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フォトリベレーション~一寸のシャドウにも五分の魂~  作者: 幻想桃瑠
◆+◆第三章◆+◆因縁のライバル出現!? フォトリベのシャドウで悩むので章◆+◆
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第十一話 ロングヘアの女子のレイフォトは何を示しているのか?~回答編~

 連辞は仕事が休みなので呼ばなかったわけだが、呼ぶと快く承諾してくれた。

 連辞は覆面パトカーですぐに現れた。大人バージョンの連辞だ。タバコをガンガンにふかしている。


「行くぞ、写影子ちゃんと野郎ども!」

「おおお!」


 我輩たちは連辞の覆面パトカーに乗り込んで、ファミリーレストランに向かった。夏めいて来たので、冷房を利かしている。だから、車内は涼しい。


「そういえば、我輩の両親も開店したファミレスで食事するって言ってたのだ。たぶん詩口写実と一緒の『シャトーベル』にいると思う」

「へぇ、仲がいいんだね。写影子ちゃんのご両親って」

「うん、うちの家族は仲がいいのだ」

「……へぇ、良いね。普通の家族って」

「……ほんとになァ」


 浮かれて話していたが、後部座席の露世と鑑のテンションが低いことに気が付いた。

 家族の話はよくなかったのだろうか。

 話の途中で、無線が入った。


『詩口写実を保護しました!』

「了解!」


 道路の脇に駐車して、我輩たちは覆面パトカーから降りた。道路の中央に集まるようにしてパトカーがパトランプを光らせながら数台停まっていた。

 四ツ葉の大人たちに囲まれて、女の子が後ろ姿を向けていた。


「二階堂さん、詩口写実を保護しました!」

「よくやった!」


 詩口写実は、こちらに気づかずに四ツ葉たちの質問に答えている最中だ。

 四ツ葉の大人たちが捌けて、詩口写実の後ろ姿があらわになった。


「えっ……?」


 詩口写実の髪型はロングのストレートヘアだった。


 えっ……?

 我輩は自分に起きている異変に気付いた。ロングのストレートヘア。そのキーワードがやけに頭に引っかかる。


 その時、詩口写実が振り返った。


「ッ!?」


 我輩の心臓がドクンと上下した。我輩の眼が瞠目の限りを尽くしている。


「月野原……!?」

「なんで、写影子が!?」


 そこにいたのは、確かに詩口写実だ。

 ロングのストレートヘアの詩口写実だ。

 しかし、奇妙なことに我輩と詩口写実の顔は我輩と瓜二つだったのだ。

 我輩はドッペルゲンガーを見た時のように、腰を抜かした。


 つまり、あのロングヘアの我輩のレイフォトは、詩口写実の姿を模したものだったのだ。未来を言い当てているわけでも、我輩の未来の姿でも何でもなかった。

 あれは、我輩と瓜二つの詩口写実のことを表していたのだ。


「写影子とは名字が違うから他人の空似、だよね?」


 鑑が戸惑ったように詩口写実を見ていたが、傍でへたり込んで後ずさりしている我輩にもっと驚いていた。


「しゃ、写影子?」

「あ……あ……!」


 我輩は震えていた。

 夏の日差しが届く人ごみの中、我輩は寒気を感じていた。


「月野原、大丈夫か!」


 我輩がおびえているのが、露世に奇妙に映っていたらしい。

 詩口写実が赤いプラスチックのふちの眼鏡をかけた。そして、こちらに歩いてくる。


「月野原 写影子さん?」

「ッ!?」


 なんで、我輩の名前を知っているのだろう!

 詩口写実は勝ち誇ったように笑った。自信がある彼女の眼力が我輩の表情を硬くする。


「これ、あげるわ。集めてるんでしょ?」


 それは、真っ黒なレイフォトだった。

 我輩はそれを受け取って、石化したように動けなくなった。


 我輩の消えかかっていたトラウマに火が付いたように燃え盛る。

 燃え盛って、我輩の存在を消してしまう。


「火事だ! ファミレスの『シャトーベル』が、火事だぞ!」


 振り返ると、辺りは騒然となっていた。

 燃え盛――えっ?


『写影子、行ってくるわね?』

『帰りは遅くなるかもしれないから』

『楽しんできてね』


 今は昼時だ。だとしたら、シャトーベルの中には、我輩の両親が……!

 考えるより早く、我輩は立ち上がっていた。不思議なことに抜けた腰は元通りになっていた。一心不乱に、駆けていく。


「写影子?」

「月野原! 月野原ァ!」


 露世と鑑の声が背後で聞こえる。我輩は逃げる客の流れに逆らうように炎の中に入っていった。

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