第六話 番号のレイフォトをフォトリベしよう!
露世は得意げにレイフォトをつっついた。
「番号が二つずつあるってことは、その番号を二枚破ればいいってことじゃないか?」
「あ、そうだね」我輩も納得して頷いた。
「とにかく、二枚一緒にフォトリベしてみたらいいんじゃないかな?」
「分かった」
我輩は、『一』と『一』の番号を二枚一度にフォトリベ――つまり、破いた。
すると、思念がわだかまり、一つの像を作り上げた。それは、やはり飴玉媛理――飴ちゃんの姿になった。このシャドウも例によって、ガラス玉の眼でしかも上半身だけで、まるで色付きの銅像が浮かんでいるようだった。
ということは、これも飴ちゃんのことを示しているに違いない。
『二。いきどおる駅の。消去!』
そうこうしているうちに、飴ちゃんのシャドウは空虚な言葉で淡々と述べた。そして、消滅した。
あまりの呆気なさに我輩はパニックになった。
「ちょっと待ってよ! 『一』の番号を破いたのに、なんで『二』なんだ!?」
「まあ。番号はいいとして、『いきどおる駅』って『にこつく駅』の前の駅だよね?」と、鑑。
にこつく駅は、フォトグラン学院のある『にこつく市』に着く駅だ。我輩や露世の自宅があるのもにこつく市である。そして、『にこつく駅』の前が『いきどおる駅』なのである。
しかし、連辞は頭をガシガシと掻いた。
「それだけじゃ、何を意味しているのか分からないぞ!」
「とにかく、俺はメモだ!」
露世はせっせとタブレットに入力している。
「メモできたぜ」
露世が先を促したので、連辞は頷いた。
「じゃあ、写影子ちゃん。次は『二』の番号だ」
「う、うん」
我輩は、勢いよく『二』の番号におけるレイフォトを二枚フォトリベした。すると、またしても飴ちゃんのシャドウになり、それは感情のない声でしゃべり始めた。
『四。ロッカーの中。消去!』そして、飴ちゃんのシャドウは消えた。
「今度は『二』の番号なのに、『四』の答えなのだ。どうやら、番号と答えは必ずしも一致しないみたいだね」と、我輩。
「メモしたぜ」と、露世。
連辞は露世の手元を覗き込んだ。
「ふむ。いきどおる駅のロッカーの中か……」
露世は考え込んでいる。
「ロッカーの中に何かあるってことなのかなァ?」
鑑が残りの二枚を勧めてきた。
「写影子、次だ」
「あ、うん」
我輩は、『四』の番号の特殊写真を二枚一度にフォトリベした。
すると、またしても飴ちゃんのシャドウになった。
しかし、その時金属音を立てて何かが落ちた。
「えっ!? 何かレイフォトから出てきたよ!? 手品みたい!」
それを拾っている我輩にみんなの視線が集中する。
しかし、その横で飴ちゃんのシャドウが問答無用でしゃべりだす。
『一、あらぶる駅と。消去!』
「ちょっと待てよォ!」露世が聞き取れずに悲鳴を上げた。
「番号は一だ」と、連辞。
「あらぶる駅と、だ」と、鑑も横で指示している。みんな、意外と冷静沈着だった。
「お、おお。『一、あらぶる駅と』、か……よし、できた」
露世は、危なかったが問題なく入力できたようだ。
露世がタブレットをつつきながら説明する。
「続けて読むと、『一。あらぶる駅と』『二。いきどおる駅の』『四。ロッカーの中』だって」
鑑が頷いた。
「あらぶる駅はにこつく駅の後の駅だよね」
自習室の中をうろつきながら連辞はつぶやく。
「その二つの駅にあるロッカーの中に何かあるってことなのか?」
我輩はメモできたことに安堵して、話を切り出した。
「これが、レイフォトの中から出てきたよ」
我輩が長机の上にそれを二つ置くと、鑑は眉をひそめた。
「これは、鍵なの? なんか、番号が書いてあるけど」
露世が鍵をチャラチャラさせている。
「これ。駅のロッカーの鍵だろ」
我輩も考えを巡らせる。
「二つってことは、あらぶる駅といきどおる駅のロッカーのカギってことなのかな?」
「よし! 捜査本部に連絡を入れて、ロッカーの中を探させよう!」
連辞はすぐさま、スマホで四ツ葉に連絡を入れた。
これで、事件が一歩解決へと進むはずだった。




