結果
ミスで活動報告を先に投稿してしまいました(汗
「口のわりには大したことなかったわね。」
ミア先ほどのような冷たい感じではなく、いつもの調子に戻っている。
「ええ、場外により、ミア・クラウゼスの勝利となります。」
進行役は驚きを隠せていない。
Aブロックの試合に出る若いであろう面々もざわついている。
左官の男は無表情で手に持っていたボードに何事かを書き込んでいる。
ジャックは場外に出た挙句に気絶しているようで、どこからか来た数人の医者が担架で運んでいく。
「まだまだね。
でも、あなたはもっと強くなれるわ。」
聞いてはいないであろうジャックに向かい、ミアは言葉を喋る。
「あと、あなたは私のことを平民だと罵ったけれど、私は自分のことを平民だとは一度も言っていないわ。」
どうせ聞いていないだろうと分かっていながら、もう一度喋る。
そして、ミアは魔装を解いて舞台から降り、そこら辺の地面に座った。
************************************
ミアはその後、何事も無く勝ち進み、決勝もあっさり勝利してブロックを制覇した。
初戦のように会話することはなく、残りの三戦全てを先手必勝で片付けた。
現在は午後九時、全ての対戦が相当な速さで決着したらしく、全ての結果が出ていた。
「皆ご苦労だった。結果は明日の午後一時の発表になる。それまでは各自休んでいてくれ。
ああ、決着方法を連絡し忘れていたことは申し訳なかった。
ふう、それでは解散!」
雑なのか丁寧なのかよくわからない喋り方をする人だなあと、ミアは思った。
************************************
ミアの使える属性は四つ。
火、風、雷、無だ、と言っても、無属性の魔法は魔法士ならだれでも使えることができるので実質的には三つと言えるだろう。
だが三属性も使えればかなり優秀だと言えるだろう。ちなみに魔力測定器で表示される色は、自分が最も得意とする属性であり、自分が得意な属性が幾つあるかは知ることができないようだ。
そして、ミアが持つ魔力はかなり大きい方である。ミア自身から言わせれば、自分より魔力が大きいのは兄くらい、だそうだ。
トーナメントの時はその魔力を強化魔法と風魔法に使い、相手を初撃で粉砕する方法をとったのだ。
戦闘の経験が殆ど無い受験者達や、まだまだ発達中の軍未所属の卒業生たちは、ほとんどがこれで倒れていくものだ。
************************************
神暦289年8月15日、午後一時、アルテア王国軍駐屯地、屋外演習場。
試験から二日後、つまり合格発表の次の日、ということだ。
今季の入軍者(毎年四回にわたり入軍試験が行われる)は約100人。
毎年だいたいこの人数だ。
「ええ、われわれアルテア王国軍は、八年前の事件を基に発足され・・・。」
元帥の一人、クリス・ベルセルクが新規入軍者に対し演説を行っていた。
ミアにとってはあまり聞きたくない話だ。
それと相まってこの暑さ。
この気温の中、外に立たされる、というのはかなりの地獄だった。
辺りには白い軍服がたくさん並んでいる。
男性用の軍服は長袖長ズボン、この暑さでは相当苦しいだろう。
対して女性はスカートを履くことができるので、まだましだというものだ。
もし、これで魔法が使用可能であったなら、水魔法の応用で氷魔法を使用し、辺りを涼しくするところであっただろうが、生憎この入軍式の最中は原則的に魔法の仕様が禁じられていた。
ミアの最初の階級は大尉だった。
実力的な話では既に将官レベルだという話だが、入軍したての兵士にいきなりその待遇はいろいろおかしいという話が出たのだ。
当然というべき判断である。正直な所、大尉でも十分である。
「君を呼び出したのは他でもない。
その優秀な能力を買ってのことなのだ。」
大佐、オルガ・ニールセンの部屋。
ミアは演説が終わった後、すぐに呼び出されたのだ。
「ある仕事を頼みたくてね。
君の実力が如何程のものか、もう一度知っておくためだ。」
「はあ。」
ミアは面倒臭いなあと思いながら、気の抜けた返事をする。
他から見れば、上官に対する礼儀がなっていないと思われるだろう。
「面倒くさいかもしれんが、我慢してくれたまえ。
肝心な仕事の内容だが、ある要人の護衛をしてほしい。」
「要人、ですか?」
「詳細は開かせない。当日になれば分かるだろうが、この場では誰に聞かれていても不思議ではないからな。」
オルガのいうことは一理ある。盗聴魔法というものが存在するため、簡単に喋ることができないのだろう。
そして、この部屋には防魔壁(魔法に対する耐性を持つ素材を使った壁)が使用されていないということが分かる。
「任務は明後日だ。要人はグロリアの首都、アルサラムへと馬車で向かう。
お前ともう二人、護衛と世話係がつくことになっている。」
と、様々な詳細を聞かされる。
ミアはその時、オルガも気づいていたが、話を片耳で聞きながら、窓から見える雲を眺めていた。