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ウツロヤミ  作者: ミーン
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呪いのホームページ

怖い話が好きなわたしは、パソコンで怖い話を検索するのが日課になっている。


今日もまだ読んだことのない怖い話を求めてあちこち回っていると、『危険! 見ると絶対に呪われるホームページ』の紹介があった。


うわあ楽しみ。まだこんなところがあったんだ。


さっそくそこへ行くと、画面には“この先に進むとあなたは呪われてしまいます。構わないという方のみお進み下さい”とある。


このていどで怖がるわたしじゃない。

迷わず次へ進むと、パソコンとそれを使ってる人の簡単なイラストが出てきた。


そこにはパソコンから出される電磁波と、地球じたいが大きい磁石として持っている地磁気が人におよぼす影響が描かれている。



“このような影響を受けることで、目の疲れや肩こり、ドライアイを引き起こします。

これはまさに現代版の呪いといえるのではないでしょうか”



なんだつまんない。ただのパソコン疲れのことじゃない。

こんなのだったら世界中にどれだけ呪われた人がいるっていうの


ガッカリしていると、文の最後に



“もちろんこれが呪いだなどと言えば、あなたに怒られてしまいます。

そこで次のページには呪いの仕組みについて説明します。

よろしければ「次へ」をクリックして下さい”


 次へ→

 戻る→



ちっとも怖くない。

だけど、仕組みだなんて言われると気になる。


わたしは「次へ」をクリックした。



“誰かに気持ちをつたえるためには、コトバや手紙、電話やメールなどさまざまな方法があります。


例えば「大好き」「ありがとう」は大切な思いや、うれしい気持ちがつたわる大事なコトバです。

その反対に「呪ってやる」「死んでしまえ」と言われた場合、とてもつらい気持ちになるでしょう。


だけど、このどちらも相手に自分の気持ちをつたえなければ、相手はうれしいもつらいもありません。


つまり大好きな人に告白するのと同じく、呪いたい相手が呪われていることを自覚させて、初めて呪いは完成するのです”



へえー、そうなんだ。



“丑の刻参りのわら人形での呪いは、途中で誰かに見られると効果がなくなると言われていますけれど、むしろ誰かに見られて、そのことが呪いたい相手の耳に届くほうが効果があるというものです。


見られてはいけないとの話は、そのことを知っている、心ある誰かが意図的に流したものではないでしょうか。

人は後ろめたい行ないをする場合、隠れてやりたくなるものですから”



なんとなく判る気がする。確かにどれだけ好きな人がいても、ちゃんと告白しないと、思ってるだけじゃ先に進めないものね。



“例えばあなたが誰かに呪われているとしましょう。


そのことを知らずに頭痛が起きたら、あなたは薬を飲むか病院へ行くでしょう。

そして痛みが無くなれば、痛かったことなどすぐに忘れてしまいます。


ところが頭痛の前日に、何者かがポストに「呪ってやる」と書いた手紙を入れていたとなると、頭痛は呪いによって起こされているのではないか?と不安になるのではないでしょうか。


そして薬で一時的に治ったとしても、やはり自分は呪われているんだと考えてしまわないでしょうか?”



そうよね。そんなのが入れられてたら、そのあとどんな小さいことでもつい呪いのせいにしてしまうかもしれない。



“仕組みについて理解していただけたでしょうか?


今はまだあなたに呪いはかかっていませんけれど、次のページでは、いよいよパソコンからどうやってあなたに対して呪いをかけるかの説明をします。


知りたい方は次へをクリック。

知りたくない方は退室して下さい”


 知りたい→

 知りたくない→



いかにも鳥肌がたつような話のあとに「これを読んだ人は呪われます」とか、フォトショップで作ったみたいな心霊写真がならべてあったり、血まみれのグロい画像が出てくるページをさんざん見てきたわたしには、逆にこのホームページの内容が本当のような気がしてきた。


だけど、やっぱりニセモノかもしれない。

途中までは本当のように見せかけて、実はつまらないオチだったなんてことはいくつもあった。


そのたぐいかもしれないし、まだ呪いがかかっていないというのなら、次を読むくらい大丈夫よね。


わたしは「知りたい」をクリックする。



“まずパソコンと人間が活動するための共通点はなんだと思いますか?


それは、電気で動いていることです。

食べたものを分解してエネルギーに替えて、といった難しい話は専門家に任せておいて、パソコンが電気で動いているのはすぐ判りますね。


同様に人間が体を動かすには、脳から神経を伝って電気信号が送られて初めて動きます。

脊椎反射の例外もありますが、あれもやはり電気信号によって体を動かしているのです。


そこでもし、本来自分の意思で動かすべき体が、外からの電気信号によって動かされたとすればどうでしょう。


本人が思ってもいない行動を、別の誰かが好きなようにコントロールできるなんて、どれほど恐ろしいことでしょうか。

それどころか、その信号を脳神経に作用させて、本人が自分自身で考えているかのように行動させることができればどうなることでしょうか?”



それは怖い。

勝手にコントロールされるなんて、まるで金縛り状態にされて動かされているようなもの。

例えばその状態のままビルの屋上から飛び降りさされたとしたら……。


それに考えることそのものを支配されてしまったら、自分の意思だと思っているものが、実は誰かに操られていたなんてことに。

例えば死にたいなんて考えさせられて、出勤前の駅のホームにいたとすれば……。


本当にシャレにならないわ。



“最初のページで説明しましたとおり、パソコンの電磁波は使う人間に影響をおよぼしています。


次のページでは呪いの仕組みを示し、このページに入る前に「まだあなたに呪いはかかっていません」と明記しました。

そう。このページに入るまでは呪われていなかったのです。


それでもあなたはここまできました。すでにあなたは呪いにかかっているのです。

だけどあなたはまだ「呪われたと思わなければ大丈夫」と思っていますね。


ちょっと考えてみてください。


パソコンに使われている部品は、処理されるプログラムの電気信号を増幅させることができます。


そこへ、あるプログラムが流れるようしかけを作ります。


一度に流れるとセキュリティソフトに駆逐されてしまいますので、パソコンの管理者に許可を出させながら、バラバラにしたプログラムを怪しまれず確実に相手に送りこむことができるのです。


この最後のページを開くことでプログラムに合体するよう指示が出され、すでにあなたのパソコンの中で、プログラムは完成しています”



ち、ちょっと。なに言ってるの?

冗談、で しょ……




“これでこれからあなたを好きなように動かすことができます。


手始めに、あなたの知っているお勧めのサイトへ『危険! 見ると絶対に呪われるホームページ』と紹介しておいてください”



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