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フォトリベレーション~一寸のシャドウにも五分の魂~  作者: 幻想桃瑠
◆+◆第一章◆+◆大嫌いだったフォトリベがドツボにハマるかで章◆+◆
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第四話 災い転じて福となす

 翌日、我輩は風邪で学校を休んだ。

 でも、午後にはすっかり熱が引いて元気になっていた。

 だから、外から「月野原ァ」と露世の呼ぶ声が聞こえたときには、我輩は笑顔で二階の窓から顔を出していた。


「おお、露世と夜桜君~」


 ちょっとかすれた声なのは、ご愛敬だ。


「ちょっといいかな?」

「うん」


 それは、露世とこの間転校してきた夜桜鑑よざくら かがみだった。ブラストヘアの茶髪に茶色の賢そうな目をした、クラスメイトの男子だ。上品でいつもアイロンをピシッとあてた制服を着ている。

 夜桜君が手招きするので、我輩は玄関まで下りて行った。


「月野原、大丈夫か?」

「うん、もう大丈夫」


 露世と微笑みあっていると、横から夜桜君が笑顔で割り込んできた。


「写影子、久しぶり」

「しゃ、写影子……?」


 いきなり夜桜君に名前で呼ばれて、我輩はびっくりした。

 夜桜君はさらりと自分の前髪を優雅に撫で上げた。


「僕は、写影子のことをしっかり調べ上げているからね。だから、写影子も鑑って呼んで?」

「え、ええっ?」

「はい、これ」


 いきなりの告白に戸惑っていると、鑑が紙袋を押し付けてきた。

 家電量販店の紙袋だった。

 なんだ、これ?

 我輩は、目をぱちくりした。


「これ、僕からのお見舞いなんだけど」

「えっ? お見舞い?」


 我輩は、また瞬きする。

 鑑は、我輩に小箱を手渡した。


「僕が、写影子の一番欲しいものをリサーチして手に入れたんだ」

「えっ? 我輩の欲しいもの?」


 風邪のお見舞いで大げさだと思ったが、プレゼントはいつの世も嬉しいものだ。

 我輩は胸を躍らせて、小箱の包みを開ける。

 姿を現したのは、ピンク色の魔法のカメラだ。

 最新型なのか、薄くて軽い。

 露世が身を乗り出して、目を輝かせた。


「こ、これは、季節限定で百台限りの限定版の魔法のカメラじゃないかッ!」


 我輩より露世の方が欲しそうだ。

 えっと……。


「何で我輩がこれを欲しいと?」

「写影子が、ねごとで言っていたんだ」

「ホントかよッ! どこで調べてくるんだその情報!」


 我輩の問いも、鑑の百万ボルトの微笑みで誤魔化された。

 しかし、我輩は嬉しかった。物で釣られたともいう。


 実は、鑑が我輩の寝言だと言ったのは嘘だった。

 鑑は、我輩に特殊写真を撮らせたいのだ。だから、我輩に魔法のカメラを手渡したのだ。勿論、これは普通の何の変哲もない魔法のカメラだ。鑑の目的は別にあった。


「ええと、うん。ありがたくもらっておくよ」

「喜んでもらえて幸いだね」


 しかし、この時の我輩はそれに気付いてない。

 まさに、鑑の思うつぼだったのだ。


 鑑は露世を振り返り微笑んだ。

 露世のこめかみに青筋が立っているような。そんなことはさておき。

 今日、我輩はこの瞬間をもって、魔法のカメラデビューした。

 しかし、この後で我輩の身に奇妙なことが起こったのだ。

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