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ウツロヤミ  作者: ミーン
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ザクロ

お父さんがお土産でザクロを持って帰ってきたので、みんなで食べてみた。


ザクロはお釈迦様が鬼子母神に、人間を食べたくなったらこれをかわりに食べるようにと渡されたものだ。


「ふーん。違うなあ」


「そうねえ、違うわ」


「うん。違う」


ほんと。いくらお釈迦様とはいえ、どうしてこれを肉のかわりに食べろだなんて言ったんだろう。


「そうねえ、カツやステーキにしたら、もっと違うでしょうね」


「そりゃそうだろう。果物だからな。だけど、こんなの食べたらちゃんとした肉を食べたくなってきたぞ。

 今夜は口直しにファミレスにでも行くか?」


「だめよ、外食なんて高くつくでしょう」


「あ! そう言えば今、半額フェアやってるって・・・」


「みんな、今夜は出かけるわよ!」


お母さん、早!!


わたしたち3人家族にしては大きい7人乗りのワゴン車に乗り、おいしいと評判で、いつもたくさんの人で賑わうお気に入りのファミレスに向かった。




「おれは、とりあえずトンカツ定食にしようかな」


「またそんなカロリー高いの・・・明日の朝の目玉焼きは抜きにしますからね。

 私はヘルシーにしゃぶしゃぶ定食ごまだれにしようかしら」


それはヘルシーなの?

まったく。うちの家族は肉が好きなんだから。


まあザクロの味にガッカリしたから、今日のところはしかたないか。


ふと隣のテーブルを見ると、2人の子ども連れの幸せそうな夫婦が座っている。


私の視線に気づいたのか、子どもの1人がこちらを見てニコッと笑ってくれた。


子どもってほんとにかわいいな。




やがて私たちの注文したメニューが運ばれてきた。


「ああ。やっぱり肉はこうでなくちゃな」


「そうね。だけど・・・」


お母さんは言いにくそうに声をひそめる。


「ここのって、外国産の質が良くないものを使ってるから」


「まあまあ、お母さん。この値段ならしかたないよ」


「それはそうなんだけどね」


お母さんをなだめる私だって、ここのお肉のこと、あまりおいしいとは思わない。


それに今日はお肉だって期待させたザクロはぜんぜん違ってたし、せっかく来たファミレスでもおいしくないお肉食べさせられたんだもの。


だから、たまにはちゃんとしたお肉が食べたくなる。


お持ち帰りしたいな。


お父さんとお母さんを見ると、同じこと考えてるみたいで、瞳孔がタテに少し縮んでた。


ああ良かった。


久しぶりにお肉が食べられそうだ。


「おい、口元」


お父さんに言われて、私は伸びてたキバをひっこめた。





その時ちょうど、さっきの隣のテーブルの子どもたちがはしゃいで、持っていたオモチャがこちらに転がってきた。


「はいどうぞ。元気ねえ。お子さんたちおいくつですか?」


お母さんがオモチャを拾いあげてニッコリ笑って話しかけるのにあわせ、わたしとお父さんも笑う。


子どもたちも人なつっこく、わたしたちに満面の笑顔を向けてくれて、夫婦はお礼なんて言いながら幸せそうに微笑んでくれる。




どうやら帰りのワゴン、7人乗りの車の座席は満席になりそうだ。



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