第二話 一文字露世と詩口写実
『露世、あのね! 父から手紙が来て、詩口写実に気を付けるように警告が!』
露世に後で聞いた話だ。
我輩の電話口で慌てているのが他ごとのように感じたという。
露世の額から汗がしたたり落ちる。露世は、努めて冷静な声を出した。
「分かった。気を付けるよ。みんなで気を付ければ大丈夫だから」
『うん、ありがとう』
我輩は、ホッとして電話を切った。
スマホを切った露世は、彼女と向き合った。
夜のコンビニの薄暗い中。道路際のその駐車場に露世はいた。
エンジン音と車から漏れる音楽が遠くに聞こえ、一種の孤独な空間を作り出している。
一つのエンジン音が通り過ぎ去ったあと、露世はスマホをズボンのポケットにしまった。
露世は目の前のロングヘアの赤いプラスチックの眼鏡をかけた女を斜に見る。
露世をこの場所に呼び出した少女、詩口写実だ。
「俺に何か用かな? えーと、詩口写実さんか?」
正確には、露世は呼び出されたようだ。
面識も何もない露世と詩口写実は、一定の距離を保って突っ立っていた。
「これ、あげるわ」
詩口写実が二枚の特殊写真を露世に差し出した。
「えっ? これは、レイフォト?」
「集めているんでしょ?」
しかし、我輩に警告を受けていた露世は手でそれを制止した。
「結構だ。用がそれだけなら、俺は帰る」
笑い声がして、露世は不審に思い振り返った。
すると、我輩のシャドウが出来上がっていた。レイフォト特有の作り物じみたシャドウだ。
『①、月野原写影子は、消去!』
『②、――――――――。消去!』
笑い声がこだまする。
それを聞いた露世は頭が真っ白になっていた。
「な、なんだって!? 月野原が?」
詩口写実は相変わらず笑っている。
「月野原さんって、探偵の能力持っているんでしょ?」
「なんでそれを……!」
「もしかしたら、この光のポイントを見つけちゃうかも?」
「……どうすれば良い?」
詩口写実は、口元を吊り上げた。
最初からこれが狙いだったといわんばかりに。




