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対戦

初戦闘です。

 午後七時。駐屯地・屋外訓練場。

 光魔法による発光であたり一帯が照らされている。かなり広く造られている。

「これは戦闘力を測るテストだ。

 評価は我々人間の眼で行う。少佐、中佐の方々が評価するので、皆、精一杯がんばってくれ。

 肝心のテストの内容だが、魔装を使用しての一対一で、トーナメント方式で模擬戦を行う。

 対戦表は魔力量の近い物同士で組んだ。

 貼りだしたんで、各自確認してくれ。

 ああ、いくつかのブロックに分けたから、それも確認してくれ。Aブロックが一番魔力平均が大きいブロックな。これも魔力平均の大きさで並んでるから。すぐ分かるだろう。

 ちなみに、勝ち負けは一切関係ないが、勝った数だけ審査員に見てもらえるということだ。試合がなくなり次第終了、ということだな。

 各ブロックのトップが競い合うことはない。

 説明は以上。

 質問がなければ解散だ。」

「・・・。」

「では解散!」

 その言葉と同時に、皆(約200人前後)がオーダーの前に集結する。

 一ブロック10人、AからXブロックまである。

 ミアの名前はすぐに見つかった。上から二番目。つまりAブロックの第一試合ということだった。

 ************************************

 Aブロック集合場所。

 対戦行う場所には直径30m程の円状の舞台が設置されている。

 その側、と言っても10mほど離れているが、一人の左官が立っていた。

「えっと、全員集合したようなので始めようと思います。

 第一試合、ジャック・フォウ・ブランフォードとミア・クラウゼスは部隊に上がってください。」

 進行役の気弱そうな尉官が部隊へ促す。

「よろしく頼むよ。」

 ミアの隣に男が並ぶ。

 金髪碧眼、ミアよりも若いであろう男、ジャックが、ミアへと笑みを向ける。

 しかし、ミアはそちらの方を振り向くことなく、無愛想に舞台へと上がる。

「な、何だよその態度は!

 僕がホルン貴族、ブランフォード家が長男、ジャック・フォウ・ブランフォードと知ってのことか!」

 だが、その態度はジャックには不満だったようだ。ジャックはミアを睨みつける。

 その様子に、周囲の九人がざわめく。

「ブランフォード家?

 残念ながら聞いたことがないわ。

 第一、貴族とかそんなの、関係ないと思うけれど・・・。」

 ミアは真面目に、且つ冷静に答えた。そもそもミアが知っているホルンの貴族の中に、その名前を見たことがなかったのだ。

 そして、その態度が更にジャックの心に油を注いだ。

「なっ。

 た、たかが下級平民ごときが、なんだよその態度は!

 僕に謝れ!」

 さすがのミアもその態度にはムッとする。

「あなた、私よりも年下よね。二十歳前後にしか見えないし。

 貴族だというなら、まずは年上の人に対する礼儀から覚えてくることね。

 先人というほどではないけれど、年上を敬うのは常識でしょう?

 謝るのはあなたのほうよ。」

 ミアはやはり真面目に、しかし静かな炎を心に宿して、ジャックに答える。

「何だよ!

 ただ、先に生まれただけだろ!

 年齢よりも、階級のほうが大事さ!」

 ジャックの心は更に燃え上がる。

 周囲がざわめき始め、進行役の尉官もさすがの出来事におろおろしている。

「ただ?

 先に生まれたことが、どれだけ有利なことかわかっていないようね。

 教えてあげるわ。戦いでね。」

 ミアの眼が鋭く、冷たくなる。

 上着のポケットから紐を取り出し、後ろで髪を一つに束ねる。

「そうだね。

 なら勝った方が謝る、それでいいだろう?」

「ええ。

 司会さん、進行を遮って申し訳ありません。 続きをお願いします。」

 さすがに審査員の視線が痛くなってきたミアは、ジャックとの会話を打ち切る。

 舞台中央に、15m程の間を空けて、二人が並ぶ。

「ええ、では、ジャック・フォウブランフォードと、ミア・クラウゼスの試合を始めます。」

 ミアは上着の袖を少し上げ、手首につけていた赤い宝石の腕輪へと手を伸ばす。

 ジャックは懐から十字架を取り出す。

「では、試合を始めて下さい。」

 進行役の一言が、その場に響いた。

「開門!」

 ジャックの体が光りに包まれる。

 一瞬の出来事だった。

 その言葉の直後、ミアの目の前には、大槍を持つ緑の鎧と兜をつけたジャックが立っていた。

「えっ!?」

 だが、驚いたのはジャックの方だった。

 何も言葉を発していないミア。

 その姿は、とても、美しかった。

 中心に赤い宝石をつけた、足首当たりまである白いロングコートと、膝より短いスカート。

 白いショートブーツに黒いニーソックス。

 防御力などかけらもないよように感じる服装だ。

 極めつけは彼女のもっている真紅の大剣。

 服装も相まって、とても映えるその赤は、彼女の細身にはとても似合わなかった。

 だがジャックが驚いたところはそこではなかった。

「詠唱、破棄?」

「魔装で詠唱破棄は当たり前でしょう?

 実戦だったら、詠唱した時点で死んでるわよ。」

「たかが詠唱破棄ぐらいで・・・、実力が測れると思うなよ!」

 ジャックはその一言で、15mの距離を一瞬で詰める。強化魔法と風魔法により速さを上げたのだ。

 だが、ミアは一切反応しない。

 ただ、ジャックを静かに見つめている。

 それを見て、ジャックは大槍を突き出す。

「もらったあ!」

 それを隙だと思ったジャックは、この一撃で勝負が決まる、そう思った。

 ジャックの視界。槍がミアに当たる直前、ミアの姿がブレた。

 地に付していたのは、背中を切られたジャックだった。だが鎧に傷が付いているだけだ。

 ミアはジャックの槍を片足を軸に回転し回避、そのまま突っ込んでいこうとしたジャックの背中を大剣で斬ったのだ

「ぐっ。」

「ただ突っ込むだけなんて、まだまだ若いということね。

 相手の強さも分からないのに、真っ先に突っ込むのは、死ににいくようなものよ。」

「それがどうした。

 勝負はまだ終わっていないぞ!」

 瞬間、うつ伏せになっていたジャックは体を回転。右手に持っていた槍でなぎ払い、後転倒立の要領で後ろに飛び退る。

 ミアはなぎ払いを剣で弾き、一歩後ろに下がる。

 最初とは正反対に向き合うが、ジャックは舞台の端の方に立っている。

 「そうね。

 そう言えばこの勝負、どういう風になったら決着がつくのかしら。」

 単純な疑問だ。最初の説明役が説明するのを忘れていたようだ。

「司会さん。どうなったら決着なのかしら。」

「は、はい。

 えーと。」

 進行役は手に持っていた紙をぺらぺらとめくる。

「ああ。どちらかが気絶させるか、或いは場外に出すかで勝者をだすようです。」

 予想できた答えを真面目に答える。

 これで予想と外れていたら結構お笑いだ。

「そんなのどうでもいいだろ?

 たかがまぐれ1回で、いい気になるなよ!」

 ジャックはミアの一つ一つの挙動が苛立つようだ。

 だがその言葉を言い終わった瞬間、ジャックの目の前には前かがみになり、右腕を引いたミアが立っていた。

 ジャックはミアの居場所を捉えてはいなかった。未だにミアが元いた場所に視線が向いている。そこにあるのは、凹んだ地面と紅蓮の大剣だけ。

 ジャックの顔が驚愕に歪む。

 気づいた時には、ミアの魔力を込めた右拳が、ジャックの鎧を砕いていた。


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