表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フォトリベレーション~一寸のシャドウにも五分の魂~  作者: 幻想桃瑠
◆+◆第四章◆+◆フォトリベして四角関係!? 陰謀が渦巻くのかで章◆+◆
46/86

第六話 露世の言い分

 例によって、我輩たちは部活動のように自習室に放課後集まった。いや、集まろうとしていた。しかし、今日は連辞は休みだった。どうやら、四ツ葉の捜査が忙しいらしい。今のところ何も起きていないので、連辞は学校を休んだようだ。

 我輩は、実習室Cで、鑑と喋っていた。昨日、意味深な言動をした鑑だったが、今日は不審な様子もなく至って普通だった。


「あのね、写影子?」

「ん? 何なのだ?」


 鑑はカバンから、封筒を取り出した。


「今度、僕の屋敷で夜会が開かれるから、遊びに来ないかなと思って。これ、招待状」


 鑑は招待状の入った白い封筒を手渡してきた。

 手渡す鑑は本当に嬉しそうだ。親しみをもって我輩を招待してくれたのだろう。しかし、我輩は夜会という社交界の場に恐れをなした。


「えっ? や、夜会!」


 我輩は、衝撃を受けて固まった。夜会ってどんな金持ちだよ。

 我輩が行ったら、場違い丸出しだ。しかも、着ていく服なんて持ってないし!


「いや、せっかくだけど、止めておくよ」

「そう……」


 鑑は明らかにがっかりしている。

 気まずい空気に成り下がってしまった。その時、空気を換えるように、露世が入ってきた。しかし、彼とも喧嘩したばかりだった。


「あ、あのね、露世」

「月野原、あのさ……」

「う、うん!」


 もしかして、謝ってくれるのかな!

 我輩はすぐに許す心構えで、露世の目を見つめた。


「悪い、月野原!」


 露世は我輩の目の前で手を合わせた。

 うん、良いよ!

 我輩もすぐに許すつもりだった。喧嘩したのだって些細なことだった。しかし、露世は思ってもみないことを口に出した。


「何も聞かずに、こいつと一日デートしてくれないか?」


 我輩は、あきれて声が出なかった。声が出たら、「ハァ!?」と思いっきり尋ね返していたに違いない。


「だ、だれと我輩がデートだって……?」


 露世の横には、初対面の少年が「俺とだよ~」と手を上げていた。


「な、なんで我輩がこの人と」

「俺、来栖野律雅くるすのりつがっていうの。よろしく~」

「なんで、来栖野君と我輩がデートしなくちゃならんのだ!」


 露世は「それは……」と、言葉を濁した。


「酷いよ、露世!」


 我輩は再び泣きそうになった。露世は、から笑いした。


「さあ、月野原ちゃん、行こうか~」


 どこまでも軽い来栖野君に露世はついにブチ切れた。

 露世は、開眼した。そして、来栖野君の襟首をひっつかんで壁にたたきつけた。


「ぐえッ! な、何するんだ、一文字!」

「いいかァ、月野原に手出ししたら命はないと思えッ!」


 露世が、来栖野君の襟首をギュウッと締め付けた。


「わ、分かったって!」


 我輩と鑑はその様子を半眼で見ていた。ふーん。露世も、我輩と来栖野君がデートするのは不本意なようなのだ。察するに、脅されたか弱みを握られたかってところか。


 鑑も冷めた様子でそれを見ている。


「じゃあ、来栖野君。一日だけデートするのだ。行こう!」


 実習室を出て行った、我輩の後を来栖野君がついてきた。

 露世と鑑が追いかけてこなかった。階段のところで、我輩は来栖野君を振り返った。


「月野原ちゃん、じゃあ、フォトギルドにでも遊びに行く?」

「嫌なのだ」

「えっ?」


 来栖野君が、奇妙な顔で固まった。


「露世が、どうして我輩とデートするように言ったの? 脅したの?」

「そんなことするわけないだろ!」


 来栖野君は心外だといわんばかりに憤慨した。


「じゃあ、どうして? 露世は、何もないのにそんなこと言うはずないのだ」

「参ったなぁ……」


 全然なびく様子もない我輩に、来栖野君は頭を掻いて困り果てている。


「分かったよ! 教えてやるよ!」

「ホント!?」

「その代わり、俺と付き合ってね?」

「だから、一日付き合ってあげるのだ」

「ううん。だから俺と交際してね?」

「ええっ! 約束が違うのだ!」


 来栖野君はにんまりと笑った。我輩は思わず身構えた。

 この来栖野律雅という少年。一筋縄ではいかぬようだ。


「俺と付き合ってくれるなら、全部教えてあげるよ」


 露世がそんなことを言ったら、我輩は二つ返事でOKするのに。

 我輩は、返答に困ってしばしの間立ち尽くしたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ