第三話 家の中でみつけた鏡音のレイフォトをフォトリベしよう!
その翌日のことだ。学校に行くためパンを食べていると、キッチンでピンクの光のポイントを一つ見つけた。
「撮っちゃうのだ」
我輩はすぐにレイフォトに収めた。
レイフォトは、鑑の姿で写っていた。
やはり、ピンクの光のポイントは、鑑のレイフォトになるらしい。
「うーん。レイフォトが示しているのは、鑑のことかぁ……。気になるな。二枚撮って、後で見せればいいか!」
我輩は、二枚レイフォトに収めた。
すぐに、鑑のレイフォトになったので、その一枚をフォトリベしてみた。
『①-①。今年の春にフォトグラン学院の高等部一年一組に転校してきた人物はだ~れだ?』
「えーと、夜桜鑑!」
『正解! 消去!』
鑑のシャドウは勝手に消えた。我輩は、タブレットにそれをメモした。
すると、その中からもう一枚のレイフォトが出てきた。
「また、鑑のレイフォトだ」
これは、二枚撮るわけにはいかない。鑑に見せるべきか。
しかし、好奇心の方が我輩の気持ちを先行した。
「まあ、いいか……フォトリベしちゃうのだ」
我輩は再びフォトリベした。
すると、例によって作り物の鑑のシャドウが出来上がった。それは、感情のない声で上半身だけを宙に浮かせて、淡々と喋る。
『分岐の問い。不正解なら①-②へ、正解なら②-①へ進みます』
「ええっ! そんなまどろっこしい!」
『夜桜鑑が命を懸けて守りたいと考えている人物はだ~れだ?』
「ええっ! そんなこと知らないのだ! ええと……」
馬鹿らしいと思ったが、自分で答えるしかないようだ。
「つ、月野原写影子……?」
『不正解! 消去!』
「……」
む、むなしい。月野原写影子よ、うぬぼれるのも大概にするのだ。
シャドウが消えた後、我輩は不正解の①-②のレイフォトを拾い上げた。
「こうなったら、とことん問題に付き合ってやるのだ!」
『①-②。月野原写影子に。消去!』
「メモメモ……」
シャドウが消えた後、また床にレイフォトが落ちていることに気づいた。我輩は拾い上げて、再びフォトリベした。
『①-③。秘密を持つことを何という?』
「秘密を持つこと? か、隠し事をする……?」
『正解! 消去!』
「やった~、メモメモ~!」
良い調子で回答できたので、我輩は上機嫌になった。
再び、鑑のレイフォトが落ちていることに気づいた。
例によって、我輩はフォトリベした。
『①-④。ingとは?』
「ええと。現在進行形? ~をしている?」
『正解! 消去!』
再度、床を見下ろしたが、レイフォトは落ちていなかった。
これで最後のようだ。我輩は、タブレットとにらめっこした。
『①夜桜鑑は』『②月野原写影子に』『③隠し事をする』『④~をしている』だから、『夜桜鑑は月野原写影子に隠し事をしている』か……」
おのずと眉をしかめた。隠し事なんて誰でもしているじゃないか。それに、我輩は鑑の彼氏でも兄弟でもないので、彼が何を隠そうがとやかく言える立場ではない。これを知った我輩に、何か得分でもあるのだろうか。
「考えてもしょうがないのだ。学校に行くか」
カバンを持って立ち上がった。
「アレ……? まだ消えてないのだ」
まだ、妖精のように漂っているピンクの光のポイント。
「ううん……」
横目でそれを見る。まだ消えてないピンクの光のポイントか――。
「待てよ。分岐の問いに正解すれば、②-①が聴けるんだよね」
我輩は、フォトリベして鑑のシャドウを作った。問い①-①を答える。
『分岐の問い。不正解なら①-②へ、正解なら②-①へ進みます』
「よし来た!」
『夜桜鑑が命を懸けて守りたいと考えている人物はだ~れだ?』
「ええと、お、弟!」
『不正解! 消去!』
「ええ~っ! また、最初からぁ~? はぁ……やろう!」
これを繰り返すこと数十回。
いい加減うんざりしてきたころ、我輩の答えはようやっと核心を突いた。
『正解! 消去!』
「よっしゃあ! やったのだ!」
また、床にレイフォトが一枚落ちていた。どうやら、このレイフォトは、先ほどフォトリベしたときにできたようだ。
「真っ黒なレイフォトなのだ……。ハッ!? いかん! 完璧に遅刻なのだ!」
やっと正解した時には、一時間目をすっかり過ぎていた。
右往左往を極めると、玄関に鍵をかける。郵便受けをチェックしたが、今日は父からの手紙は来ていなかった。




