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ウツロヤミ  作者: ミーン
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エレベータ

わたしの住んでるマンションにのエレベータには防犯カメラが取り付けてある。


そこには誰も乗っていなくても不気味な男が映っている。

わたしの住んでるマンションは最近建てられただけあって、防犯設備が完備されてる。


オートロックはもちろんだし管理人のおっちゃんもいつもいて、前に住んでたマンションとは大違い。


もう珍しくないのかもしれないけどエレベータを待ってると、カメラで中が見えるようになってるのは最初テンションあがった。



ある日、学校から帰って1階でエレベータを待ってるとカメラに中の様子が映ってて、黒い服を着た男の人が乗ってた。


エレベータが降りてきて、1階に着く。


男の人が降りるだろうと少し道を譲って待ってると、誰も降りてこない。


あれ? と思って中をのぞいても誰もいない。


見まちがいだったのかな?


わたしは不思議に思いながらもエレベータに乗った。


だけど、そこには誰もいなかった。



マンションでうわさがたった。


エレベータに乗ってない男が映ってる。


それは、わたしが見たあの男だ。


見まちがいじゃなかったんだ。



管理人のおっちゃんが何度確かめてもカメラの記録を確認しても男は映ってなくて、みんなの見まちがいだって説明があった。


だけど、わたしはこわくてもうエレベータに乗れない。


大変だったけど、毎日階段を使うことにした。


ほかの人たちも1人では乗らないけど、エレベータの前で誰かくるのを待って何人かで乗るようにした人もいる。



それに慣れたころ、住人の1人が行方不明になった。


若い夫婦の奥さんで買い物に出かけたまま帰ってこなかったらしい。


警察にも捜索願が出されたけど、まだ見つかっていない。



ある日、乗る気はなかったけどカメラに映るエレベータの中を見たことがあった。


男がいる。


男だけじゃない。女の人もいて、カメラ越しにわたしを見ている。


まさか。顔を見たことはないけど、行方不明の奥さん?


エレベータの扉が開く直前にわたしは階段へ走った。




大学に進んだわたしはあの家を出て1人暮らしを始めた。


両親から離れたかったというより、あのエレベータがこわかったというほうが正しい。


だから選んだのはエレベータのないアパート。


もうあんなこわい思いはしたくない。







2年たって、お母さんからの電話であのエレベータの点検作業中に1階の下にある点検スペースから白骨化した腕が見つかったそうだ。


DNA鑑定の結果、それがあの男の腕なのかどうか分からないけれど、男性の腕であることに間違いないそうだ。


ただ見つかったのは腕だけで、ほかの体は見つかっていない。


少なくともわたしたちは、切れた人間の腕のあるマンションで暮らしていたことになる。


これでもうエレベータに男が出ないように祈った。






だけど、わたしはふと思うことがある。


腕は見つかったけど、もし切り刻まれてマンションのあちこちに埋められていたとしたら。






大学で知り合った建築家を目指す友達が言ってたことがある。


「大きな建物を建てる時は必ず誰かが犠牲になるんだ。だから関係者のあいだでは、建築中に事故が起きたとき自分でなくてホッとするそうだよ」


友達はわたしがこわがっているのを見て嬉しそうに続ける。


「そこで、あらかじめ犠牲者を選んでおいて土台の基礎部分に埋めてしまうんだ。すでに犠牲者が出ているからもう事故が起きないってジンクスだよ」


ただの冗談、都市伝説だと分かってるけど、わたしには笑えない。






大学の窓から町をながめると、新しく建てられたばかりのマンションやビルが建ちならんでる。


そういえばこの大学も2年前に建て替えられたばかりで、入学当時は新築の匂いがしてた。


どうかわたしの足下に誰かが埋められていませんように。



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