プロローグ
初投稿です。よろしくお願いします。
今でも彼のことが好きだ。
彼の性格、温もり、気配。
彼のことは決して忘れません。
どんなことがあったとしても。
憎まれていても、嫌われていても。
決して忘れません。
何故なら。
彼のことが好きだからです。
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森の中は暗かった。
暗いのは当然、今は夜だからだ。
先が見通せない。
夜のせいということもあるが、多くの木が視界を遮っているのだ。
前が見渡せないとそれだけで不安だ。
不安要素は他にもある。
傾斜になった地面、先日の大雨でぬかるんでいる土。
歩くのも一苦労だ。
その中を走る少女がいた。
そして少女の姿を見れば怯えを隠せずにはいられないだろう。
見栄えが良かった騎士の白い制服も、綺麗だと誉められた顔も、血と埃のせいで見る影もなかった。
しかし、疲れだけは見ることはできなかった。
長い距離走っているのにも関わらず、その速さには誰もが追い付けないと思うだろう。
それもそのはず。
少女は魔法を使っているからだ。
そんな中、少女を追う人影があった。
彼女と人影の速さはほとんど同じだ。
ペースを緩める訳にはいかない、というのも、少女が速く走る理由の一つだ。
しばらく走り、木の数が少なくなり、視界が開ける。
しかし、目の前には崖が、大きな口を開けて待っていた。
「どうやらここまでのようだな。」
くぐもった声が聞こえた。
少女はその声に振り返り、崖を背にする。
「おとなしく投降しろ。そうすれば、宰相どのも死刑だけは見逃してくれるだろう。」
追っての一人、白い仮面をつけた男が少女を追い詰める。
「嘘よ。あの男が私を殺さないわけがない。」
彼女はもう一度、今度は崖の方へと向き直る。
「捕らえるぞ。」
その言葉と共に、追手の二人が少女へと飛びかかる。
たが、その二人が手が少女を捕らえることはなかった。
二人の手が届くよりも速く、少女が崖に身を投げたのだ。
この時、少女は限りなく低いであろう、生存率に掛けた。
「ここで捕まるくらいなら・・・。」 少女、ミリア・デル・エクセリアは小さな声でそう呟き、崖の下に消えていく。
「くそっ!」
追手の一人が取り逃がしたことを悔しがる。
「そう言うな。この高さから落ちれば、生きていることはない。
宰相どのには、奴は崖に身を投げ自殺した、と報告すればいい」
「だがっ!」
「ここで死にたくないだろう?」
悔しがる追手は、その言葉に息を呑む。
「ミリア・デル・エクセリアは自殺した。それでいいんだな?」
「ああそうだ。死体の事は焼いたと言えばいい。」
追手の二人に自然と笑みが浮かぶ。
「上手く行くことを祈ってるよ。」
片方はその言葉と同時に王都の方へと駆けていった。
先程の悔しがる顔が、まるで嘘のようだった。
「これでいいんだな。」
もう一人の言葉が、誰もいない森に溶け込む。
崖の下をもう一度覗きこむと、もう一人も王都の方へと駆けていった。
設定を大事にして頑張りたいです。