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ウツロヤミ  作者: ミーン
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ススキ


うちの近くにある川は、昔はよく氾濫して、そのたびに多くの人が犠牲になったそうだ。



だけど今は上流にダムができ、堤防もしっかり造られて氾濫することもなくなった。



わたしの世代だと、あの川が原因でたくさんの人が死んだなんて知らない人がほとんどだ。



だから年に何回か堤防の道から自動車が落ちる事故や、毎年人が溺れることに興味を持つ人はいない。



ううん。なんだか多いのは気づいてるかも知れないけれど、感連づけてる人は聞いたことがない。



だけど、わたしは知っている。



ここは事故を呼び寄せる川なんだ。



ほら、流れがよどんでいる中州に。


その川底が深くなってるあたりに。


この川に造られた堤防の至る所に。



流れる川に沿って、何本も何本も何本も・・・。



人間の腕がたくさん生えて、みんなオイデオイデしている。



きっとあの下にはまだ埋まったまま、誰にも見つけてもらえなくて、誰かに見つけて欲しい人たちがいて、生きてるわたしたちに向かって一生懸命呼んでるんだ。



昔、わたしが小さかったころ、お母さんにこのことを言ったらウソをつくなと怒られて、お父さんには想像力が豊かだなと笑われた。



だから、どんなにあれが見えても、わたしは見えないフリをする。






最近、堤防の中腹にまた新しい腕が生えた。



若い女の人の腕で、長い爪が悔しそうに何かつかもうとしている。



ニュースである女性の失踪事件が話題になっているけれど、「腕が生えてるのが見えたから」と警察に言っても、かえってわたしが怪しまれるだろう。



だからわたしは、やっぱり見えないフリをしている。



毎年、毎年、腕が増えていくこの川は、いつか秋のススキが風になびくような景色になるんだろうな。


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