第九話 虹色の光のポイント
奇妙に思った我輩たちは、一年一組の自分たちの教室まで戻ってきた。
何もなければ、切り上げて帰宅する予定だった。
「えっ!?」
教室のドアに気付いた我輩は、ぎくりとして足を止めた。
先頭を歩いていた鑑が、教室のドアの取っ手に手をかけた。
「鑑!」
我輩は鑑を慌てて止めたが、彼は躊躇せずに開けた。
そして、教室の中を確認して振り返る。
「写影子、安心してくれ。何もなかったよ」
「月野原さんは、怖がりだね~」
鑑と飴ちゃんは安堵したように笑っているが、我輩は平常心ではいられない。
「違うよ! そのドアが七色に光っているんだよ!」
「えっ!?」
鑑と飴ちゃんは、驚いてドアから離れている。
「う~ん、僕たちでは、全然分からない」
「でも、写影子の目には見えているのか」
「つ、つまり、これは、光のポイントだよね?」
我輩は慌てて魔法のカメラを手に取った。
「七色に光っている写真は何を示しているのかな?」
「とにかく撮ってみてくれ」
「きっと撮ったら分かるよ」
二人は楽しそうに目を細めている。冒険気分なのか。
かくいう我輩も、気楽な気分だ。
「じゃあ、撮るね」
我輩は、パシャリと特殊写真に収めた。
暫くすると、魔法のカメラから特殊写真が機械音と共に現像されて出てきた。
「なんだ、普通のドアの特殊写真だよ」
今度はちゃんと現像されて出てきた。
「一体どういうこと?」
「せっかくだからフォトリベしてみないか?」
「そうだね~、面白そうだし」
二人の意見に同感だ。
この写真をフォトリベしなければ、気になって夜も眠れないだろう。
「分かった、フォトリベしてみるよ!」
気楽な気分で、我輩はフォトリベした。
しかし、それが間違いだった。
我輩たちは用心して、『四ツ葉』に、相談するべきだった。
そんな選択肢も選ばずに、我輩は気楽にフォトリベした。すると、思念が辺り一面に広がった。
「これはなんだ? 教室?」と、鑑が不思議がっている。
その思念は七色の部屋に変貌した。
これは、一年一組の教室のシャドウだ。
我輩たちは、いつの間にかその七色の部屋の中に居た。
万華鏡の中のような教室の内をぐるりと見渡すと、めまいがしそうになった。
「この部屋が何だろう?」
飴ちゃんも不思議がっている。
「あら? 貴方たち?」
我輩はギクリとなった。
教室のビビッドがどぎつくて、その存在に気付くことに遅れた。
教室の隅にあるデスクには担任の三毛野多摩先生が居た。
先生は、我輩たちを見つけて瞬きしている。
「えっ?」
一見普通に見えるこの光景に、我輩たちは違和感を感じた。
「ちょ、ちょっと、待って? なんで、三毛野先生が《《ここにいる》》の?」
このことには、流石の鈍い我輩も気がついた。
「そ、そうだよ、だってこれは」飴ちゃんが震えている。
「ああ。これは、一年一組の教室のシャドウだ。だから、この三毛野先生が……」
鑑が三毛野先生に視線を走らせた。
我輩は鑑に続いて、三毛野先生を見つめた。
我輩は喉のつっかえを飲みこんだ。
「この三毛野先生が仕組んだってことだよね」
我輩が言葉を発したその後。
教室の前と後ろのドアが打ち付けられるように自動で閉まった。
な、なんだ!?
「ちょ、ちょっと待って!?」
我輩たちはドアの方に駆け寄った。
ドアを引っ張るが、鍵をかけた時のようにびくともしない。
「も、もしかして。考えたくないけど」
飴ちゃんの頬が引きつっている。
「十中八九閉じ込められたな」
鑑の額から汗が滴る。
「ま、まじで」
我輩の声は緊張感からか乾いていた。




