第十一話 写影子のとっておき!
我輩は吃驚して言葉も出ない。もしかして、この二人は人質だったのか。
オリジナルの三毛野先生は気を失っている。
「いてて……」
露世は勢い良く倒れて呻いている。
二人ともロッカーに閉じ込められただけで、特に拘束はされていなかった。
「どういうこと? 露世は風邪で休みじゃないの?」
「そういうことになっていたのか?」
「そういうことって?」
「俺は昨日の下校途中に、あの三毛野のシャドウに拉致られてこのザマだ」
腹立たしそうに、露世は三毛野先生のシャドウへと顎をしゃくった。
飴ちゃんも鑑もフォトファイト中なのでこちらには気づいてない。
「そ、そうか! 三毛野先生のシャドウだったら、露世の出席欠席も思いのままだよね!」
ただし、今日限定だ。今日の夜には露世の拉致はバレたはずだ。
つまり、放課後。この三毛野先生のシャドウは我輩を罠にかける算段だったのだ。
それを知らない我輩は、ノンキに光のポイントを撮っていた。
そんなとき、鑑が美術の準備室の鍵を引き出しに仕舞ったので、光のポイントが鑑のシャドウで作られた。
鑑は我輩を試す算段を立てていたからだ。しかしその算段はここで狂う。
その後で三毛野先生のシャドウが、その美術の準備室の鍵をすり替えたからだ。
企み通り、我輩たちは一年一組の教室の前まで誘導された。
そして、シャドウが仕組んだ光のポイントの罠で、我輩たちは窮地に陥ったわけだ。
でも、何か変だ。何だろうこの違和感。
まあいい。露世には頼みたいことがある。
「それでね、ものは相談なんだけど」
上目使いになった我輩に、露世は嫌な予感を感じたらしい。
すうっと目を細めた。
「皆まで言うな。お前の考えは手に取るように分かる」
「あ、やっぱり?」
その傍で、鑑と飴ちゃんの悲鳴が聞こえた。
反射的に振り返ると、鑑と飴ちゃんはその場に倒れ込んでいた。
「鑑! 飴ちゃん!」
返答はない。
我輩は、喉のつっかえを飲みこんだ。
「さあ、どうする? 月野原写影子?」
三毛野先生のシャドウは、魔法の玉を手の上で光らせている。
鑑も飴ちゃんも、この攻撃の凶弾に倒れたのか。
ただの気絶ならいいが――。
「じゃあ、我輩もフォトリベしてフォトファイトするよ!」
「ほう、やってみろ」
一枚の特殊写真を我輩はフォトリベした。
思念が集結して、我輩の思念が具現化される。
撮った時もフォトリベする時も、我輩はこのシャドウを倒すようにイメージした。
「な、なんだ!? なんだ、このシャドウは!?」
それが実体化した時、余裕綽々だった三毛野先生のシャドウは瞠目の限りを尽くした。
「どうかな? 撮りたてほやほやのこのシャドウは?」




