第十話 ロングヘア女子のレイフォトは何を示しているのか?~問題編~
日曜日になった。日曜日は父と母がデートに出かける日だった。
めかし込んだ両親は、朝から出かけて行った。
「写影子、行ってくるわね?」
「帰りは遅くなるかもしれないから」
「楽しんできてね」
その時は、仲が良いなぁとしか特に思わなかった。
両親は楽しそうに話しながら、白い軽自動車に乗り込んで出かけて行った。
我輩は我輩で日曜日も光のポイントを探して、近所中をうろついていた。
赤い光のポイントを見つけたのは、正午に差し掛かったころだった。
「よしっと!」
光のポイントを魔法のカメラに収めて、我輩はレイフォトが出てくるのを待った。
機械音がして、現像されたレイフォトが出てきた。レイフォトを正面に向ける。
「えっ!?」
我輩は目を疑った。それは確かに、人形じみた顔の写っているレイフォトだったが、そこに写っているのは、他の誰でもない我輩の顔だった。
しかし、我輩の髪型はミディアムボブだ。
ここに写っている我輩の髪型はロングのストレートヘアだ。
「どういうことだ?」
一人でフォトリベして確かめてもいいが、証人が欲しかった。
我輩はすぐに、露世と鑑に連絡して呼んだ。連辞は仕事がせっかくの休みなので、そっとしておくことにした。
「えっ? ロングの写影子のレイフォト?」
鑑が怪訝そうな顔になった。
「うーん。もしかして、月野原の将来を指しているのかなァ?」
露世の予想は我輩は眉唾物だと思った。
「ええっ? 未来のことまでフォトリベで分かるのか?」
ありえないとは思うが……。
「一応、フォトリベしてみて?」
我輩はすぐに、あっさりとフォトリベした。
すると、思念が綿のように集まり、作り物の人形のようにロングヘアの我輩の姿になった。
いつも通り、上半身だけがフォログラムのように浮いていて、作り物の眼をしていた。
その我輩を模したシャドウは無感情で喋った。
『問い①~⑦から出てきたレイフォトを、『△』『◇』『☆』の順番でフォトリベするべし! 消去!』
用が済んだら、我輩のシャドウは勝手に消えた。
「メモしたぜェ!」
と、露世がタブレットを持ち上げた。
「ありがとう、一文字。これって、もしかして、あのレイフォトから出てきた奴だよね?」
「我輩、ちゃんと持っているのだ!」
我輩はポケットから取り出して驚いた。
「アッ、あの真っ黒のレイフォトが『◇』の記号のレイフォトになっているのだ」
「じゃあ、そろったわけだね」と、鑑がほほ笑んでいる。
「月野原。『△』『◇』『☆』と順番にフォトリベしてみろよォ?」
意気込んで我輩は頷いた。
「じゃあ、フォトリベしてみるのだ」
我輩は勢いよくフォトリベした。
思念がわだかまり、ロングヘアの我輩のシャドウになった。上半身だけの人形のようなシャドウだ。やはり、我輩のことを示しているのか。
『詩口写実は、消去!』
「ええっ!? なんで、我輩のシャドウなのに、詩口写実のことなのだ!?」
「確かに……。たしか、レイフォトのシャドウはその姿を模した人物のことを言い表しているんだよなァ?」
訳が分からない。
これが真実だというのだから、こちらも参ってくる。
「写影子、次をフォトリベしてみて? 何かわかるかもしれないから」
「う、うん」
鑑に促されて、我輩は『◇』をフォトリベした。
『フォトグラン学院の東の。消去!』
シャドウは用が済んだので例によって消えた。
「フォトグラン学院の東……?」
「なんだろう?」
「分からないから最後の『☆』をフォトリベしてみるね」
我輩は張り切って、『☆』をフォトリベした。
『開店したファミリーレストラン『シャトーベル』にいる。消去!』
シャドウが消えた後、我輩は大声を上げた。
「ちょっと待ってくれ! 一文字!」
「ああ!『詩口写実は』『フォトグラン学院の東の』『開店したファミリーレストラン『シャトーベル』にいる』だってよォ!」
なんだ。我輩のことじゃないのだ。
我輩は肩透かしを食らったような気分だったが、同時に安堵もした。
「ということは、詩口写実は無事ってことなのかなぁ?」
行方不明の詩口写実が発見されたのだからめでたいことだが――。
「いや、犯人が一緒かもしれない!」
「それもあるね!」
「こうなったら」
我輩たちは口をそろえた。
「連辞を呼ぼう!」




