第六話 閑話休題・モテる二人は残念系!
我輩たちは例によって、秘密の部活動のようにこっそりと集まっていた。今日は数ある中の自習室のうちの一つ、自習室Bに集合していた。
いつものように、自習室の窓は閉め切っている。遮光カーテンを閉め、照明をつけた。
段々と夏めいてきたので、エアコンの冷房を入れて涼んでいた。
「まだか。まだ、一文字と夜桜は来ないのか!」
連辞は、長机に腕を乗せて椅子にだらしなく座っている。
連辞がしびれを切らしたように、プリッツをポキポキと噛んでいる。
なんでも、いつものポッキーのチョコは暑いので溶けるらしい。
なので、夏場はプリッツらしい。
「我輩に言われても知らないのだ」
冷房の前で目を細めて口を開けて座っていた。
しばらく涼んでいた我輩だったが、ちょうどドアが開いて二人が入ってきた。
一文字露世と夜桜鑑だ。
「遅くなってごめん、写影子」
「悪かったな、月野原」
連辞がプリッツを勢いよく噛み切った。
「俺に謝罪はないのか」
「いや、女子たちに追いかけられてさァ」
「ラブレターの山を渡されたからね」
我輩の頭に衝撃が落ちた。
「な、なんだって!?」
我輩の、大好きな露世が! 女子の魔の手に!
「写影子、安心して。僕は写影子だけだから」
「いやいや、別に鑑は構わな――」
「面倒だったんだよね」
「ああ。だから、特殊写真をフォトリベしてシャドウを出して」
「ええっ!? 鑑と露世はシャドウに女子を襲わせたのか!?」
ちょっと、それはドン引きかもしれな――。
「いや、シャドウにラブレターをビリビリに破かせてね」
「俺のシャドウで窓から吹き飛ばして、紙吹雪にしたんだァ」
「ええっ!? 露世まで!?」
「滅茶苦茶綺麗だったよ。夏の雪って感じで」
「きれいだなァって夜桜と笑っていたら、女子たちが大激怒でさァ」
そりゃ怒るわ。
「追いかけられて、袋叩きになりそうだったよ。怖いね、女子って!」
お、おいおい。この二人に普通の神経は通っているのか。
「ああ、うらやましい奴らだ……」
「おい、連辞」
「コラ、連辞」
「でも、面白かったなァ」
連辞は羨望の目で露世と鑑を見ていたが、我輩は顎が外れそうなくらい口を開けていた。
呆気に取られて放心している我輩に二人は目の前で手を振った。
「写影子?」
「月野原?」
「ハッ!?」
いかんッ! 鑑は残念系だと思っていたが、露世も残念系だった!
常々、露世は格好良いのになぜモテないのだろうと思っていたが、こういうカラクリがあったとは!
半眼で露世と鑑を見ていたが、にっこりと笑みを返されてしまった。
「さあ、部活動始めようかァ」
「昨日はどこまでだったかな~」
やる気満々な二人に、脱力して我輩は、今日までに集めたレイフォトを取り出したのだった。




