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ウツロヤミ  作者: ミーン
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贄の花


事故現場だったのだろう道ばたに飾られた花は、亡くなられた方と大切な人を失った方の心を癒すために、今日もひっそりとたたずんでいた。


それは「事故現場」と書かれた看板が置いてあるよりも、事故の抑止効果があるらしい。


なにもいわず精一杯咲いているだけの花に、運転している人たちは、なにを感じるのだろう。


悲しみ、憐れみ、それとも反省?


「なにかを感じるのは、花が生きているからだよ」と、ある人はいった。


「亡くなった人に生きているものを捧げているのに、捧げられたものはそれでも最後まで懸命に生きようとしているから」と。


その人は続ける。


「けっして殉死だなんて悪い意味じゃないよ。

精一杯生きている姿を見せて、やがてはかなく散っていく花だからこそ、生きたかったけれど生きられなかった人と、生きていてほしかった悲しさをもつ人の心を結ぶことができるから」


そういわれると、これまで少し気味悪く感じていた花が人から人だけでなく、人から花、花から人への優しさのように思えてくる。



信号が変わって車が動きはじめると、窓からながめていた花束から小さな虫が飛んでいった。


あの虫がどこかの花にたどり着いて花粉を届けることができたなら、たむけられた人と花、たむけた人の思いを、新しく芽吹く命の花として受けついでくれるのかもしれない。


サイドミラーに小さくなっていく花束は、灰色のアスファルトのなかで色あざやかに輝いて見えた。


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