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ウツロヤミ  作者: ミーン
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バサバサ


2年前、務めてた会社を辞めて小さなパスタの店をオープンさせた兄は、休業日になるとパソコンで自分で作ったチラシを配りに歩くことがある。



本当は個人でやってる飲食店がチラシ配ったりすると、「安っぽい」なんてマイナス効果があるそうだけれど、今は逆にこうでもしないとお客さんに知ってもらえないし、足を運んでもらえないそうだ。



昨年の夏休み、ヒマだったので1回おごることを条件にチラシ配りを手伝ったことがある。



日中は暑過ぎるので、夕方から一緒にまわっていると大きなマンションがあった。



マンションの場合、兄は集合ポストに入れてもその場で捨てられることがあるから1件ずつドアのポストに配ると言っていたのを思い出し、わたしがマンションの奥に入ろうとすると肩をつかまれた。



「ここは配らなくていいぞ」



でもせっかく来たんだから配らないとお客さん増えないよ? とわたしが言うと、「だったらしょうがない。だけど、二人一緒に配ろう」と言った。



なんでだろう? 効率悪いなあと思ったけど、入り口に入ったとたん、暑かった外に比べて、中は寒いと感じるほど空気が冷えてた。




しかも3階建てのマンションの1階はみんな入居していたのに、2階にあがると人の気配がない。



「上行くぞ」



兄は2階を見もしないで3階に行く。



仕方なく後をついていくと、頭の中に「通り道、通り道、通り道・・・・・・」と言葉が繰り返された。



3階は普通に入居者がいて、兄は配り終えると足早にマンションから出た。



「どうして2階は飛ばしたの?」



わたしが尋ねると「おまえちょっと来い」と言って頭に手を置いて、髪の毛をバサバサに払った。



「何すんの!?」と言うと「聞こえてただろ?」と言ってまたバサバサする。



「まったく・・・あそこ通り道になのに、マンションなんて建てて道ふさぐから、めんどくさいことになってるんだ。

 髪の毛ってつかみやすいから、こういうのがすぐついてくるんだよ。

 まったく、おまえってつきやすいからな」



 何がつかまってきたのか教えてくれなかったけど、兄は昔からよく、わたしの頭をバサバサしていた。


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