第二話 転校生と女子
「これは、まさか光のポイントを撮ったのか?」
やはり四ツ葉だけあって、フォトリベや特殊能力には詳しいようだ。
「はい、そうです」
「まさか、《《お前が》》光のポイントを撮ったのか?」
「だからそうですってば」
二階堂さんは得心したように頷いて、ポケットから特殊写真を取り出した。
「まさか、お前が探偵の能力を持っているとはな」
二階堂さんは、それをフォトリベした。
フォトリベされたのは、二階堂さんのシャドウだ。
ただし、それはかなり若い。我輩たちと同年代くらいか。
恐らく、二階堂さんはそういう思念を込めてフォトリベしたのだ。
「俺も、捜査に協力しよう」
「まさか、捜査に協力って?」
「ああ、行動を共にしたほうが早いからな」
我輩は目をぱちくりさせた。
「つまり、我輩たちと授業を一緒に受けるってこと!?」
「そうかもね。しばらく、マークさせてもらう」
まじか、それ。我輩は安心ではあるが。
「よろしくな、写影子ちゃん」
「え゛っ!?」
少年の二階堂さんは、よりによって名前で呼んできた。
我輩、この人も苦手である……!
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翌日から、高等部・一年一組の教室に転校を装って二階堂さんが潜入捜査しにきた。
「二階堂連辞です」
「じゃあ、あの席に座ってね」
二階堂さんは素知らぬ顔をして、先生の指示に従った。
彼は我輩を一瞥した。そして、我輩から少し離れた後ろの席に座っている。
例に漏れず、休み時間になると二階堂さんも女子の質問攻めになっていた。
「二階堂君はなんで転校してきたの?」
「世知辛い世の中から身を休めるため……かな。フフッ」
「え、ええ……」
疲労感漂う二階堂さんのギャグに、教室がシーンと静まり返った。
た、確かに! 嘘は言っていないが。
サブかったらしく、女子の二階堂さんを見下ろす目が重くなった。
「最近は体中にシップ貼ってマッサージチェアに座るのが趣味なんだよね」
「へ、へえ……」
「風呂上がりに冷たい麦茶でくぅ~っと一杯! それで、健康番組見るのが日課なの」
「な、なんで?」
「節々が痛み始めてさぁ。だから、健康に気を付けないと……ってアレ?」
女子生徒たちは潮が引くようにいなくなった。
我輩の耳に闘志野さんたちのぼやきが届いた。
「なんだろ。ドッと疲れが」
「次回に期待しよう」
「御意」
どうやら、闘志野さんたちはクラスの男子にトキメキを見い出せないらしい。
転校生に期待をかけたが全敗なようだ。
その時、二階堂さんが立ち上がった。
「写影子ちゃん、ちょっと良いかな?」
「えっ!? い、良いけど……」
いきなり二階堂さんに呼ばれて、クラスの注目を一身に浴びる我輩。
露世も鑑も事情を知っている。だから、騒ぐことも冷やかすこともない。
「月野原さん?」
「ッ!?」
我輩は闘志野さんたちに呼ばれて、慌てて振り返った。
「滅茶苦茶応援するね~!」
闘志野さんたちの女神様のような笑みに、またしても我輩は苦笑いを浮かべるのだった。




