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「そーうーこーーーっ!!!!」
通学路の途中で、後ろから声をかけられた。
横断歩道を渡り、この道を真っ直ぐ進めば、学校につけるという地点だ。
いつも彼女には、ここで声をかけられる。
言わば彼女との合流地点だ。
「あかね、おはよう」
私は後ろから走ってきた見知った人物に返事をする。
「倉庫さん。オハヨウゴザイマス」
彼女の名前は、神崎あかね。
私の友人だ。でも、一番心を許せる人間だから、私の親友ってことになるのかな。
とにかく、彼女との仲はとても良いはずだ。
「倉庫さん倉庫さん。本日もお美しゅうごじゃりますな〜」
「そんなそんな〜。あかねさんほどじゃありませんよ〜」
「またまたご謙遜を〜」
あかねはいつもこのような感じだ。
…ふざけている。
そして、私も彼女といるときは、ふざけている。
いや、彼女といるときだけは、ふざけることが出来るのだ。
彼女はとても親しみやすい。
「…あかね。また倉庫って言ってない?」
「……やっぱりばれてたか」
「そりゃ何度も言ってれば」
もちろん私は倉庫ではない。私には名前は白沢葬子という名前があるのだ。名前が、倉庫と同じ音なので、あかねにはよく倉庫倉庫と呼ばれからかわれるのだ。
「いっそ倉庫に改名するとか?白沢倉庫…なんかありそう」
「もーー!!あかねー!!!」
「あははっごめんごめん」
こうして彼女と過ごすと時を忘れ、いつの間にか周りの景色が、通学路から教室へと変わっていたりする。
けれども彼女と過ごす楽しい登下校の時間も、これが最後になるとは、この頃の私は、夢にも思っていなかった。