告なのだろう。だから、気を付けておくに越したことはないのだ。
「よし、鑑には気を付けるのだ!」
鑑の家には行かないから大丈夫と、とりあえずは考えていた。しかし、その警告を裏付けるように、我輩のスマホが鳴った。
「な、ななな」
それは、鑑からの着信だった。大慌てで、スマホを落としそうになった。キャッチするとスマホを通話にして右耳に押し当てる。
「も、もしもし?」
『今日、今から僕の屋敷に遊びに来ない?』
朗らかな鑑の声だった。やっぱり、鑑は何か企んでいるのではないか。我輩の心の中で警告音が鳴り響く。
「と、とりあえず、やめとくのだ」
羊を食べるオオカミを想像してしまう。鑑は我輩の考えていることを見透かしたように電話の向こうで笑った。
『何もしないよ。僕の屋敷に光のポイントがあるか、見てもらいたいだけなんだ』
「光のポイントが?」
我輩は、瞬きした。鑑の家に光のポイントがあるなんて考えてもみなかった。
どこにでもある、光のポイントなのだから、鑑の家にあってもおかしくない。
『夜会に誘ったのもそれが目的なんだけど、写影子が参加したくないっていうから、屋敷の中を見てもらうだけでもいいかと思って』
この時の我輩は、鑑が何故夜に我輩を誘ったのか、考えてもみなかった。
「実はね、鑑の家に大魔王の秘宝があるらしいの!」
『……へえ、それは面白いね』
馬鹿正直に秘宝があることまで鑑に話してしまった。
鑑に我輩の話を肯定してもらったことで、気分が高揚していた。
鑑の家に秘宝があるなら、鑑と山分けでもいいかもしれない。
「じゃあ、行くよ。鑑の家は分からないから、迎えに来てね」
『今から、迎えに行くから。家の外で待っていて』
我輩は、トレジャーハンターの気分で、それ風の服に着替える。そして、壁の時計で時間をチェックすると、家の外で鑑の迎えを待った。




