プロローグ
ライザシーナ国
それは緑豊かで穏やかな国
その国には古より伝わる伝説がありました
不思議な力を持つ水龍と呼ばれた者の伝説が.......
カチャリと櫛を置いてリボンを手に取り長い髪を一つに結ぶ
小さな鏡に写った自分を見て上手く出来た髪をみてよしっと呟いた
タンタンと子気味よいおとを立てて靴を履き勢い良く外に出た
「おっ、おはようソラちゃん。今日も相変わらず可愛いねぇ」
「おはようございます。コンラードおじさま」
珍しい、長い水色の髪を靡かせてパタパタ走りながら隣に住むコンラードおじさまに挨拶を交わした
ここはライザシーナ国にある、東にあるエフニアという村
ボク、ソラ=アルファーノはそこに住んでいる
特別裕福でも貧乏でもなく毎日働いて日々を過ごしていた
「おはようソラ」
仕事場である療養所について中に入ると仕事仲間であるエレナ=フェラーリが既に制服を身に付け仕事に取り掛かろうとしていた
「おはようエレナ。今日は早いね」
「そうなんだ。今日は母さんが朝早くにお布団引っペがして、たまには早起きしたらどうなの!!って怒られちゃってさ。」
「エレナ、朝ニガテだもんね」
苦笑いのエレナに対し、ボクはクスクスと笑いながらも制服に着替えた
「ん?来て早速だけどソラ、仕事だよ」
くるりと後ろに振り向くと初老の男性が若い男性に抱えてもらって入ってきたところだった
「どうしましたか!?」
近くに駆け寄り男性をベッドに横たえる
「朝、子供がいたずらして馬を怒らせちまったらしくてその時にこの爺ちゃんが止めようとしたら馬に足を蹴られちまったんだ」
初老の男性は顔に大粒の汗を滴らせてる
蹴られたという足に少し触れた瞬間、男性は呻き声をあげた
「骨折してますね。すぐ治療に入ります。もう少しの辛抱ですから頑張ってくださいね」
すっと両手を彼の骨折した足にかざした
ポウッと淡い白い光が手を覆い男性をも包み込む
1分近くそうしていただろうか
光はすっと消え、ボクはふぅとため息をついた
「もう、大丈夫ですよ」
うっすらと初老の男性は目を開けゆっくりと起き上がって骨折した足を曲げたり叩いたりした
「おお!痛くない!ありがとうなソラちゃん」
先程までの苦渋の表情が嘘のように明るい顔つきになる
彼を運んだ若い男性もホッとしたようだった
「次からあんまり無茶しちゃダメですよ」
治療費を払い、彼らが去っていく
一息ついて椅子に座るとエレナがお茶を用意してくれていた
「ありがとう」
お礼をいってお茶をすする
「どういたしまして。いやぁ、いつ見てもあんたのその力は凄いね」
ボクの力、それはどんな怪我でも治すものだ
これは生まれつき備わっていた力だった
他の人にはないボクだけの能力
「いつ見ても惚れ惚れするくらい綺麗でかっこいいよ。流石"水龍"様」
水龍
それはこの国に伝わる伝説だ
水色の龍 空より舞い降りたとき ひと振りの剣が目覚め 人々を浄化し 闇を消しさらん
なんでも人々が心の闇に呑み込まれたとき、水龍が空から舞い降りてひと振りの剣が目覚め、暴走した闇を浄化した、というものらしい
そこで怪我を治す力を持ったボクが水龍なのではと冗談半分本気半分で言われているのである
「もう、やめてよ。そんなのお話に過ぎないよ。それに、水龍は怪我を治すなんて言われてないじゃない」
「ん~、でもあんたの髪と瞳綺麗な空色じゃない?それって水龍っぽいじゃん」
「単なる偶然でしょ。」
「えー、そうかなぁ?」
ぶつくさとエレナは言いながら仕事に戻り、ボク自身も仕事をし始めた
この時、ボクは何も分かっていなかった
この力の事も、これから起こる災いも
カッカッ
大理石の廊下を歩く
自分の何倍もある扉の前にくれば見張りの兵士はさっと敬礼し道をあけた
扉を通り、大きな部屋の奥の豪奢な椅子に座るこの国の"王"の前に膝をついた
「王よ。例の者を見つけました。東にあるエフニアという村のソラ=アルファーノという、今年17になる少女です」
このお話をお読み下さりありがとうございます
お話を書くのはあまり得意ではないですけど読んでくれる皆様を楽しませられるような物語を作っていきたいと思います