第九話 彼がデッドキスではない理由~回答編~
鑑がびっくりしている。
「写影子、分かったってどういうこと?」
露世も首をかしげている。
「小使井網羅がデッドキスではない理由か?」
「写影子ちゃん、説明してくれないかな?」
連辞の言葉に我輩は頷いた。
「つまりね! 出席番号二十五番の詩口写実は、転校してきたってことでしょ? すると、転校してくる前は、出席番号の二十五番は他にいたってことでしょ?」
露世がハッと我に返って、納得したように手をポンと打つ。
「そ、そうか!」
「何が? 僕にもわかるように説明して?」
鑑は分からなくてイライラしているようだ。
「つまり、小使井網羅は転校してきたってことか?」
しかし、連辞はかぶりを振った。
「違う。小使井網羅は転校してきてないようだ」
「待って? 小使井網羅が転校してきたんじゃないとしたら、他に転校してきた人がいるんじゃないの?」と、鑑。
だが、連辞は首を横に振った。
「いや、転校してきた人はいない」
我輩は、にやりと笑った。
「じゃあ、転校して行った人はいるんじゃないかな?」
連辞が「えっ?」と顔を上げた。
「つまり、小使井網羅の前の列にいる出席番号の人物が、転校して行った。だから、小使井網羅の出席番号が十一番なのが、十番になった。そういうことじゃないかな?」
だから、レイフォトにわずかな誤差が生まれた。稀に情報が古くなることがあるらしいが、このことじゃなかろうか。
連辞が、慌ててスマホで四ツ葉の捜査員に連絡を入れている。
そして、笑顔でスマホを切った。
「写影子ちゃん、当たりだ! でも、転校して行った人物は無実だったが」
鑑がハッとしたように顔を上げた。
「ちょっと待って? レイフォトのシャドウはその人物のことを示すっていうから」
我輩は頷いた。
「そういうことなのだ」
露世も分かったようだ。手をポンとたたいた。
「このシャドウの姿を模している人物がデッドキスってことだな!」
「当たり!」
「つまり、小使井網羅の前の列の、このシャドウの姿を模した人物が犯人か!」
連辞はすぐに写真を照合して、名前を照らし合わせた。
連辞は、さっそく四ツ葉に連絡を入れていた。
「ああ、俺だ。デッドキスは青葉極見だ。即刻取り調べだ!」
そのシャドウの人物はすぐに取り調べされたという。
後日、その人物は複数の犯罪に関わっていた事が分かり、即刻、逮捕されたようだ。
「ちょ、ちょっと待ってくれッ! シャドウの答えを並べてみたんだが、ヤバくないか!?」
「ええ? 何々……?」
鑑が脇から露世のタブレットのメモを読み上げる。
『①。青葉極見は』『②。デッドキス』『③。の、配下で』『④。詩口写実』『⑤。は、誘拐された』!?」
でも、詩口写実も転校してきたから……いや、シャドウが正解したからこの情報は合っているんだった。我輩たちはいっせいに連辞の方を振り返る。
「「「連辞!」」」
連辞は、スマホで四ツ葉に連絡している。人差し指を立てて、黙るようにジェスチャーしている。
「ああ、俺だ! すぐに詩口写実を保護だ!」
「で、でも、まだ、⑥と⑦の光のポイントが見つかっていないのだけど……」
「早めに対処しておいた方がいいよ」
「ことがことだからなァ」
「う、うん。そうだね」
我輩は、鑑と露世の言葉にうなずいた。
しかし、時遅し。詩口写実は忽然と姿を消していた。




