第五話 謎の高校生男子のレイフォトをフォトリベしよう!②
破れたレイフォトから、思念があふれ出す。
その靄は、入道雲のように固まって、最終的には蝋人形のような高校生男子の上半身をかたどる。それが宙に不自然に浮いている。
「また、この高校生男子のシャドウなのだ……」
シャドウは構わず喋り出す。
『⑤。は、誘拐された』
「えっ!? 誘拐された!? 誘拐されたって何なの!?」
我輩はパニックになっていた。
『消去!』
シャドウは答えもせずに、あっさりと自ら消滅した。
「えええええ! ちょっとぉ!」
「ちょっと待って写影子! 一文字!」
「あ、ああ。ええと、続けて読むと――『①。小使井網羅』『⑤。は、誘拐された』ってオイ……」
「なんか、物騒だね……」
「ああ」
露世と鑑が喋っている傍で、連辞がスマホで連絡していた。
「ああ、俺だ。フォトグラン学院高等部に、一年五組・出席番号十番の、小使井網羅はいるか?」
どうやら、四ツ葉に連絡したらしい。
「いる? 誘拐されてない?」
「よかった」
「ああ」
すぐに居場所がわかるなんて、フォトグラン学院に連絡して確かめさせたのだろうか。
それとも――。
「すぐに、小使井網羅を尾行しろ。狙われている可能性がある。犯人を見つけ次第捕らえて、小使井網羅を保護だ」
連辞がスマホを切って、こちらに歩いてきた。
とりあえず、小使井網羅は無事だ。我輩は、ホッと胸をなでおろした。
「連辞ィ」
「なんだ、一文字」
「まだ誘拐と決めつけるのは早いんじゃねェの?」
「ん?」
露世の言葉に鑑は頷いた。
「そうだね。これは、①と⑤の番号だから、間に何か文字が隠されている可能性がある」
連辞はポッキーを箱から取り出して、食べ始めた。
「でも、早めに手を打った方がいいだろ?」
「そうだね、連辞の言う通りなのだ……それでね!」
我輩は、レイフォトを差し出した。
「これが、フォトリベした後から出てきたのだ」
「『△』のマークが入ったレイフォトだね」
「これも、後回しだなァ。二枚一度にフォトリベする可能性があるからな」
我輩は、露世に髪の毛を手でかき回されて、「わわっ」と声を上げるのだった。
「しかし、みごとに暗礁に乗り上げたな……」
連辞はポッキーを加えて、目を細めている。
四ツ葉にいる大人のオリジナルの連辞は、きっとタバコを吸って至福の時の中にいるのだ。
「でも、水色のポイントを見つけてレイフォトに収めたら、これと同じレイフォトができると思う」
「よし、写影子、がんばってね」
「ええっ、我輩だけ!?」
「そりゃそうだよ、写影子ちゃん」
「月野原しか光のポイントは見えないんだからなァ」
「わ、分かった。我輩、頑張るのだ」
でも、結構楽しくなってきた。
誘拐なんて物騒な言葉が出てこなければ、もっと楽しかっただろうけれど。
こっそりとしたフォトリベの部活動みたいだ。
そうして、我輩は二日間かけて、水色の光のポイントを二つ見つけた。
そして、レイフォトにしっかりと収めたのだった。




