表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/7

2話 回想10歳の或る日

おねショタ分強いです。

 十歳になったあの日の事だ。

 僕は父さんと母さんに連れられ、大規模商業区画にある複合型商業施設へとやってきた。

ガイノイド売り場に案内されて、最初に目に入ったのは煌びやかで艶やかで清楚な何人ものお姉さん。

初めて行くガイノイド売り場はテレビでも見た事無いほど多くの美しいお姉さんたちの姿があった。

メーカー出庫の際の透明なパッケージに入ったままのお姉さんや、僕を案内してくれるお姉さん。

ステージで新機能を説明するお姉さんやスペアボディ等の消耗品の販売をするお姉さんも。


 さっきまで隣にいた母さんはいつの間にか離れて、最新のアップグレードパーツの説明を熱心に受けている。

メーカーからのデータは常にダウンロードしているはずなんだけど、

「やっぱり生の声が一番参考になるから。」

と毎回販売員と話し込んで僕と父さんを辟易とさせている。

僕は待たされるだけで良いけど、母さんが気合を入れて買い物した翌朝の父さんはいつもゲッソリしているから少し心配。


「父さんも昔ここで母さんと出会ったんだ。」

 急に父さんが語りかけて来る。

何を言っているんだろう?

男性はガイノイドを女性はアンドロイドをパートナーにするのは当たり前の事なのに。

そう思う僕を余所に父さんは続ける。

「父さんが初めてここに連れてきてもらったのは、ちょうど今のお前と同じくらいの年の頃だったんだ。

父さんのお父さんとお母さん、つまりお祖父ちゃんとおばあちゃんだね。二人にここに連れてきてもらったんだ。」

 そこで父さんは言葉を切る。

まるでそこから先を話して良いものかと迷っているように。

「そこでお祖父ちゃんに言われたんだ。

「タケシ済まないがお前にガイノイドを買ってやることはできん。だから頑張って働いて自分で嫁さんを連れて帰ってきなさい」ってね。」

 僕はその言葉を聞いてすっと意識が遠くなっていくのを感じる。

足もだんだん力が入らなくなってガタガタと震えはじめている。

「あぁ。怖がらせてしまったね。大丈夫、ちゃんと買ってあげるから。」

 父さんのその言葉にようやく僕は一息付く。

外から見ても解る程、僕は酷く怯えていたんだろう。

でも僕が怖がるのも無理は無いと思う。

 

 なにせCLV(Colony Local Vision)やGWW(Geosphere Wide Web)学校の先生までもが、「パートナーの居ない人生は悲惨だ」と口を酸っぱくして言うのだ。

CLVではアンドロイドの居ない時代の悲惨な結婚生活について特集が幾度となく組まれていたし、GWWではアンドロイドやガイノイドを買えない人たちがどれだけ悲惨な生活をしているかを画像映像つきで多くの人が語っていた。

学校の先生は口を酸っぱくして

「パートナーがいない人はどこの会社も採用してくれませんよ!良い大学に行き良い会社に入るには良いパートナーを得る事!」

と言っていた。

 その上昨日、夕飯時に流れていたCLVの特集は「パートナー無き人々!その悲惨な日常に迫る!」だった。

若い時期に遊び惚け、ガイノイドを買えなかった男性がビルとビルの隙間で生活し残飯を漁る姿がお茶の間に流れていた。

他にもやはり若い時分碌に働かずにアンドロイドの購入資金を使いこんでいまった女性がやはりガイノイドを買えない男性を相手に「違法なサービス」をして居るという話もあった。

「違法なサービス」が何なのかは知らないけれど、ガイノイドを買えない男性が相手というのだから決して実入りのいい仕事ではないんだと思う。

実際その女性も

「アンドロイド買う資金が貯まるころには、あたしお婆ちゃんだよ!?」

と甲高い声で泣き崩れていたし。

 その後CLVではアンドロイド・ガイノイドの購入時期が早いほど「コーフクド」が高く、「ネンシュー」が高くなるけいこうが有り東航大学や光都大学への「シンガクジッセキ」も高いという特集に移って行った。

言葉の意味が難しかったので母さんに聞くと、

「ガイノイドを買うのが早ければ早いほど、幸せでお金持ちになれるって事よ。」

と教えてくれた。

そしてその後に、

「でも裏を返すとガイノイドを買うのが遅くなると、さっきのCLVの人たちみたいな生活に成っちゃうって事でも有るわね。」

と付け足して母さんはにっこりとほほ笑んだ。

 こんな話を聞いていれば怖がるのは当たり前だ。


「でもね、タカシに買ってやれるのは半分だけなんだ。」

 ほっとしたのも束の間、父さんがぼくに語りかける。

「どうして?」

 理由は何となく分かってはいたけれど、聞かなければいけない気がして父さんに問う。

「家はまだ子供がタカシしか居ないだろ?今は母さんと父さんとで三人働いているけど子供作ったら母さんは体を一つ子育てに使わなきゃならない。

あと二人は子供を作らないといけないから、大体八年ぐらいは収入が二人分しか入ってこなくなっちゃうんだ。」

僕は父さんの言葉にうなずいた。

母さんは僕を生む時に出産育児用のスペアボディを購入していた。

僕が大きくなってからはスペアボディも働く方に回して父さんと合わせて三人分の力で家を支えてきていたんだ。

 でも妹か弟が生まれればそれができなくなる。

 作らなきゃ良いじゃないかと思うかもしれないがこれには理由があるんだ。

日本は国民がガイノイドやアンドロイドを買うときに購入代金の60%を負担してくれる。

これは日本人なら誰もが受けられる権利だ。

でもその代わり購入から二十年以内に最低三人子供を作らなければならない。

作らなくても構わないけど作らなかった場合補助を受けた金額の何千倍ものお金を返さないといけないらしい。

「ねんり五割、二十年ふくりの借金と同じ計算」なんだって。

とにかくそんなとんでもないお金は家に無いので父さんと母さんはあと二人は子供を作らなきゃ行けない。

僕としても是非そうして貰いたい。

何せこの場合の借金は「さいむしゃ死亡の場合もそうぞく拒否できず、はさんのさいむせいりの対象にならない。」らしい。

どういう事か先生に聞いたら「この借金からは本人も家族も絶対に逃げられないって事だよ。」と教えてくれたし、CLVやGWWでも一週間に一度はその話題で盛り上がるのだ。

未だに意味は分かってないけれどとんでもないことになる事だけは想像に難くない。 

 とにかくお父さんたちが子供を作らないと僕も困るのだから父さんの言葉に頷くしかないのだ。

父さんが真剣な顔になる。

「だからタカシ、今日ここでガイノイドのお姉さんを買うとどれぐらいかかるかをしっかり見ておくんだ。

中学の3年間で確り働いて高校に入学する時にちゃんとガイノイドのお姉さんを迎えられるようにね。」

父さんは僕にそう言い聞かせると、さぁ好きに見てきてご覧と送り出してくれた。

 

 その後の時間はまるで夢の中に居る様だった。

僕は係のお姉さん(勿論彼女もガイノイド!)に連れられてガイノイド売り場を案内してもらった。

僕以外にもガイノイドのお姉さんに案内してもらってる子が居てちょっと安心。

あの子も僕と同じように

「出せるのは半分だけ!」

って言われてるのかなぁ?

 ガイノイドのお姉さんから最新の機能やどんなことをできるかとか、後から追加できる部品にはどんなのが有るかなんてことを教えてもらった。

他にも(本当は秘密らしいんだけど)AIや量子コンピューターのランクでどんな差が出るか、なんてメーカー所属のガイノイドならではの事までこっそり教えてくれた。

それともう一つ教えてもらったのはガイノイドの見方。

「タカシ君?さっきからガイノイドのお姉さんの顔や胸ばっかり見てるけど、ガイノイドで一番大事なのは見た目じゃなくて機能なのよ?」

そう言って係のお姉さんは品を作って僕に微笑んでくれた。

思わずその仕種と「機能」という言葉の響きに生唾を飲み込む。

僕のその様子が可笑しかったのか彼女は僕に笑いかけると説明を続けた。

その時の笑みはちょっとエッチな感じがしたけど今度は顔に出なかったと思う。

「続けるわね?さっき見てもらった通り、オプションや外装は買ってからも注文の時にも好きに変えられるの。

だから本当に見なきゃいけないのは量子コンピューターの性能とAIの性格。この二つは絶対に変えられないからガイノイドを購入する時は注意して。

コアとなる量子コンピューターの性能が低いと各種プログラムのインストールや拡張機能の使用に制限が出るし、

性格がどうしても合わない場合、せっかく購入したガイノイドを下取りに出す人も居るわ。」


 

「これから見てもらうのは、色んな種類の量子コンピューターとそれに合わせて各種アプリケーションを組んだいわゆる既製品ね。

これに好みのAIを入れて購入するのが一番お買い得な買い方なの。一からオーダーする方法もあるけど同じものを組んだ場合値段は高めになるわ。」

 最初に見せてもらったのは最高級モデルのお姉さん。

最高級のAIと量子コンピューターを搭載してるんだって。

スペアボディも同時に八人まで動かせて、なんと車だけでなく航空機や船舶、宇宙船に往還機まで運転できるスグレモノらしい。

メーカーから出庫する際にライセンス登録も一緒にしてあるから彼女と万能機が揃えば宇宙から地球まで一跳びだ。

さらに安眠セラピーを始めメンタル・フィジカル両面のケア機能も充実。

ドクターライセンスも登録済みだから彼女がいれば医者いらず。

正に夢のガイノイドだ。

因みに価格は2800万円。

国の補助金を使っても手を出すのは厳しいし何より(半分とはいえ)父さんは出してくれそうにもない。


 次は一番安いと見せてもらったガイノイドを見せてもらった。

そこには大きく「決算特価!! 780万円!!」との表示。

でも量子コンピューターもAIも最低ランクで正直「居ないよりはマシ」程度の物だとお姉さんに耳打ちされた。

未だ起動しても居ないそのお姉さんが可哀そうになって、

「じゃあこのお姉さんはどうなるの?」

と聞いてしまった。

でもお姉さんは嫌な顔一つせず説明してくれた。

こういったモデルのガイノイドは大体既にガイノイドを持っている家庭の、二人目のガイノイドとして迎えられるんだって。

だから気にしなくても酷い目に遭ったりはしないのよと教えてくれた。


 最後に見せてもらったのは中間の価格のお姉さんたち。

値段で言えば1000万から1800万ぐらいの間。

大半の人はこの価格帯のガイノイドを買うんだって。

最初に見たお姉さんに比べれば機能は大分見劣りするけどそれでもスペアボディは2~4体使えるし、ライセンス類も車用の物を持ってるのが大半だ。

生活するうえではこのクラスで十分なのかも。

一番売れ筋の価格帯だけあって機能の種類も豊富だ。

流石に往還機のライセンスを持ってるお姉さんはいないけど、少し他の機能を我慢すれば宇宙船ライセンス持ちのお姉さんだっているしドクターライセンスを持ってるお姉さんだっている。


 ふと気になる表記を見つける。

「お姉さん、このFって付いてるのはなあに?」

 どのガイノイドにも付いている、Fの表記。

最初に見た最高級のガイノイドには「F-SSS」と一番安いお姉さんには「F-D」ここにいるお姉さんには「F-C」とか「F-A」。

ドクターや宇宙船のライセンスを持ってるお姉さんは「F-C」が、特にこれといった機能を持ってないお姉さんは「F-A」とか中には「F-S」「F-SS」というのもある。

「良い所に気が付いたわね。それは家事の能力を表していてDからAの順で能力が高くなるの。Sはそのさらに上。勿論Sの数が増えるほど能力が高くなるわ。因みにSSSにもなると高級レストラン並みのおいしい料理が作れるようになるんですって。」


最初に見たお姉さんの凄さがさらに上積みされる。

ドクターライセンスに始まり各種運転ライセンス、さらに最高級の家事機能まで持っているなんて!

中間クラスのお姉さんたちに後付けでカスタムする費用を考えれば相当にお買い得だ。


この日僕は何としても最高級モデルのガイノイドを買えるようになろうと思い立ったんだ。

文章を読み返してそこはかとないエロスを感じたのは私だけでしょうか?

評価・ブックマーク・感想よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ