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ウツロヤミ  作者: ミーン
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黒い人


 知り合いの家の近くは元々あった山を切りくずして大規模な宅地造成がすすんでいる。


 地名も『町』から『市』に変わって、人口もどんどん増えているそうだ。


「拓けていくのはいいけど、人が増えると物騒になるから……」

 物静かな彼女は複雑な笑顔を浮かべた。


 


 ここへきた時の楽しみの一つに、帰り道で遠くの山に沈む電線にじゃまされない夕日が見られるというのがあった。


 けれど今は、切りくずされた山と建てられたばかりの家の向こうに、いつも見なれた夕日がうつむきながら潜っていく。


 新駅ができて、郊外型のスーパーもたくさんできたけれど、もうあの景色は見られなくなったんだなあ、と思っていたその時のわたしも、彼女と同じ笑顔を浮かべていたのかもしれない。


 そんな時、丁度くずしている山の現場に続く道から、体中から草や竹、木の枝を生やしたまっ黒な人のようなものが歩いてきた。


 だけど目は大きく見開いて白目がはっきり見えて、口はニコーッと笑って白い歯が見えてる。


 あっと思ったけれど、驚いて引いたり興味本位で見つめたりすると、相手も見つかった、バレたと驚いて、害のなかったものを害のあるものにしてしまう可能性があると兄から聞かされていたので、何事もなかったように知らない顔をしてやり過ごした。


 少し歩いてからそっと振り返ると、作業着姿の普通のおじさんのうしろ姿があった。




 あれがなんだったのか気になって、家に帰ってから兄に尋ねると、「山の中には人知れず祀ってあるものがあるからな」と答えた。


 どうやらあの切り崩している山の中には、地元の人も忘れてしまった石碑かなにかがあったらしい。


 それを知らずに壊してしまって、行き場を失った「祀られていたもの」が、作業員のおじさんに一時的に移動してるんじゃないかということだそうだ。


「あの人、どうなるの?」


「さあ、聞いた限りだと怒ってなさそうだから、次に行くべき場所を見つければ離れてくれるだろう。なければそのままだけど、悪い影響をおよぼすかどうかは分からない。

 人間にとって善か悪かなんて判断は、向こうの法則には関係ないからな」


 そうなんだ。というか、向こうの判断ってなに?


 なんて思ってると、


「ところで、おまえ最近やけに『見える』ようになったな。

 向こう側のことばかり考えてるんじゃないだろうな?

 向こう側に意識を合わせると見やすくなるが、見えるほどこっちからかけ離れるぞ。

 見えないほうが基本だってこと忘れるなよ」


 と言われてしまった。


 そういえばここに書き始めてからホラーのことを考える時間が多くなったかもしれない。


 兄にバレないよう、もう少し気をつけよう。


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