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フォトリベレーション~一寸のシャドウにも五分の魂~  作者: 幻想桃瑠
◆+◆第一章◆+◆大嫌いだったフォトリベがドツボにハマるかで章◆+◆
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第十話 黒幕

 椅子をギギギと引く音と共に、三毛野先生が立ち上がっていた。


「ケケケケケ、よく来たな……」


 三毛野先生の声が低い二重声になっている。

 普段の三毛野先生の声はソプラノの美しく若い声なのに。

 その三毛野先生はケタケタと笑い始めた。

 我輩は目と耳を疑った。完全にホラーのアトラクションと間違えている。

 もはや、それは三毛野先生のオリジナルを模していない。口が裂け、目が血走っている。


「これは、シャドウだ」

「そうだね、三毛野先生のシャドウだ」

「月野原写影子。探偵の能力(サーチファカルティ)に目覚めたお前は、俺様に始末されなければならない!」


「ええっ!? 三毛野先生のシャドウがなんで我輩を狙うのだ!?」

「シャドウはフォトリベした者に従う。フォトリベした者の思念が作用して暴走しているんだ」

「いったい誰が……?」


 我輩は後悔していた。

 あの時に騒いだせいで、厄介なものまで引き寄せてしまった。


「ど、どうしよう」我輩は二人を振り返った。

「しくじった。僕のコレクションの特殊写真はすでに迎えの車の中だ」

「俺もだ」


 鑑はシャドウを指差した。


「じゃあ、消去(イレイス)!」


 鑑がシャドウを消す呪文を放った。


「効かねえな、そんな呪文!」


 鑑の呪文では弱すぎる。やはり、イレイサーに頼まないと。

 イレイサーとはフォトリベを消去する専門職である。救急救命士や消防士と並ぶぐらいメジャーな職業だ。

 あ、あれ?

 もしかして、我輩が完璧にフォトリベしてしまったから消えないのか?

 それとも、別の誰かが最初にフォトリベして――ああ、未知数で分からない。

 我輩の混乱した思考を遮るように、鑑が喋った。


「やっぱり、フォトリベでフォトファイトするしか術がないな」

「えっ? フォトファイトって今流行っている遊びでしょ?」


 フォトリベを拒否してきたので、その辺にはうとい。

 しかし、鑑は邪険にせずに丁寧に教えてくれた。


「フォトリベをして、シャドウとシャドウを競わせる決闘は知っているよね?」

「う、うん」

「それがフォトファイトだよ。完全にフォトリベで来たら暴漢を撃退することもできる」

「じゃあ、何か特殊写真を撮って戦うとか?」と、飴ちゃん。

「あっ! 我輩、魔法のカメラ持ってるから撮るね!」


 我輩は鑑と飴ちゃんのシャドウを一枚ずつ撮った。

 それを、鑑と飴ちゃんに手渡した。


「ありがとう、月野原さん」

「ありがとう、写影子」

「行くぞ、シャドウ!」

「俺たちが相手だ!」


 鑑と飴ちゃんがシャドウをフォトリベした。

 すると、鑑と飴ちゃんの武装したシャドウが現れる。

 鑑のシャドウは騎士の姿だ。飴ちゃんのシャドウは天使の姿だ。

 我輩もフォトリベした。

 我輩のシャドウは女の魔法戦士の姿だ。


「シャエコ、GO!」

「我輩、戦うのは嫌です」

「え」

「我輩、平和主義者なんです」

「ええええ!?」

「写影子は傍で見ていてくれ」

「ご、ごめん!」


 我輩の向こう側で、鑑と飴ちゃんはフォトファイトを開始した。

 我輩のシャドウは使い物にならないのか? 困ったぞ。

 うーむ、つまり、この七色の教室に閉じ込められているのが悪いんだから……。

 我輩はシャエコの魔法戦士風の姿をまじまじと見つめた。


「見つめられると照れます」

「そうか、魔法! シャエコ、魔法使える?」

「はい! 使えます!」

「シャエコ! 向こう側に鍵を移動させて、鍵をあけて!」

「わかりました。やあ!」


 すると、もくろみ通りシャエコはドアの隙間から鍵を移動させて鍵穴に鍵を通してドアを開けてくれた。すると、虹色の教室は元の白い教室になり、ドアも元に戻った。


「やるなぁ、月野原さん」

「写影子、すごいぞ!」

「えへへ~」


 鑑と飴ちゃんが褒めてくれたので、我輩はまんざらでもない。


「よそ見をするな。俺様を倒してから考えるんだな」


 すぐに緊迫感が戻ってきた。三毛野先生のシャドウは消えてなかったのだ。


「行くぞ、シャドウ」

「僕たちが相手だ」


 あとは、鑑たちに任せよう。

 その時、後ろから物音がした。掃除用具からだ。


「ん?」


 我輩は眉をひそめた。

 鑑と飴ちゃんがフォトファイトしているのを横目に、我輩は掃除用具のロッカーを開けた。

 すると、二つの掃除用具のロッカーから何かが横倒しに倒れてきたので、我輩はそれを反射的に避けた。それは勢いよく床に転がった。


「ええっ!?」


 我輩は目を疑った。


「露世!? それに、こっちは本物の三毛野先生!?」

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