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ウツロヤミ  作者: ミーン
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運転手


私がこの仕事に就く前は、長年タクシーの運転手をやっていましてね。


ところがこの長引く不況でしょ? リストラされた人たちがどっとタクシー業界に流れてきちゃったもので、外に出ればお客さまの奪いあい、社に戻れば車のシフトの取りあい。


その上、タクシーを利用して下さるお客さまそのものが減ってしまって、もうやっていけなくなっちゃいまいましてね。


そんな時、偶然見つけた求人に応募したのがこの仕事に就いたきっかけなんですよ。


私も知らなかったんですけど、なんでもこの仕事は二種免許が必要なんだそうです。


ええ、タクシーやバスの運転手に必要なあの免許です。


でも考えてみれば確かにそうなんですよね。


別に法律で決まっているわけじゃないそうなんですが、やっぱりお客さまをお乗せするんですから。



まあ、もともと私はお客さまとお話しするのは好きですから、いろいろなお話しが聞けて楽しいですよ。


この仕事こそ天職だったんじゃないかと思いますね。




ああ失礼。私ばかりお話ししてしまって。


到着までまだしばらくかかりますから、お客さまのお話しを聞かせて下さい。


ですが私は聞くだけですよ。


この間のお客さまはずいぶんと大暴れされましたけど、こちらの運動席との間にある仕切りからは来られないようになっていますからね。


ただ、普段はプライバシー保護のために使いませんけれど、ご希望なら映像と音声を記録できますよ。


ええ。ちゃんとしかるべき所へ提出しますし、あちらも判ってくれていますのでご安心下さい。






それではそろそろ到着しますけれど、私がお送りできるのはここまでです。


え? 話を聞いてくれてありがとう。


いえいえ。私は仕事ですし、なによりお話しを聞かせていただいた私のほうがお礼を言わせて下さい。


あ、迎えの方が来られましたね。


それではごきげんよう。

よい旅を。






棺に入られたお客さまを見送って、私は斎場をあとにしました。


今日お運びした方が自分を殺した犯人について語られた映像は、葬式が無事に終わってから警察に届けることにしましょう。


身内が殺された直後にもう一人家族が逮捕されるなんて、私もさすがに心苦しいですから。



次はどのような人生を歩まれた方とお話しさせていただけるのか、とても楽しみです。


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